第20話 傷跡

 ああ、また傷跡が増えている。

 私はそれがいつできたのか知らない。

 気が付いたらできている。

 いつからだろうか、私は痛みを感じなくなった。

 いつからだろうか、私は傷を恐れなくなった。

 人は言う。

 それは、強くなった証だ。

 それは、成長した証だ。

 しかし、それは違う。

 ただ、鈍くなっただけ。

 ただ、感じることを拒むようになっただけ。

 そうして自ら目を閉ざし、耳を塞いだ。

 もしもそれが強さだというのなら、最初から何も感じない岩はとてつもなく強い。

 季節と共に咲いて、雨でさえ散ってしまう花はとてつもなく弱い。

 そんなものだろうか。

 それが正しいのだろうか。

 私には分からない。

 ただ一つ、言えるとすれば――今の私は岩に近い。

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