絶対に真似をしてはいけません
藤泉都理
絶対に真似をしてはいけません
夢だったんだ。
幼い頃の。
(あ~あ。廃れたなあ~)
ひそひそ声、話し声、はしゃぎ声、大笑い声、怒声、悲鳴。
しっちゃかめっちゃかの声で溢れていた公園は、休日の昼間だというのに雀の鳴き声しか響いていなかった。
しかし、物寂しいと感想を抱くよりも。
これはいい機会ではないかなと目を光らせた。
出入り口から真っ直ぐに向かうのは、滑り台の滑降部の前、砂場の上だ。
夢だったんだ。
幼い頃の。
どこにも掴まず押さえず堪えず、滑降部を走り上り切ることが。
(こんなにここの滑り台って小さかったっけ?)
幼い頃はあんなに大きかったのになあ。
感慨深くなりつつ、最終確認に人気がないことを確認。
住宅街から少し離れた場所だし、きっと大丈夫だろう。と、目の前の滑り台に集中。
曲げた腕と足を前後に配置して、走る体勢を取り。
いざ。
幼い頃の夢を大人になった私が叶えよう。
「ごふっ。ふっふ」
あれやべ膝の皿割れてないよねというような膝のつき方をしたけれど、危惧も落胆もしなかった。
たった一度の挑戦で叶えられるとは思っていなかったからだ。
大丈夫大丈夫動く動く痛みはなし。
不敵な笑みを浮かべると、砂場に下りて、また走る体勢を取り、滑降部へと足を乗り出して、上り、下りて、上り、下りて、上り下りて。
何度も何度も何度も何度も何度も続けた。
おばちゃんそんな遊び方をしたらだめだよと子どもに叱られるまで。
私は嬉々としてローラー型の滑降部を上り、下りて、また上った。
(2023.3.18)
絶対に真似をしてはいけません 藤泉都理 @fujitori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます