第12話 日常編2
――学校――
ここは日本の首都京都にある世界レベルの学園、私立翔凛帝国学園高等部である(日本は第三次世界対戦によって東京が住める状況ではなくなり京都が首都になった)
「ねぇ咲良ぁー」
「どうした美咲?」
「明日UM討伐記念のPVPイベントなんだよぉ」
でもテストがあるからレベル上げが出来ないんだよなぁ。まあ、頼光が討伐判定でレベルが上がっているから、そこら辺の魔物じゃあレベル上げ出来ないから、1日やった所で1レベル上がればいいってくらいだけど。
「そうなの!ちょっと早すぎない?」
「だって、私がUM討伐したし」
「流石、春風家次期当主の春風美咲だね」
春風家の次期当主である美咲は、既に春風流の道場で師範を行っているため、実力で言えばかなりのものと言える。
「まあね。でも今日もやりたいんだけど、明日の午前中テストだし、出来ないんだよねぇー」
「逆に私は明日から始められるよ」
「私がコロッセオにいる間にレベル上げ頑張ってね」
「ねぇ、一応聞くけど美咲はレベル幾つ?」
「うーんとねぇ、確か職業が聖女でレベル73だった気がする」
頼光のエクストラクエストのおかげだね。エクストラクエストがなかったら、30Lvにもなってなかったと思うし。
「え……?」
「あれ?咲良ぁ固まってどうした?」
「あっ、ごめんごめん、聞き間違えたみたいだから、もう一度聞いてもいい?」
「だから聖女のレベル73だよ!」
「えーー!」
咲良の驚愕の声が大きくて、クラスのみんなが咲良のことを見ていた。
「あっ、すみませーん」
「おーい、座れー授業始めるぞー」
「また後で話を聞くから」
そう言って咲良は自分の席へと戻っていった。
「今日の授業はここまで。宿題は今日の夜11時までに俺のパソコンに送信しとけよ」
授業を終えた先生は自動ドアから出ていった。
「ねぇ、美咲!なんでそんなにレベル高いの!」
「だから声デカいって咲良」
「あ、ごめん」
「ねぇ、咲良さんと美咲さんが話しているのってNewLifeOnlineのこと?」
『うわー面倒臭いやつが話しかけてきた』と咲良は思っていた。
今話しかけてきた相手は、龍蔵院 大河。彼は日本の造船の90%を行っている龍蔵院造船社長の一人息子である。
「そうだけど、何か?」
「そうなんだ、ならさ俺が教えてやるよ!」
『なーんで上から目線なんだよ!』と咲良は思っていた。咲良は文句言おうとしたが、先に美咲が返事をしていた。
「別に要らないよぉ?」
「いやでも、俺は最前線で活躍しているから教えてやるって!」
「だから大丈夫だって言ってるじゃん」
「教えてやるって言ってるだろ」
そう言うと大河は美咲の手を掴んだ。
その姿を見て咲良は『あー、こいつ社会的に死んだなー』と思っていた。
「触んないでよ!」美咲はそう言うと大河の手を掴んでキレイに背負い投げした。
格闘技未経験者の龍蔵院大河は、受け身を取ることが出来ずに背中を地面に強打して気を失った。
「おい、どうした?」
大きな音が鳴ったからか、先生が教室に入ってきた。先生は地面に伏している大我の姿を見て、事情を知っていそうな咲良たちに目をやった。
「龍蔵院さんが美咲にしつこく迫って美咲の腕を掴んだので美咲が背負い投げしました」
咲良はそう言ったが内心『ざまぁみろ』と思っていた。
先生は「そうか」と言うと大河のことを背負って保健室へと向かった。いい噂を聞かない大河よりも、頭は良くないが、真面目である咲良の方を信じるのは当たり前だろう。
ちなみに当事者である美咲はずっとアワアワしていた。
「どうしよう、咲良」
「別に気にしなくていいよ。あいつが悪いんだし」
「でもぉー」
「(はぁ、こいつは真面目なんだから)でもぉーじゃない!」
「はい!」
「気にしなくていいものはいいの!」
「わかったよ」
――その日の夜――
当事者である美咲、咲良、大河、彼女らの親たち、そして担任が学校にいた。
「その子が私の息子にケガさせたから1億の賠償金を要求します。それが出来ないのなら息子の婚約者になって貰います」
