閑話 運営2

「ふぅ、いろいろ予定が早まったが、無事イベントは始められたな」


「そうですね。でもあんなに早くイベント開始のクエストをクリアするなんて思いもしませんでしたけど」


「そうだな。しかも"酒呑童子"のクエストなんてまた難しい奴をクリアしやがって、奴が"神化"しやがったら厄介な奴になるぞ」


 運営の者たちは、サキが酒呑童子をテイムしたことに少し焦りを感じていた。


「そのくらい別に構わないでしょ」


「そのくらいって……"酒呑童子"の神化条件は日ノ國でゲット出来るんだぞ、日ノ國の入国は難しいが入ったら意外と簡単にクリアされてしまう」


「でも"日ノ國"は将軍争いで勝利した徳山家についているフォートが居るんだ。まだまだ無理なはずでしょ」


「……それもそうだな」


「今はイベントの事を考えていないとまたあのプレイヤーは何か起こすかもしれないんだから」


「そうか……流石に戦いで変なことはやらんだろ」




「鈴木さん報告です。"不死鳥フェニックス"のクレハが予選敗退しました」


「何!?誰が倒したんだ?」


「そ、それは」


「どうして言い淀む」


「それがクレハを倒したのは、あの"酒呑童子"をテイムした"サキ"というプレイヤーでして」


「なに!?アイツは強い攻撃魔法など持っていなかっただろ?それなのに物理攻撃を無効する"炎化"を持つクレハを倒せたのだ!?」


「それが神聖魔法の"炎聖"を刀に纏って攻撃していたみたいで」


「それは酒呑童子との戦いで一番最後に使った奴と同じか?」


「あんな必殺技みたいではなく普通の攻撃として使っていました」


「そうか……」


 奴は何者なんだ?あそこまでの実力を持っていながら前作NewWordOnlineでは一切名を残していなかったぞ!?それとも現実での刀のプロなのか?奴の流派は確か春風流だったな?もしあの教科書にも載っている春風の人間だったらネットに載っているかもしれないな。


「……木さん、鈴木さん!」


「お、おうどうした海藤?」


「いえ鈴木さんが急に黙り込んだので」


 海藤とはNewLifeOnlineにてイベントの司会を務めていたシュカイの正体であり、この会社のイベントの日程や内容を決めている作家でもある。


「いやサキというプレイヤーの現実での正体についておもうところがあってな」 


「鈴木さん、いい歳したおっさんがロリコンとか正直引きますよ」


「ち、違うぞ川嶋!俺はサキの実力はどこから来ているのか知りたいだけだ。それに俺はまだおっさんっていう程の歳じゃねえぞ!?」


「私からしたらもうおっさんですよ」


「相変わらず川嶋さんは鈴木さんへは辛辣ですね」


 海藤の言う通り川嶋の言葉はとても辛辣だった。


「はぁ、海藤さん貴女は私より年上なんだから敬語は辞めて下さいって言ってるでしょ。それに私は辛辣じゃなくて事実を述べているだけですから」


「事実て酷くない!?川嶋俺の会社の社員でしょ!?」


「黙って下さい。高校生絵描きとして売れてなかった私を拾ってくれたことは感謝していますが、それとこれとは別です」


「ほ、ほら川嶋さんもちょっと落ち着いて冷静になろう?」


「私はずっと落ち着いてますし、冷静ですよ」


「もう!!ああ言えばこう言う!!そもそも川嶋さんは鈴木さんのことがす「失礼します!!」」


「どうした佐藤、そんなに慌てて、イベントにバグでも発見したのか?」


「いえイベントは関係ないのですが、メインAiの知らない空間の歪みが発生したみたいで」


「空間の歪みだと?どこかのNPCが時空間魔法でも使ったんじゃないか?」


「俺もその可能性があると思って調べたのですが、時空間魔法を使ったNPCは一体たりとも居なかったんです」


「そうか……」


 空間の歪みか、時空間魔法を使えるNPCは五英雄や魔導王国の数名など少数だけな筈だ。それなのに空間の歪みを探知したってことはバグか?


