第93話 殺気のない攻撃
彼女はこちらに銃口を向けて狙いを定めていた。
私の動体視力があれば、引き金を引く瞬間さえ見ていれば避けられるので問題は無いと思う。だけどそれは第一回イベントに参加していた彼女にも分かっているはずだから何かあるのかも……。
「色々考えているみたいだけど私の攻撃は単純だよ。付与魔法
「それは見た事あるよ」
彼女の放った弾丸は、麻痺させてくるものだろうけど私には状態異常が効かないからあまり気にする必要は無いかな。
私は額を狙った弾丸の軌道上に刀を振るい、弾丸を真っ二つにした。真っ二つになった弾丸は勢いを失い地面へと自由落下していった。
私の魔法は致命傷になるか、魔力を使い切らない限り回復出来るので、一撃で倒せる可能性が一番高い額を狙ってくるという予想だったが、予想通り彼女は額を狙って来たため、簡単に防げた。
「本当に貴女の動体視力は化け物じみてる……私でも銃弾を見てから切るなんてこと出来ないよ」
「弾丸の軌道を予想していただけだったから切るのは簡単だったよ。まあ見てからでも出来るだろうけどね」
「やっぱり化け物だね」
私はこうやって話している間も警戒を解かなかったけど、やっぱり彼女は一切の殺気も見せることなく銃を撃ってきた。引き金を引く瞬間を見ていたので、こちらに届くまでの間に軌道を読んで切り落とすことが出来た。
彼女のすごいところは人を殺すのに殺気を見せないところだ。たかがゲームと思われるかもしれないが、ゲームでも殺そうとすれば殺気は多少なりとも漏れるはずなのに彼女は1ミリも漏らすことなく殺そうとしてくる。
殺気が感じられない相手には常時警戒していなければ攻撃に対応出来ない。しかし常時警戒し続けるというのもかなり精神を削る作業になるから、こういう相手には出来るだけ早く決着をつけるのが大事なんだよね。
「この距離で見てから反応するなんて……貴女、人間じゃないよ」
「酷いなぁ……まあ他の人間には出来ないような剣技を持ってるのは否定しないけどね」
このままではジリ貧なので距離を詰めた。彼女は忍者らしく近距離戦も強者なので油断は出来ないけど、私ほど剣技を鍛えているとは思えないのであまり警戒はしていない。
私の日本刀と彼女の忍刀がぶつかった。鍔迫り合いでは私の方が押しているようだけど、暗器を警戒しないといけないから、まだまだ油断は出来ない。
「サキさんは見た目によらず力が強いんだ……ふっ!」
「――っ!」
近距離戦で必須の忍刀を離して、何処からか取り出した棒手裏剣を私の目を狙って投げてきた。私は考える前に身体が反応してしまい後ろに仰け反ってしまった。
私が棒手裏剣を避けないで、刀を振り下ろしていたら負けていたはずなのに捨て身の攻撃をしかけるなんて彼女もギャンブラなんだね。今日のところは私の負けかぁ。
「サキさんなら避けると思っていたよ」
「信頼してくれていたんだ」
私は額を銃弾で貫かれ、クリティカル判定で体力が全損した。私の身体はポリゴンとなり、デスポーンした。
私は一度ログアウトして現実世界に戻って来た。
「はぁ、ゲーム内のキャラクター相手に負けても悔しいけど、それ以上にプレイヤーに負けるのは悔しいなぁ」
リーブ……咲良から電話が来た。
『美咲もオフラインになったってことは、サスケさんに負けたんだ』
「そうなんだよね。メインの武器であるはず刀を離して暗器を投げてきたからさ、不意打ちもあって避けちゃったんだよね」
『なるほど……やっぱり忍者ってのは多彩な攻撃方法を持っているってのを警戒した方が良かったかも。あと次からは街の外に出た瞬間から
「私の方が警戒して、咲良はモンスター討伐に力を入れてもらうのが効率がいいかも?」
『そうだね。私はPKのことを見つけられる自信が無いから警戒は任せるよ』
私たちはその後一時間程度通話をしてから終わりにした。通話を終え、ゲームをやるほどの時間もないため勉強をすることにした。
学校の勉強ではなく、殺気を出さないで攻撃する方法の勉強だけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます