第13話 空の涙
ああ、空が泣いている。
車の屋根を打ち続ける雨音を聞いて、そう思った。
ちょっと車で遠出する用事があって、運転に疲れてコンビニの駐車場で休んでいるところだった。
雨音は激しさを増した。
空は、私の代わりに泣いているのだろうか。
そんな非現実的なことを思う。
雨が降るのは気象のせいであって、空には感情などない。
そんなことは知っているが、時々そう思ってしまうのだ。
私は幼い頃、よく泣く子だった。
両親はその度に私を叱った。
周囲も泣き虫だとからかった。
いつからか、私は泣けなくなった。
悲しいと思っても、涙など出なくなった。
年老いた祖父の葬儀でも、悲しいとは思ったが涙は出なかった。
いつからか、私は上辺だけは平静を装うことが当たり前となっていた。
ただ、相手に合わせて表情を作り、いかにもな「演出」をすることが当たり前となっていた。
いつだったか、外国のドラマが流行った時に母ぐらいの年頃の女性が「日本と違って感情を露にして泣くのが良い」と言っているのを見た時に殺意が湧いた。
それを否定して、自分を押し殺して「みんな」に合わせる社会を作ったのはお前たちではないか――そう言ってやりたかった。
今はもう、涙は出ない。
だから、せめてこの空から落ちる水滴を涙だと思おう。
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