第29話 お呪い
「『まじない』と『のろい』って、漢字で書くと一緒だよね?」
屋上で会った彼女はそう言って笑った。
僕は彼女の名前は知らない。
確かなのは、僕と同じく立ち入り禁止の屋上の鍵が壊れていると知っている人間だということだけだ。
僕が授業をサボって屋上に行くと彼女と出会った。それから、この他愛のない付き合いは続いている。
「『まじない』というのは『のろい』も含むからだろ」
僕は適当に答える。
「違うよ。『のろい』は他人を幸せにすることもあるんだよ」
彼女は眉をひそめてそう反論する。この表情も悪くないな、と思う。
「『のろい』は他人も自分も不幸にする。よく言うだろ? 人を呪わば穴二つって……」
「むう……なかなかに頑固だね」
彼女はそう言いながら、小さな袋を取り出して差し出す。
「これは……何?」
「お守り、作ったからあげる。また会えるようにおまじない……」
「そいつは酷い『のろい』だな」
「え?」
「また授業サボって屋上に来いって言ってるんだろ? これ以上成績が落ちたらどうしてくれる?」
僕はやれやれという顔をしながら受け取った。
この酷い呪いから逃れる術を、僕は知らない。
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