第31話 檻

 何の気なしに点けたテレビで、動物園の特集をしていた。

 檻の中に入れられた動物たちを順に紹介していく。

 私はふと思う。

 私はこの動物たちと同じではないのか?

 同じように少し広いだけの檻に入れられているのではないか?

 毎日の生活はほぼ同じ。

 決められた道を行き来し、決められた仕事をこなし、決められた時間に帰る。

 それは、大きな檻に入れられているのとどれ程差があるだろう?

 ある人は言った。空いた時間は好きにできると。

 ある人は言った。好きなように生きればいいと。

 だが、それは何か「持っている」人ができることだ。

 私のような何もない人は、定められた生活から抜け出すことは叶わない。

 たまに用事があって出掛けることがあっても、次の日には元に戻る。

 それは巨大な檻――そう感じるか違うのは認識の違いだけだ。

 私は今日も「檻」の中で決められた日課をこなす。

 檻が開く気配はまだない。

 しかし、開いたところで私は抜け出すことができるだろうか?

 せいぜい入口の前で尻込みするのが精一杯ではないか?

 答えは分からない。

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