第99話 ウェットスーツマーマンの群れ

 マーマン相手に戦い続けた私たちだったけど、想定よりもウェットスーツのマーマンが、しぶとく守りが堅かったため、かなり魔力を消費してしまっていた。途中から魔力を節約するように軌道修正をしたが、それでも無限とも思えるウェットスーツマーマンたちの攻撃に少しずつ削られたいった。


「今回は一回撤退した方がいいよね」


「流石に魔力が少ない状態でボスに挑むのは自殺行為だからね。まあ撤退出来たらの話だけどね」


 確かにそうだね。来た道と私たちの間にはかなりの数のマーマンたちが居て、撤退するにも戦わなきゃいけなくなっちゃったからね。ただ戻る道のマーマンは海パンがほとんどだから、倒すのは簡単なんだけどね。問題なのは群れを倒し終わった瞬間に、ほかの群れとエンカウントした判定になることかな? 多分海パンと違ってウェットスーツのマーマンは判定が広く作られていて、群れが消えた時にその群れが居ることで隔離されていた空間が同時に消えて、そこの空間へ瞬時にほかの群れの判定が及んじゃうんだろうね。これは運営のミスか、仕様か分からないけど、鬼畜な判定だよね。


「いくら格下とは言え、永遠に戦い続けるのはきついね。しかもこうやって戦っている間にも倒した群れが補充されているようだしね」


「ほんとにそうだよ。昔やった百人組手くらい大変だよ」


「サキ……今時百人組手をやっているところなんて春風の道場くらいだよ」


「最近はやってないよ。私が師範になってからは技術を磨くってところに重点をおいているから」


「最近って……ちなみに聞いておくけど、初めて百人組手をやったのって何歳くらい?」


 何歳くらいだったかな? たしか初めて竹刀を握ったのは3歳くらいで、対人戦をやったのは……4、5歳かな? だから百人組手をやったのは5歳からなのかな。


「多分5歳くらいだと思うよ。それで翌年くらいには大人相手に百人組手を完遂したと思うよ」


「やっぱり春風の家はおかしいよ。普通百人組手を幼稚園年長さんにやらせようとする親はいないんだよ! そして小1で大人相手の百人組手を完遂するサキはもっとおかしいよ!!」


 うーん、そんなにおかしいのかな? 春風の先代たちは、もっと若い時から私よりも厳しい練習をしてたらしいから、私は春風における常識枠だと思っていたんだけどなぁ。


「その顔、自分は常識枠みたいに思っているのかもしれないけど、そもそも春風の家がおかしいんだから、家の中では常識枠でも外に出たら異常なんだからね!」


 納得できないなぁ。


 ちなみにこうして話している間もマーマンたちと戦い続けている。話すことでテンションが上がっているのか、補充されるスピードよりも速く倒せていた。このままいけばあと少しで殲滅できそうだね。


「はいはい私は非常識ですよーだ」


 私からしたら非常識でも、剣を握って生きていければいいからね。それに私が教えている子たちには常識を優先して教えているから、非常識なのは私の代で終わりだよ。


「(サキは気づいてないかもしれないけど、非常識な人が常識を教えても、それは非常識にとっての常識だから、非常識なんだよ)常識を教えられるといいね」


「やっぱり私の心読んでいるよね!?」


「顔に出ているからだよ」


 顔に出ているなんて納得いかないなぁ。私としてはポーカーフェイスうまいと思っていたんだけどなぁ。まあリーブに本音を知られたところで困ることはないし、別に気にしなくていいや。


「そろそろウェットスーツマーマンも減って来たし、撤退に向けて少しづつ後退しようか」


「うん。後退しつつ海パンマーマンに喧嘩を売ろう。仕様的に一度に敵対する群れは1つまでみたいだしね」


 私たちはウェットスーツの群れを倒し終えた瞬間、海パンマーマンに喧嘩を売ることで、無限にエンカウントするウェットスーツ地獄から逃げ出すことに成功した。私もリーブも魔力残量が底をついていたため、かなりぎりぎりの戦いだった。

 海パンたちは魔力を一切使わずに倒せる相手だったので、私たちは無事町まで帰還することが出来た。クランハウスに戻ってきた私たちは今後の方針について話し合った。


 今後はウェットスーツマーマンをどうにか突破して、ボスを倒すのが目標になった。問題点は無限に湧き出るウェットスーツだ。魔法を使えば倒すことは容易なのだが、それではボス戦で魔力が枯渇するのは確実のため、どうにかして魔力を使わずにウェットスーツを倒す方法を考えないといけない。


「1対1なら魔法を使わずに行けるんだけどなぁ」


「じゃあ私がほかの個体を引き付けて、その間にサキが倒すのは? 一応複数居ても、引き付けるだけなら魔法を使わずに出来ると思うから」


「うーん……リーブの体力が削られるのは得策だと思えないんだよね」


「じゃあどうしようか?」


 このまま良い案が浮かばないままログアウトの時間を迎えてしまった。


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