第2話 アルバイト

 両親から、なんでもいいから稼いで来いと言われた僕は、アルバイトを始めた。

 そのアルバイトは、大きな袋を車に乗せて山奥に埋めに行くことだった。

 袋の中身は知らない。見るなと言われているし見たくもない。

 ただ、適当な、人の来ない山奥に埋めて来いと言われる。

 いつもそれを終えると、10万円の入った封筒をくれる。


 ザクザクと、今日もシャベルが音を立てる。

 ちょうど埋める穴を掘っている所だった。

 僕は一息つきながら穴を見つめ、上手くなったものだと思う。

 初めのうちは、こんなにもスムーズに穴を掘れなかった。

 それが最近では、袋を埋めるのにちょうどいい穴がすぐに掘れるようになった。

 穴の脇には、袋が置いてある。

 黒く分厚いビニール袋で、中に入っている物は重い。

 敗れた隙間から、腐臭のする液体がこぼれることがあるが、特に気にしたことはない。


 中身を知ったところでどうなるだろう?

 世の中には僕の知らないことばかりなのに、1つ知ったところでどうにもなるまい。


 僕は袋を穴の奥に横たえる。

 土をかけ始める。穴が埋まっていく。

 僕のしていることは罪かもしれない。だが、僕がしなくても他の誰かがするのだろう。

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