第92話 ポイント
「貴女が何を恨んでいるのか私たちに教えてくれない?」
メリーさんは私の言葉を無視して、私の手の甲を包丁で刺してきた。
痛みだったり、神経がやられて離してしまうことはこのゲームの性質上有り得ないが、代わりに総HPは少しずつ削られているので限界はあるけど、私の残りHPと受けるダメージを見た感じ、負けることは無いだろうね。
「貴女は棄てられたのかもしれない。けどね私は貴女のことを棄てないよ。貴女だけじゃないそこに居るリーブや頼光たち従魔も見捨てることは無いよ。この世界が無くなるまで私は貴女たちを捨てることは無いよ」
「サキ……」
ここは所詮ゲームの世界だからいつかサ終が来て消えてしまうのが分かっている。でも私は最期の時までこのゲーム続けたいと思ってる。今以上に仲良くなったリリやアーサーたちとの別れはきっと悲しいものだろうけど、それ以上に思い出を作れると思うからね。
「だから君も私たちと一緒に冒険しよ」
『……私メリーさん。今友達を欲しているの』
【メリーさんが仲間になりたそうにしています仲間にしますか?Y/N】
もちろんYESで。
【メリーさんが仲間になりました】
「これから一緒に冒険を続けようねメリーさん」
『私メリーさん……私メリー。メリーって読んで欲しいの』
「分かったよ。よろしくねメリー」
人形だから表情筋は無いはずなんだけど、メリーの頬をが緩んでいるような気がした。
その後私たちは、メリーをこの場所の呪縛から解くことが出来たので、アヤシ・メンからこの館をクランハウスとして受け取ることとなった。
彼は私たちがこの館を残したままメリーを祓うことが出来ると思っていなかったのか、悔しそうな顔をして所有権を渡して来た。
居住を確保出来た私たちはイベントに万全の状態で挑戦することになる。
今回のイベントは、イベント期間中にマップのどこでも湧く特殊モンスターを討伐する事で獲得出来るポイントを集めて、クランの総計で勝負するイベントらしい。クランハウスに戻ることでポイントをクランハウスに預けられて、預けてないと持っているポイントをモンスターにキルされたら全て失い、プレイヤーにキルされたら半分持ってかれるみたいだね。だからある程度貯まったら面倒くさがらずにハウスまで戻って来た方がいいかな。
「じゃあポイントがある程度貯まったら戻ってくるでいいかな?」
「リーダーはサキなんだから、サキがそう思うならそれでいいと思うよ」
うーん、信頼されてると思えばいいんだろうけど、丸投げされてるように感じるなぁ。
「じゃあ決定で。取り敢えず街の外に出てみて、どんな感じのモンスターが居るか探しに行こうか」
「そうだね」
私たちが街の外に出ると、何時もより多くのプレイヤーがモンスターと戦っていた。そのモンスターは見た目はゴブリンのような姿形をしているが、男物の水着を来ていた。
「なんとも言えない格好だね」
「きm――」
「サキ!それ以上は言ってはいけないよ。今の時代に外見で相手を判断するのはダメだよ!」
うーん、でも元々醜悪な見た目をしたゴブリンが新品みたいなキレイな水着を着ているのは違和感だらけなんだよな。
「ここら辺はプレイヤーが多いから、もうちょい奥の方に行こうか」
「そうだね――っ!?」
私の頭を狙って銃弾が森の方から飛んで来た。
その弾丸を私は
「リーブ!伏せて」
「えっ?」
声を掛けるのが1歩遅かった。リーブは頭部を弾丸に貫かれ、弾丸に貫かれた勢いのまま後ろに倒れた。
リーブの仇をとるためにも弾丸の軌道の先を見るとそこにはこちらに拳銃を向けているサスケの姿があった。
「貴女は……サスケさんだよね。第一回イベント4位だった人だよね」
「そうだよ」
「ちなみに私は今からモンスターの討伐を始めるところだからポイントは一切持ってないよ」
「私は貴女と戦ってみたいからやるだけだよ」
あの時と少し性格が変わっているような気もするけど、気の所為かな?
戦いを挑まれたら春風流の名にかけて引く訳には行かないよね。
私は肩から先を刀で切り落とした。
「やっぱりあなたイカれてるね」
「それほどでも。
この魔法は完全に治せると言っても肩の中に残っている弾丸そのものや破片を取り除くことは出来ないから、一度切り落とす必要があったんだよね。
魔力の消費量は増えるけど、私が使う白系魔法の消費魔力は微々たるものだから誤差の範疇なんだけどね。
「じゃあ始めようか」
私は刀を強く握り締めた。
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