龍蔵院親子は揃ってニヤニヤとしていた。
「1億ですか?別に払えますが……それで解決ならいいですね。では私たちは帰りますね」
「おい!お前みたいな汚い道場をやっているやつに払えるわけないだろ!」
「あー、家の娘は株をやっていて総資産20億以上ありますし、家の流技は全国に展開していて、あなたが見たのは第三次世界対戦後からある本家の家のことでしょう」
「はぁ、ならそれでいいです」
明らかに親子のテンションは下がっていた。
「じゃあ私たちは帰りますので。帰ろっか美咲」
「はーいお母さん」
一応示談で解決となった美咲たちは、もう龍蔵院親子には用がないので、学校を後にした。
しかし大河が悪いのに謝りもしないのが、咲良には許せなかった。
「あれ?咲良と椿さんどうかしたんですか?」
「美咲さん、私たちはちょっとそこの親子に用があるので先に帰って貰って大丈夫ですよ」
「そうなんだ。じゃあ私たちは帰るからまたね咲良」
「じゃあねー美咲」
「おい!お前は誰なんだよ!」
「そうですわ、関係のない者が入ってこないで欲しいわ」
龍蔵院親子は関係者とは言い難い二条親子に怒鳴っていた。
「いいえ、関係はありますよ。あなたの会社について話があって」
「おいおい、混成院出身のサラリーマンの親が家の会社に用だと?笑わせるぜ」
「あら、混成院だからって社長じゃないとは限らないでしょ。まぁ私は社長ではないけれども」
「やっぱりそうじゃねえか」
「そうですわね。低俗な一般市民がなんのようです?」
咲良の母親が社長ではないことを知ると嘲るように笑っていた。
「私こういう者です」
しかし咲良の母親は二人を歯牙にもかけないで、淡々と名刺ケースから名刺を取り出し、大河の母親へと渡した。
TwoJapan社 会長
二条 椿
と書かれた名刺だった。
「なんだよ驚かせやがって、聞いたこともない会社じゃねぇか」
「そうですわね!」
「聞いたことないですか、うーん、ではこれならどうでしょうか?」
自分の会社のことを知らないということが分かると、自分の肩書きの中で一番有名なものが記された名刺を取り出し、渡した。
二条財閥総裁
二条 椿
「二条財閥……」
「……総裁」
「やっとわかってくれましたか、あなたの会社の不正の証拠を集めさせて貰いましたので、日本の財閥として潰させていただきます」
「えっ、おい!咲良!潰すのをやめさせろ!」
「私がなんでそんな事しないといけないの?」
「だってお前は俺のこと好きだろ」
「はぁ、なんでそんな事思っているんだよ?」
「俺から目を反らしてただろ、だから恥ずかしがってたんだろ」
「違うし、面倒臭いと思っていただけだから」
「うっ、うっ、おりゃー!!」
咲良からの好意が勘違いだったことが分かると大河は咲良に襲いかかろうとした。
「おい、やめろ」
先生は大我のことを止めようとしたが、椿に止められた。
「先生大丈夫ですよ、家の娘はそんなにやわじゃないので」
「そうですか?」
「せい!」
咲良は大河の首に腕を引っかけて、脚を払い大河を地面に転ばせた。
「そんなに、弱いならケンカ口調やめれば」
咲良は大河を蔑む目で見ていた。美咲とは違い手加減をして、地面にぶつけるような真似はしなかったが、1日に2回も女子に転ばされた大河の精神はズタズタだろう。
「帰りますよ、大河」
そう言って大河の母親は大河を連れて部屋を出ていった。
財閥に敵視されたことを理解した龍蔵院親子は俯きながら家へと帰っていた。
「では、私たちも帰りますので」
「先生さよなら」
「はい、さよなら」
「はぁ、今時の女子こわぁー」
先生の独り言は誰もいない部屋で木霊した。
ちなみに次の日の朝には龍蔵院社はなくなっており、日本の船のシェア率は90%がTwoJapan社になった
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここからはあとがきです。
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