第22話 岩
ドスン!
そんな音というより衝撃が家全体に響いた。
家族――僕、両親、祖父母が家の中を見て回ると、居間の天井に大穴が開いていた。
そして、床には直径1メートルはあろうかという岩がめり込んでいる。
「なんだ!? この岩は!?」
父が叫んだ。
「隕石かしら」
母は訝し気にそう言った。
僕はそっと手を近付けた。
「触るんじゃない! 隕石だったら大やけどだ!」
「この岩、そんなに熱くないよ……手を近付けても、熱さを感じない」
そう言って更に手を伸ばすと、岩に触れた。
熱くない。むしろひんやりしている。
手触りも、普通の石、目の細かい砂岩みたいだ。
「なんでもない、普通の石だよ」
「普通の……じゃあ、なぜ落ちてきたんだ?」
父は首を傾げた。
「こりゃあ、狸のいたずらかもしれんな」
祖父がそう言った。
「おじいちゃん、今時そんなのないですよ」
祖母がたしなめる。
「でも、空から降ってきて隕石でないとしたら、この岩はなんなのかしら?」
母は首を傾げた。
間もなく、音を聞きつけた近所の人々がやってきた。
あれから、いろいろあった。
まずは、集まってきた近所の人に両親が説明してから、警察を呼んだ。
だが、警察もただの岩が落ちてきた。落ちてくる場所さえないと言うと首を傾げた。
その後、どこからともなく専門家を自称する人がやって来たが、いくら調べてもただの岩だという以上に分からなかった。
結局、その岩は天からの贈り物でご神体にしたいという新興宗教に売ることとなった。
新興宗教は、やけに仰々しくその岩を運んでいった。
こうして、岩が無くなると天井と床が修理された。
新興宗教が買い取った額は莫大で、修理しても余りに余った。
周囲はどこからかそれを知って羨ましがり、天からの贈り物だと言った。
しかし、僕はそう思わなかった。
――あれはただの岩だ。それ以上でもそれ以下でもない。
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