第9話 たゆたう
家族が寝静まった深夜、僕は勉強の合間にヘッドフォンでお気に入りの音楽を聴く。
椅子に座ったまま、天井を見上げる。煌々と電灯が輝いている。
押さえていた眠気と勉強の疲れが相まって、意識が空間をゆらゆらとたゆたう。
そして考える。焦点の定まらない妄想――そこには両親の考えるようないい大学を出て、いい会社に入ってなどというリアリティはない。どこかの池の小舟に横たわって、空を見ている。その空は青く広い――自身がちっぽけなものだと自覚させられる。
――そうだ。それでいい。
僕は別に誰かに尊敬されたい訳ではない。ただ、あるがままに移ろい行くことができれば――だが、それは両親や社会が許さない。
昔に比べれば、確かに社会は豊かになった。しかし、それは休むことを許さぬ張りつめた社会になったとも言えなくはないだろうか。
雨の降る日は仕事を休み、日が暮れれば眠る。それが幸せだった頃もあったはずだった。
しかし、現代では雨の日も風の日も登校や出勤を強いり、日が暮れても明かりを点けて勉強やら仕事に励まねばならない。
これは果たして幸せだろうか――僕には分からない。
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