日々是独言
異端者
第1話 山小屋にて
「私たち、死ぬのね?」
女が呟いた。
「ああ、多分な」
男は短くそれに答える。
2人は猛吹雪の中、山小屋に居た。
しかし、暖を取るための焚き木は残り少ない。
暖炉では、素知らぬ顔をして炎が燃えている。
男はぼんやりとそれを見つめた。
もしこの炎が消えたら、山小屋は寒さに包まれるだろう。
それまでに助けに来る望みは――限りなく薄い。
「悪い人生でもなかった」
男はぽつりと言った。
「そう? ……私はまだやり残したことはたくさんあるわ」
女は不満げだ。
「誰だってそうだろう。遅かれ早かれそうなる。……それが今になっただけだ」
男はそちらを向かずに言った。
「あなたはそれで満足なの?」
「分からない」
会話が途切れた。
外では猛吹雪が音を立てていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます