第33話 失敗作

 ある自動車メーカーの試験場では、日夜新製品のテストが行われている。

 そこには試作品の車がずらりと並んでいる。

 ある日、視察に来たメーカーの幹部が言った。

「そこの車は、良く出来ている。一度、試乗させてもらえないか?」

「はい、構いませんが……」

 対応した社員は、少し浮かない顔で了承した。

 幹部はテスト用コースを何周かすると、降りてきて言った。

「素晴らしい! これを商品化すべきだ!」

「あの……失礼ですが、それは失敗作なんです……」

 社員は言い辛そうに言った。

「なぜだ? データでも見たが、燃費も耐久性も良かったが……」


、商品化できないんです。低燃費で長持ちし過ぎると、買い替えるお客様が居なくなってしまうので……」

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