第10話 VS酒呑童子

「来い!」


「いきます。春風流一閃」


「ほぉう、意外に速いな。でも、まだまだ足りぬな」


 頼光はサキの刀による攻撃を飲んでいた酒瓶で受け流した。


「な!?」


 攻撃を流されてしまい体勢の崩れたサキを頼光は脇差しの日本刀で斬りつけようとした。


「くっ!」


 サキは急いで振り抜いた刀を自分の前に戻して、頼光の攻撃を受け止めた。しかし力の差は一目瞭然であり、鍔迫り合いではサキが押されていた。


 強いさすが鬼の最上位種だね。でも師匠よりかは弱い!


「行くよ」


 そう言うとサキは一度後ろに下がった。そして刀を中段に構えた。


「掛かってこい!」


「春風流炎舞」


 サキの刀には炎が渦巻いているように見えた。いや、見えたのではなく魔法で炎を刀に纏っていた。


「ほぉう、聖属性に通ずる魔法の炎聖か」


「そうだよ。私はこれでも聖女だからね」


「そんな身なりでか?やはりお前は面白いぞ!!だが!その程度じゃあワシはお前についていけねぇなァー!!!」


 そんな身なりとは、未だにサキはみすぼらしい初心者装備のままなのだ。

 サキは聖なる炎を纏った刀を構えながら頼光目掛けて走った。しかし頼光が日本刀を横に薙ぎ払った風圧だけで、刀に纏われていた炎が掻き消されてしまった。


「なっ!」


 炎は消えても、サキ自身の勢いは消えずにそのまま頼光へと刀を振りかぶったが、それを頼光は刀で軽くいなした。


「もう何もないのか?それなら拍子抜けだぞ」


「まだまだ!……」


「おいおい急に黙ったがまさか威勢だけか」


「……」


 サキはただ黙った訳では無いが、出会ったばかりの頼光とリリルカは、それが分からなかった。


「何も言わないのか?もともとお前は殺さないつもりでいたが、気が変わった、お前のことを殺すことにした」


「話が違うじゃないですか!」


「はァ?なぜ何にもしていないお前がワシに文句言ってんだ!」


 サキは殺されたとしても復活出来るのだが、現地人のリリルカにはそれが分からず、頼光のことを引き留めようとしたが、頼光が放つ殺気に言葉を失った。


「……」


「まぁいい、こいつのことがおもしろく思えなくなったからだよ。もう世間話は終わりだ」


「【闇をも切り裂く神の一撃】春風流奥義月読命ツクヨミノミコト!」


 その刃は今までと比べて速く、鋭く、そして明るい神聖な光を纏った一撃だった。元々の春風流の奥義に魔法という非現実的なものを重ねることで、奥義の威力は何倍にも跳ね上がる。


