第1話『大事故』
第63兆代目の宇宙の惑星を巡り終えて、とうとう次の宇宙へと向かう時が来た。
宇宙というのは枝分かれのように永遠に広がり続けているもので、しかもそれが膨れ上がり続けてもいるのだ。
「やっぱり、何度経験しても、別れとは寂しいものね、まるで最後に残したミートスパゲッティのミートボールを食べる時のよう……私、詩人になろうかしら」
惑星から惑星に移るのは楽だ、しなしながら宇宙から宇宙へ渡るのにはかなりのエネルギーが必要になる。
そしてそのエネルギーを宇宙船の中とはいえ身体に受けるのは、かなりの負荷になってしまう。
解決策は、我慢。
「ミートボール……いや、なんだかあの惑星のゲテモノ焼きが食べたくなってきたわ……でも詩的とはかけ離れてるわね」
惑星から惑星への移動は、宇宙船で適当にエンジンなんかをふかしたり、4つ前の惑星の技術だと反磁力で永久に垂直に移動したりしたけれど。
宇宙から宇宙への移動の方法は、一択しかない。
それが、ワープ。
時空を歪めて、現在地と目的地の間にある過程、道のりを無いものとして移動できるもの。
現在地と目的地を引っつけるのだ、詳しい説明はまたいつか気が向いたら。
「さ、行きましょ」
何重ものロックを解除して、いよいよこの宇宙に別れを告げる。
少し外の景色を眺めて、警告色がふんだんに使われているボタンをおした。
それと同時に揺れ始める小型個人用の宇宙船、赤いランプが点滅して異常事態を知らせている。
異常事態を知らせている?揺れるのはいつもの事だとして、赤いランプが点灯するなんて前代未聞だ。明らかに良くないことが起きているらしい。
「な!?言うこと聞いてよ!!この、このっ!!」
最初は冷静に対処していたのだけれど、どのボタンも上手く反応せず完全にお手上げ状態。
こうなったら、適当にガチャガチャ、もはや止まってしまえと画面を叩いたり蹴ったり。
「小さい惑星なんかで修理するんじゃなかったぁぁあっ!!!!」
ワープが始まった感覚があった、いつもの内蔵が水を含んだ雑巾のように絞られる言い知れぬ気持ち悪さが襲うあの感覚。
意識は、宇宙の闇の中に吸い込まれるように薄れていった。
「いたた、ん、どうなって……」
それからどれほど時間が経ったのかも分からない、しかし宇宙船の傾き具合からどこかに不時着しているのは確かだった。
とりあえず救援が呼べないか連絡機器を一通り調べてみるがどの種類も繋がらない、もしくは壊滅状態。現在地を測ろうにもメインコンピュータが落下の衝撃でイカれている。
紫外線を図る装置、空気の濃度を図るキットは宇宙船に搭載されているものは別に道具を持っているから外に出られれば何とかなるはずだ。
「ドアが下に……切るしかないわね」
念の為防護服に身を包んで、マスクを被った。
長く共に旅をしてきた宇宙船の壁に、レーザーカッターで丸く穴を開ける。
そして切り取った壁を思いっきり蹴り飛ばして、宇宙船の外に歩み出た。
「ここは、どこの惑星かしら、知的生命体がいることを祈るしかないわね……」
重力がしっかりしている、巨大な白い岩が水面から突き出ている海に永遠とも思えるほどに伸びる緑豊かな大地、生物がいることは間違いない。
とりあえず、持てるものを持って歩く他ない。
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