第3話 デジャヴ

 ああ、どこかで見たことがある。


 私はその本を読んでいてそう思った。

 だが、いつどこで見たのかは思い出せない。

 もしかしたら、一度買った本をまた買ってしまったのかもしれないと思うともどかしい。

 しかし、本当は初めて読んで、デジャヴを感じているだけではないか――そうとも思える。

 私は本の後ろのページの発行日を確認し、安堵する。

 まだ、5年程前だ。その程度の前なら、もし以前に買っていたら覚えているだろう。

 また、以前に買ったのがいつもの古本屋だとしたら、店頭に並ぶのはそれより少し後――もっと短い期間になる。余程印象に残らない本でない限りは覚えているはずだ。


 それなのにこの、どこかで知っている感覚はどこから来るのだろう。

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