第6話 意味
ポツリ……カチ。
屋根から雫がしたたり落ちる度に、男は手にした数取器のボタンを押した。
もうずっとそうしている。
誰が命じたのか、いつからそうしているのか――一切覚えていない。
ポツリ……カチ。
ただ、手にした数取器でカウントし続けている。
男は思った――この行為に何の意味があるのか、と。
意味など、無いのかもしれない。
ここは地獄で、男は罰としてその空虚な作業を強いられているのかもしれなかった。
ポツリ……カチ。
しかし――男は思う。
今まで自分のしてきたことに意味があるものがあっただろうか?
男はいつからここに居るのかは分からないが、それ以前の記憶はあった。
進学、就職、結婚、子育て――それらに本当に意味があったのか。意味があると自身が信じ込もうとしていただけではないのか……。
ポツリ……カチ。
男は手にした数取器を見つめる。
それらとこの作業とは、どの程度隔たりがあるのか……。
男には分からなかった。
ポツリ……カチ。
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