第95話 ウェットスーツ
次に私たちがエンカウントした相手は、本来ならでっぷりとした腹を持ち、棍棒を引き摺っているオークが、身に付けているウェットスーツによって腹が引き締められているウェットスーツオーク(仮)だ。
そのウェットスーツオーク(仮)が持つ武器はトライデントのようなものだね。槍の先が三つに分かれていて、かなり攻撃力が高そうな武器だよ。トライデントは槍と同じで日本刀では不利なんだよね。距離を取りながら戦われたら、近づくのが難しいからね。
「サキ、日本刀でも勝てそう?」
「私のこと誰だと思っているの?春風流の師範だよ。槍だろうと銃だろうと負けるつもりはないよ」
まあ最近、銃使いのサスケさんに負けてるから説得力ないんだけどね。でも武器の扱いに関しては、一部のイカれた猛者を除いて負けることはないと自負しているから、間違いではないんだけどさ。
「じゃあ、少し本気を出してみようかな。春風流
居合い切りの瞬間に炎聖を纏わせた斬撃を飛ばす龍砲改は、龍王の息吹のような威力と殲滅力を誇り、多少強くなろうと所詮オークでしかないウェットスーツオーク(仮)では耐えられるはずがない。もし耐えて来たらきたで、ほかの攻撃を試せるからこっちからしたら、そっちの方が嬉しいんだよね。
まあ耐えられるはずがなかったよね。オークは体を焼き尽くされてポリゴンとなって消えていった。オーガとオークでは確実にオーガの方が圧倒的に強いはずなのに、ゲットできたポイントはオークの方が多かったから、海パンとウェットスーツだとウェットスーツの方が強化度が高いんだろうね。
「やっぱりこれまで経験してきた相手に比べたら、全員弱いね」
「これまで戦ってきた相手がおかしいって考え方が一般的だろうけどね」
「酒呑童子の
よくよく考えてみれば、私たちが出会ったモンスターは私たちより格上が多くて、逆に言えば成長出来る機会が他の人に比べて多いと言えるから、他の人のレベル帯に合わせて作られたイベント用モンスターは、私たちにとって物足りないのは事前に分かる事だったなぁ。
まあ私たちと同レベル帯の人も少ないけど居るから、私たちレベルに合わせたモンスターも居ないことは無いだろうから、それにかけて森を進むしかないかな。
「私たちでも楽しめる相手を探すために森を進むしかないよね」
リーブも私と同じ考えだったみたい。
さらに森の深いところまで進んだ私たちだったが、急にモンスターとのエンカウントが無くなったため、ボス戦を意識して周りに気を配り続けている。そのため私たちは体力を削られ続けていた。
「エンカウントしなくなってから結構歩いてるけど、ボスが全然来ないね」
「うーん、ボス戦じゃなくて普通にエンカウントしてないだけなのかな……いや、そんなこと確率的に有り得ないと思うけどなぁ」
ゲーマー特有の確率論を考えるために1人の世界に入ってしまったリーブのことを放っておいて、私は警戒し続けていた。
そしてその時はついにやってきた。
「やっぱりボス戦だったね。ずっとエンカウントしない確率なんて宝くじ当てるより難しいだろうから当たり前だけどね」
勝手に一人で納得しているリーブは放っておいて、私は相手の特徴を見極めることにした。
私たちの目の前に現れたモンスターは、空に浮かぶクジラのようなモンスターだ。俗に言う白鯨のように真っ白なクジラだ。確実にこれまで戦ってきた海パン系やウェットスーツ系のモンスターとは一線を画す強さだろうし、巨大過ぎる身体はそれだけでも脅威になるからね。
しかもあのモンスターとエンカウントした瞬間、森に居たはずの私たちはだだっ広い平原に転移させられていたから、森という障害物がなくなった今現在、私たちはクジラの体に近付ける手段が無くなっているから、かなり不利なんだよね。
ただ海じゃないだけまだマシだよね。もし海に転移させられていたら、何も出来ないまま一方的にやられるだけだったからね。
「そろそろ確率論の話はやめて、目の前の敵について話そうよ」
「……」
「はぁ、痛いのは我慢してね」
私は思いっきりリーブの頭をひっぱたいた。物理的なダメージはないだろうけど、その衝撃は食らっているはずだから、戻ってくるはず……よし、戻ってきたね。
「なんで叩いたのサキ!」
「それはリーブが全然反応しないからでしょ!!」
私の声に全く気付いていなかったらしい。やっぱりリーブは集中力が凄いね。その集中力を少しでも勉強に向けられれば赤点なんて取るはずないのになぁ。リーブは極度の勉強嫌いだから仕方ないか。
「白鯨が動くよ!」
「分かってるよ!」
白鯨の初撃は魔法みたいだ。
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