第36話 カイVSサキ3

 二人は拳のぶつけ合いを始めた。

 しかし二人の実力は拮抗しているため、片腕を失い手数の少ないカイが押されていた。


「カイ!!私を貴方の手で終わらせるんじゃないの!?」


 そう言うサキに対してカイは沈黙を貫いた。その反応に少し苛ついたのか、サキは攻撃の手を更に増やした。

 サキは右の拳でカイの頬目掛けて殴りかかったが、カイの左手によって掴まれてしまった。


「サキ、お前はステゴロでの経験が足りてねぇよ」


 カイはサキの拳を掴んだ左手を自分の方へと引き寄せ、サキの体が自分の方へと寄って来たところに外回し蹴りをしてサキのことを吹き飛ばした。


「やっぱり喧嘩じゃあ勝てないかぁ。だからごめんねスキルを使わせてもらうから、龍聖拳・炎」


 サキは龍聖拳・炎で両腕に炎と闘気を纏わせたことによって、喧嘩の技術の差を埋めようとした。


「後付けの力で俺の技術を超えられると思うなよ」


 カイも喧嘩の構えを作った。

 それからのぶつかり合いは激しさを増した。

 サキが炎と闘気を纏った拳をカイの鳩尾目掛けて殴ろうとしたら、カイは闘気を纏った左手で力を流していなした。

 このままでは攻撃が当たらないと思ったサキは、拳だけではなく蹴りも攻撃に入れ始めた。蹴りを混ぜたサキの攻撃は段々とカイの身体にダメージを与え始めた。


「クソったれが!」


 ここまでの差はどこで生まれた?やはりさっきの大技を右半身にもろに受けたのが痛かったのか、だが奴の技術とで差はゼロのはずだ。何が、何が奴と俺とでは違うんだ!?


『分かっているはずだお前はあの事件に囚われている』


 違う!!俺は囚われてなどいない!!


『ならなぜ全力での喧嘩の構えをしないんだ?』


 そ、それは今はあれよりこいつの方が使い慣れているから!


『言い訳をしても意味はない。だって俺はお前だからな』


 何を言っているんだ!?


『変われ、そうすればお前はきっと勝てるぞ』


 嫌だ!!俺はアイツに誓ったんだ!もうあんなことは嫌なんだよ


『そうかならもういい。だがこの試合は諦めてやるが、いつかお前は俺の手を取りたくなる』


 大丈夫だ俺なら勝てる




「何か考え事でもしてるのかな?」


「っ!?」


 カイが一人思考の海に潜っている間にサキは顔目掛けて右手の拳を振るっていた。

 それをカイは類稀なる反射神経でギリギリのところで避けていた。


「でも次は当たるよね!」


 サキが右手を引くのと同時に左足を蹴り上げたことにより、カイの顔にクリーンヒットした。


「はぁはぁ……効かねぇな」


「頑丈だね。ならまだまだいくよ!」


 そう言ってサキは、蹴飛ばしたカイに勢いよく近付き、踵落としをした。


「っ!!」


 カイはギリギリのところでサキの落ちてくる踵を左手で掴み止めた。


「喧嘩で踵落としは駄目だろ」


 カイはサキの足を掴み、振り回してから投げ飛ばした。


「痛いなぁ。そろそろ終わりにしない?」


「いいぞ」


「じゃあ本気の一発を打ち込もう」


「行くぞ」


「龍聖拳・修羅」


「闇手」


 サキは腕に闘気を纏わせるのではなく、拳にのみ纏わせることで闘気の密度を上げてカイへと殴りかかった。

 それに対してカイは左腕に闘気を纏い、その外側に闇を纏ってサキへと殴りかかった。

 そしてこの長い試合に決着がついた。




「貴方は最後まで本気を出してくれなかったね」


 勝者となったサキは小声で呟いた。


「優勝者は剣聖女サキだぁぁぁぁ!!」


「「「うおぉぉぉぉ!!」」」


 実況のシュカイがそう叫ぶと会場中の人たちが叫んだ。

 そして直ぐに優勝者であるサキへインタビューを開始した。


「今どんな気持ちですか?」


「そうですね……いろいろな実力者がいたのでもっと戦っていたかったです」


「そ、そうですか。これから表彰に入ります!」


 彼女は戦闘狂過ぎるサキの発言に少し引いていた。


「第三位氷姫かぐや選手」


「はい」


「三位のかぐや選手には、レアスキルチケットと称号【氷姫】を授与します」


「ありがとうございます。(氷姫の称号ってどういうことですか!!)」


「第二位勇者カイ選手」


「はい」


「二位のカイ選手には、レアスキルチケットと称号【勇者】、そしてクラン設立権を授与します」


「ありがとうございます。(勇者か…………)」


 カイは勇者という称号に何か思うところがありそうだった。


「第一位剣聖女サキ選手」


「はい!」


「一位のサキ選手にはレアスキルチケットと称号【剣聖女】、そしてクラン設立権とユニークスキルオーブを差し上げます」


「ありがとうございます!!(ユニークスキルオーブってなに!?気になり過ぎる!!)」


「次に優秀選手を発表します。一つ注意点があります。それは入賞者は選ばれませんのでご了承下さい。優秀選手はサタン選手、ベガ選手、クレハ選手、ペテル選手、クリムゾン選手の5名です。そして最優秀選手は死神サスケ選手です!!優秀選手の5名にはスキルチケットが送られます。そして最優秀選手の死神サスケ選手にはスキルチケットと称号【死神】が授与されます」


