第42話 頭痛

 また、頭が痛む。

 もうすぐ、天気が悪くなる。

 昼休みの教室の窓から外を眺めながら、女子高生である私はそう思った。

 今は、まだ雲がまばらにある程度で晴れている。だが、この頭痛は外れることがない。


 幼い頃から、そうだった。頻繁に頭痛を訴える私を両親は訝しんだ。

 最初、構ってほしいから嘘をついているのだと思われもしたが、それがあまりにも頻繁にあるため病院に連れていかれた。血液検査はもちろんのこと、脳のMRIやCT、脳波も調べられた。それが何も異常がないと知ると、今度は心療内科に通わされた。心療内科の先生は私にいろいろと聞いて薬を処方したが、それらは気休め程度にしか効かなかった。


「千佳、また頭が痛いの?」

 有希が心配そうに聞いてくる。

「うん、ちょっとね……午後は雨だと思う」

 だが、私は最近になってこれは「意味」があるのではないかと思うようになった。

「そっか……千佳の『予報』は当たるもんね。あんまり無理しないでね」

 予報――そう、これは病気というよりも感覚。天候を察知するための器官が働いているのではないか、と。

 大昔、天気予報などなかった。しかし、天気を事前に知ることは大きな利点になったはずだ。もちろん、雲の動きや風の流れで知ることもできただろうが――私の頭痛はそれを上回る早さで察知できる。

 もし原始的な集団の中でそういった者が一人でも居たら、他の集団よりも大きく生存確率を上げることができただろう。その者を予言者、あるいは神官や巫女として崇めたかもしれない。

 そういった特殊な感覚を持つ者が原始宗教の礎となったことも想像に難くない。

 つまりは、今は忌まわしいこの痛みは、人と自然が近かった頃には必要な感覚だったのかもしれない。

「ねえ、もし……」

 私はふと聞いてみたくなった。

「ん? 何?」

「もし私の予報が神様から授かった力だとしたら、信じる?」

「神様かあ……でも、それもアリかもね」

 有希がそう言って笑うと、少しだけ頭痛が和らいだ気がした。

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