第27話 何か違う
――これも違うなあ……。
あたしは放火した民家が燃えるのを見ながらそう思った。
周囲には野次馬が集まり、消防車がやってきて消火活動に勤しんでいる。
周囲の会話から察するに、住民だった老夫婦が見つかっていないらしい。おそらくはあの炎の中に居るのだろうが、あたしには関係ない。
あたしは昔からごくたまに、何かしっくりこない、あるべき所に嵌っていないような不快感を感じることがあった。
そんな時は、こうして思い付いたことをしてみるのだった。
今までもいろいろとやった。万引き、置き引き、援助交際等々――しかし、どれもしっくりこなくてストレスだけが溜まっていった。
警察は、表向きは進学校の優等生であるあたしを疑うことはなかった。あたしはそれを利用して法に触れることを繰り返した。
でも、これも違う、あれも違う――しっくりこない不快感だけが溜まっていった。
翌晩、露出の多い服で街に出た。
容姿は人並みにはあるので、こうしていると頭の軽い男はほいほい釣れる。
案の定、茶髪の軽そうな男が声を掛けてきた。
あたしは言葉巧みに誘導して、男を人気のない方に連れて行った。
男の息が荒くなってくるのが分かる。ヤりたくて仕方がないのが丸分かりだった。
あたしは夜の公園に入ると、茂みの中に連れ込んで押し倒した。
期待する男の目。だが、次の瞬間には恐怖に変わった。
あたしは隠していたナイフを男の喉に突き立てた。
血が噴き出し、服が汚れる。男はしばらくの間もがいていたが、やがてピクピクと痙攣するだけになった。
――ああ、これだ。この感触。
あたしは頬に飛んだ血しぶきを拭うと、闇の中で笑った。
ようやく求めていたものが分かった……が、まだまだ足りない。
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