第97話 クジラ
「リーブ、白鯨が魔法を打つように嫌がらせしてくれない?」
「わかった!!」
白鯨が魔法を打たなくなって下で暇していたリーブに白鯨へ攻撃するように頼んだ。私の仮説が正しければ、白鯨が魔法を打つように誘導出来れば、この硬い筋肉で守られた白鯨を倒すことが出来ると思うんだよね。
「
実は、リーブは器用に色々な魔法を使えるから、遠距離攻撃も出来るんだよね。まあ威力が高い訳では無いから、白鯨相手には全くダメージは入らないだろうけどね。今回の目的は嫌がらせだから、それでいいんだよ。
チクチクと魔法が当てられて、流石の白鯨もウザったらしいのか、魔法陣を発生させて反撃しようとした。
「やっぱりこの噴気孔は魔法使用時に開くのね!」
私の仮説とはこの噴気孔は呼吸ではなく、空中に魔法陣を発生させるため、体内にある魔力を外に出すための穴だというものだ。
私の予想は当たり、魔法陣が発生させようとした瞬間、噴気孔は開き、高密度の魔力が溢れ出てきた。高密度の魔力で押し返されそうになったが、このチャンスを逃せば、勝ち目は無くなってしまうため、私は噴気孔にしがみつきながら、炎聖を纏わせた刀を噴気孔へと突き刺した。
炎聖と高密度の魔力が反応したのか、噴気孔から白鯨の体内へと聖なる炎が激しく燃え出した。噴気孔は大きな炎を出す穴に豹変し、白鯨は炎聖の炎に体内を焼かれていることで、飛ぶのを維持出来なくなったのか、地面へとゆっくりと落ち始めていた。
「これで私の勝ちかな?」
「サキ!早く降りてきなさい!!」
「どうして?」
「現実世界のクジラは死体になると段々とガスが体内に溜まって爆発するの!もしそこを再現しているのだとしたら、最後の最後で自爆するかもしれないよ!!」
確かにこのゲームの運営はファンタジーの世界でありながら、現実志向の考えも持っているから、その可能性は大いにあるね。逃げるだけなら、マルコに乗せてもらえばいいか。
1度戻していたマルコを再度召喚して乗せてもらい、リーブの方へと逃げようとした。その瞬間、白鯨は大きな唸り声を上げ始めた。
「もう爆発するつもりなの!?まだこの場所じゃあ巻き込まれちゃう!!」
「グァ!!」
マルコは何も命令していないのに急停止した。慣性のまま私は投げ飛ばされてしまった。そこへマルコが風魔法を発動したことで、私はリーブの方まで吹き飛ばされた。私が投げ飛ばされたとほぼ同時に白鯨は自爆した。
私は爆発にギリギリ巻き込まれなかったが、マルコは私の前で爆発に巻き込まれデスしてしまった。テイムされたモンスターは復活するのだが、それでも私を助けて亡くなってしまうのは、かなりショックが大きい。
「マルコォ!!」
「ダメだよサキ!これ以上近づいたら爆発に巻き込まれちゃう!!せっかくマルコに助けて貰ったんだから、無駄にしちゃダメだよ!!」
「はぁはぁ」
ここまで感情的になったのは久しぶりな気がするなぁ。マルコと仲間になってからまだ日が浅いけど、仲間を失うのはやっぱり辛いなぁ。
「マルコが復活したらお礼を言って、いっぱい褒めてあげよう」
「……そうだね」
やっぱりリーブは優しいなぁ。こんなリーブを……今でも、いや一生許すことは出来ないだろうな。
「白鯨の討伐でかなりポイントが手に入ったね。それでも1位の『闇の翼』は圧倒的だね。確かこのクランのリーダーはカイだったよね」
不穏な空気を読んで話題を変えてくれたのかな?
カイ……【勇者】の称号を持ちながら、私と同じ
「他のクランたちもかなり稼いでいるから、私たちはトップ10に入られれば御の字だよね」
「でも白鯨討伐でやっとトップ20に入れるくらいだから、もう一体くらいボスクラスのモンスターを討伐しないとトップ10入りは難しいよね」
「そうだね。今回だってたまたま白鯨を倒せたから良かったけど、手強い相手だったからね」
「同じ場所にボスクラスが二体も居るとは思えないから、他の場所に移ろう」
私たちは森を後にして、以前巨大ヤドカリと戦った海岸へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます