第29話 母

「ちょっと、騒がしいわね、何やってるの?」


やばい。おふくろが入ってきた。


「うん? あら、この心臓、不整脈ね」


そうか、母親って医者だったな。不整脈の弱点ってなんだ?


「注射器のマークがあるから押してみるね」


詠子のリモコンにだけある注射器ボタンで特大の注射器が出現して心臓の真ん中に当たると心臓が注射器ごと消滅した。


「ふーっ、消滅した。これでクリアなのか」


「柔よく剛を制すっていうもんね。攻撃より優しさなのね」


「もう、あんまり汚さないでよね」


というと、母親が本を二冊持ってきて読みだした。一冊目を読み終わると、空間からほうきが出現して勝手に掃除して消えて、もう一冊を読み終わるとちびっこい大工みたいなのが壊した本棚をあっというまに修理して消えた。こういう実現書籍もあるんだな。


にしても、この状況にあの冷静な態度と判断と行動をする母親っていったい?

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