第36話 迷惑行為

「それじゃあ、予定通り頼むよ」

 私は頭の軽そうな男子高校生二人にそう言った。

 彼らは店屋に向かって歩いていく。

 これから彼らが向かうのは某有名飲食店チェーンだ。一定料金を払えばバイキング形式で食べ放題というのがウリの店だ。

 彼らは今からそこで、バイキング形式に並べられている料理に向かって消臭スプレーを吹きかけて、それを全世界に動画配信するのだ。

 一見馬鹿げている方法だが、その動画が出回れば店の評判を地に落とすことができる。有名チェーン店ということもあって、株価での損害は百億を超えるだろう。


 以前、とある有名飲食店チェーンで少年が迷惑行為をした動画を公開して、店側が大損害を被ったという事件があった。その時の損害は百六十億円とも言われた。

 しかし、少年が高校を自主退学し、賠償も百万円程度で済んだ。これは与えた損害に対して、あまりにも小さな罰だった。

 これに目を付けたのが私のような「裏」コンサルタントだ。

 ライバル企業から金を受け取って、馬鹿な青少年に迷惑行為をさせて信用を地に落とす。

 彼らに最初にはした金を渡してその後を保証すると言ってやれば従うので簡単だった。


 さて……私はそこから少し離れた喫茶店で時間を確認していた。

 もうそろそろ、迷惑行為の動画が配信されてもいい時間帯だった。

 だが、まだ公開されていなかった。

 私は待った。……それでも、動画が配信される気配はない。

 とうとう痺れを切らした私は、彼らにSNSで連絡した。

「どうなってる? 約束を忘れた訳ではないだろう!」

「約束? ギャハハwww 知らねーよそんなもんwwww 不満なら警察にでも駆け込めば?」

 騙された。私はしばし呆然とした。

 あいつら、一人五万も渡してやったのに……こちらは警察には言えないと思って高を括っている。

 まあいい。私は罰として「業者」に彼らの個人情報を渡しておく。これで彼らは明日には居ない。

 今回のことは仕方がない。また新しい「捨て駒」を探すとしよう。

 騙されて迷惑行為をする馬鹿な輩は、いくらでも居るのだから。

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