第24話 最高のご馳走

 ある国に、とても自分勝手な王様が居ました。

 国民から法外な税を取り立て、豪華な城を造り、そこで豪勢な暮らしをして遊び惚けていました。

 民は怒り、家臣は何度もいさめましたが聞く耳を持ちません。

 それどころか、そのような家臣をどんどん処刑してしまいました。

 王様の周りには、とうとう言いなりになる者しか居なくなりました。


 ある日のこと、王様はその豪勢な晩餐にまで文句を言いだしました。

 多くの民が飢え苦しんでいる中でのことでした。

「これはなんだ!? もっと美味しい物を用意せよ!」

 王様はわめき散らしました。その様子はまるで駄々をこねる子どもでした。

 言いなりばかりの家臣たちは次から次へと珍しい食べ物を用意しましたが、王様は一向に満足しません。

 とうとう王様は国中に「もっとも美味しい物を用意せよ」とのお触れを出しました。

 しかし、誰が何を持って行っても満足しません。それだけならまだしも、気分次第で「余の口を汚した」と言って、牢屋に放り込む始末です。

 国中が困り果てた時、賢人と名高い老人が現れました。

 老人は王様にラ・フランスにも似た形の紫色の果実を差し出しました。

 王様は毒見役に一口食べさせた後、その果実を食べ始めました。

 それは大変美味だったようで、王様は夢中になって貪り食いました。

「素晴らしい味だった。また、食べたいものだな」

 食べ終えた王様は、満足げに老人にそう言いました。

「残念ながら、それは叶いません」

 老人がそう答えると、王様は少し驚いたようでした。

「なぜだ? そんなにも貴重な果実なのか?」

「この実は大変美味ですが、二度と食べることは決してできません。なぜなら、三時間程で毒が効いてきて死んでしまうからです」

 それを聞いていた人々はニヤリと笑いました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る