「ありがとうございます。(やっぱり物騒だよなぁ死神って)」


「これにて表彰式を終わります」


「(やっと終わった!!早く咲良に会いに行かないと)」


 サキがそう思ってコロッセオの外に出ると


「サキカッコよかったよ」


 リーブがサキの事を待っていた。


「さく――じゃなくてリーブどうしたの?」


「いやちょっとね」


「ちょっとって?」


「気になることがあって急いで王都に来たけど、私の勘違いだったみたい」


「そっか、取り敢えず宿をとってからログアウトしようか」


「そうだね」


――ログアウト――


 ふぅ、長かったけど楽しかったなぁ。でも私ももっと強くなって、カイさんや他の人達にもっと差をつけて勝てるようにならないとなぁ


『美咲!ご飯だよ!!』


 えっ!?もうそんな時間!?「分かった。今行く!」


 ログインしたのは昼過ぎだったが、美咲が思い出に浸っている間に時間はあっという間に過ぎ、時計を見ると6時を過ぎていた。


「ふぅ美味しかったなぁ牛のミノ。でもなんで急にミノだったんだろう?あっ!!宿題やってなぁぁぁい!!」


『美咲うるさいよ!』


「ごめんなさい~」


 はぁなんでやるの忘れてたんだろう、ゲームにハマりすぎてたのかなぁ?

 そういえばNewLifeOnlineって掲示板があったんだっけ?


――回想――


『そういえばサキめっちゃ掲示板で有名だね』


『けいじばん?』


『あれ?知らなかったの掲示板のこと』


『その掲示板?で有名ってどういうこと!?』


『見れば分かるよ』


――回想終了――


 どんな掲示板があるかな?見てみよっと


 第一回イベントについて〘3〙


1:無名の敗北者


イベントについて話し合う掲示板です。人名を出すのはやめてください。

戦闘で使わなかったスキルについては知っていても載せるのは厳禁です。


この掲示板は運営に監視されているので迷惑行為は直ぐにBANされます


次スレは1000コメの人お願いします


――――――――――――――――――――


312:無名の盾戦士

で、あの無名で不死鳥を降した刀使いは何者なんだ?


313:無名の侍

知らん。そもそも実力者かどうかすら知らん


314:クルト

アイツの実力は確かだったぞ


315:無名の魔法使い

お!経験者が語るなら確かだな

>>314

無名に敗北ご愁傷様です


316:無名の剣士

実際何がすごいんだろうな?俺にはなにがすごいか分からなかったぞ

>>314

ご愁傷様です


317:クルト

アイツのすごいところは圧倒的なPSだな。アイツの戦いは全くもってスキルに頼ってなかった


318:無名の剣士

>>316

それまじかよ!このゲームはPSとスキルと職業によってアバターの動きが決まるとか言ってるがほぼスキルと職業が無いと戦うなんて無理だったぞ!?


319:クルト

だからアイツは現実で武道の経験者だろう。しかも師範クラスだろうな


320:無名の大盾使い

そろそろ決勝の話をしようぜ


321:無名の弓使い

戦いの動画のURLを載せておくね

https:✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕


322:無名の敗北者

転載乙


323:無名の盾戦士

この戦いは燃えたよな


324:無名の剣士

>>323

それな

特に後半の素手の戦いが素人の俺が見てもすごいのが分かったからな


325:無名の弓使い

でもあの人があんなにバトルジャンキーだったとは誰も思ってなかったけどね


326:無名の魔法使い

バトルジャンキーのあの人が勇者ってのが草生えるんだがww


327:無名の剣士

だが準決勝まで本気の戦いをしてなかったから仕方ないだろ、あの人はNPCのクエストをものすごい量受けていたから運営か、NPCか知らないが勇者と判断したのは間違ってはいないだろ


328:無名の弓使い

勇者といえば準決勝に進んだ四人は自分の二つ名と同じ称号を貰ってたけどどんな効果があるのかな?


329:無名の剣士

>>328

効果は三つの候補があると思っている

①NPCへの好感度アップなどのNPC関連

②名前に変わらず全員同じステータスアップ

③称号の名前にあった効果がつく

③が一番ありそうだと俺は思っている


330:無名の魔法使い

まあそれが妥当だな


331:無名の盾戦士

そういえば表彰で貰ってたクラン設立権ってなんだと思う?


332:無名の敗北者

それは、大型アプデスレで話してるぞ




 大型アプデかぁやっぱりクランのことかなぁ?あ!でも咲良がなんか言ってたなぁ。


――回想――


『ねえサキ種族って何か分かる?』


『種族?人間とか魔物とかってこと?』


『それもそうなんだけどさ、あるNPCが超人間ハイヒューマンとか言ってたんだよね』


 詳しくは第29話を見てください


『なにそれ?』


『多分だけど次のアプデで種族の進化があると思うんだよね』


『種族の進化かぁ』


『なにその自分には関係ないみたいな反応は』


『だって私レベル足りてないし』


『レベル足りてないって今合計レベルいくつ?』


『合計レベルもなにもまだ職業一個目だし、まだ81だよ』


『81かぁ、あと少しだけ足りてないね。多分だけど』


――回想終了――


 明日はレベルでも上げようかなぁ?おやすみなさぁい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ここからはあとがきです。


応援や評価をして頂けると創作意欲に繋がりますので時間があればお願いします。


フォローや感想もして頂けると嬉しいです


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