「佐藤その空間の歪みが起こった場所では何が起こっていたか調べろ」


「はい!」


 鈴木が佐藤からの報告を聞いている間、川嶋と海藤はこしょこしょと小声で話していた。


『海藤さんこれ以上あのことは口走らないように、もし少しでも言ったら潰しますから』


『はいはい、もう川嶋さんはツンデレなんだからぁ』


『何か?』


『いえ!なんでも!』


 小声で話していた二人だったが、退室する際に横を通った佐藤には聞こえていた。


『川嶋怖えぇぇ!!』


 佐藤はそう思った。






「分かりました!その場所ではとあるエクストラクエストが受けられていました」


「エクストラクエストだと?どれのことだ?」


「それは元将軍家からの依頼で月光泉の谷での地竜ティラノサウルスの討伐です」


「てことはその空間の歪みは月光泉の谷で起こったのか?」


「はい。ですがその場所での戦闘記録が残っていないんです」


「戦闘記録が残っていないだと!?それはなぜだ!?この世界はメインAiにプラスしてサブAiが天界から覗いているはずだぞ」


「それが戦闘を行っている間だけ、結界のような物に覆われて記録が撮れなかったようです」


「サブAiをも超える力の持ち主だということか……だがそんなものこの世界に存在していないだろ。そもそもそんな強力な存在が何かのバグで産まれたのならメインAiが対処しているはずだ」


「俺もそう思って結界が外れたあとのことを調べてみたのですが、衝撃的なことが分かりました」


「衝撃的なこととは?」


「それは地竜が進化していました。それもただのモンスターからUMユニークモンスターである竜人へと進化していました」


「地竜が竜人へと進化だと!?そんなこと普通はあり得ないだろ!?そもそもUMへの進化は最終進化をしてある程度のレベルを超えるとなるはずだ!!急なUMへの進化などあり得ないだろ。それ以外だと名付けがあるが」


「そうなんです。急にUM進化するなど名付けをしない限りあり得ないんです」


「だが名付けはあの種族の固有能力だったはずだ」


「これは俺の予測ですが、あの強すぎるとメインAiが判断して絶滅へと追い込んだ――族が生き残っていたんだと思います」


「そうか……あの種族が生き残っている可能性があるのか……だがメインAiが感知できないなら俺らには何も出来ない。だから俺らは静観しておこう」


「「「はい分かりました」」」





「イベントが終わったので明日は後処理をします!!」


「「「えぇぇぇ!!!」」」


「面倒くさいです」


「川嶋はイベント期間中は何をしていた?」


「えぇーと仕事?」


「お前はずっと試合見てただけだろ!!イベント後にアップデートが控えているってのによぉ!」


「はーい私はずっと司会やってたので休んでいいですか?」


「まあ海藤は頑張ってたしな、いいぞ」


「やったぁ!!そしたら佐藤さんも良いですよね」


「えぇ俺も!?俺は仕事しますよ」


「え?ちょっと佐藤さんこっちおいで」


「何ですか?」


『空気読んでよ大和』


『え?空気を読むってなんで?俺は働きたいんだけど』


『はぁそういう所が空気を読めないって言うの!』


『は、はぁ?』


『もう!!だから大和は明日は休むの!!』


『わ、分かったよ綾女』


『それで良し』


 まぁ私が大和と一緒に居たいのもあるけど一番の理由はあの二人なんだけどね


「鈴木さんやっぱり私も休みたいです。てか佐藤さんが働きたいって言ってるんだから働かせて上げて下さい。そして休みたいって言ってる私は休ませて下さい」


「いや無理だよ!?佐藤は休ませるし、川嶋は休ませないよ!?」


「ひ、酷いですオヨヨヨヨ」


「いや急にキャラ変えてこないで!!」


 はぁもうあの二人はまた痴話喧嘩して……でも仕事となったら阿吽の呼吸でこなすから、そこが凄いんだよね。


「ちょっと二人とも喧嘩しないで仕事終わらせようよ」


「海藤も酷くない?俺は喧嘩してないんだけど!!?」


「鈴木さんは煩いです」


「マジで今日は一段と酷いよ!?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ここからはあとがきです。


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