「これは、少々やばいかもな」


 頼光は背中に背負っていた自分の背丈程ある大太刀、名刀【茨城童子】を抜いて攻撃に備えた。


「一閃」


 二人の刃がぶつかりあった。その後一瞬の鍔迫り合いの後に二人とも反発するかの如く吹き飛んだ。

 サキはその衝撃に耐えることが出来ず、壁まで吹き飛ばされてしまい、壁に勢いよく背中をぶつけた。


「うっ」


「ッ!」


 一方頼光は、地面に茨城童子を突き立てることで勢いを消し、壁にぶつかるのを防いだ。


「凄い一撃だったぞ。危うく瀕死になるところだったぜ」


「う……」


「おっ!まだ生きているのか、若い人間にしてはしぶといなぁ。……まぁここまで出来れば満足だな。おい!リリルカと言う者よ」


「は、は、はい、なん、でしょうか?」


 頼光の殺気で言葉を発することが出来ていなかったリリルカは、話しかけてきた頼光にビビりまくっていた。


「別にとって食ったりしねぇーよ、ただこいつのレベルが知りたいだけだ」


「サキのですか?サキはこちらにきたばかりなので、あまりわかりませんが職業が聖女のレベル13です」


「レベル13だと?……ハッハッハ!!本当にこいつは面白い!こいつに着いていく価値はある」


「う、頭痛い【ハイヒール】」


 一瞬脳震盪で気を失っていたサキは目が覚めると直ぐにハイヒールを掛けると頼光との戦闘に備えた。


「おい!お前」


「頼光さん……そっか私は負けたのかぁ。悔しいなぁ」


「いいや、俺の敗けだ。レベルが格下の相手に負けたんだからなぁ」


「でも敗けは負けです」


「じゃあ、降参で」


「え……」


「ほらワシの敗けじゃ」


「なら、私と一緒に来てくれるんですか?」


「おうよ」


【酒呑童子が仲間になりたそうにしています仲間にしますか?Y/N】


 もちろんイエスで。


【酒呑童子が仲間になりました】


「ステータス見てもいい?」


「別に構わぬぞ」


――ステータス――


種族 酒呑童子Lv159

名前 頼光

体力1530/51639

魔力5679/5679

スキル 剣神Lv11 酒之鬼Lv7 威圧Lv17 指揮Lv6 酒乱Lv19 状態異常無効Lv―

装備頭 熊童子のヘアバンド

上半身 妖鬼の上衣

下半身 妖鬼の袴

靴 妖鬼の下駄

武器 日本刀【虎熊童子】 大太刀【茨城童子】

アクセサリー 金熊童子のイヤリング右 星熊童子のイヤリング左

使える魔法

酒の毒霧MP600 酒狂いMP2500 眷族召喚MP300


――ステータス――


 強すぎない?

 サキが一番最初に思ったことがこれだった。そしてその後にサキはクエストを受けていたことを思い出した。

 あっ、クエストってどうなったのかな?


『プレイヤーサキが初めてエクストラクエストをクリアしました』


 え、なに?


『プレイヤーサキが初めてUMを討伐しました』


 だから、なに!?


エクストラクエスト

難易度7

酒呑童子 個体名【頼光】の討伐

失敗条件

討伐の失敗

リリルカ・ラーレットの死亡

成功報酬

???

をクリアしました


【エクストラクエストを特殊ルートでクリア】

酒呑童子 個体名【頼光】に認めてもらう

成功報酬

称号【鬼との友好】を獲得

街の領主へのコネを獲得

街の部隊へのコネを獲得

UWを獲得


称号 【鬼との友好】を獲得した


称号 【ジャイアントキリリング】を獲得した


武器 【酒乱之刀】を獲得した


 称号だったり、武器だったり、いろいろ役に立ちそうなのを獲得したなぁー。


称号 鬼との友好

酒呑童子 個体名【頼光】の討伐を特殊ルートでクリアした人に送られる

効果 鬼系の者への好感度が上昇する


称号 ジャイアントキリリング

自分よりレベルが50以上うえの相手に単独で勝利した者に送られる

効果 自分よりレベルが上の者へのダメージ増加、被ダメージ減少


武器 酒乱之刀

ダメージを与えた相手に状態異常【酔い】を与える

一閃 魔力を使った分ダメージが上がる斬擊を打つ

譲渡不可 破壊不可


 効果が凄いのばっかじゃん。特に酒乱之刀とか強そうだなぁ。


「おい、どうしたんだサキよ」


「あっ、ごめん。貰った武器とか称号の効果を見てた」


「おいおいワシに隙を見せないでくれ、思わず斬ってしまいそうになる」


「それは怖いなぁ」


「全然怖そうじゃないが?」


「まぁそりゃあ、師匠である祖父よりかは怖くなかったからね」


 おじいちゃんはだいぶ厳しかったなぁ……まあ、修行の時に限ってだけど。それ以外の時は普通の好々爺みたいな雰囲気だったし。


「そうなのか?ちなみにワシとそいつどっちの方が強い?」


「そうだね……今だと頼光の方が強いかな?私に教えてた時の全盛期が過ぎた祖父でも今の頼光より強かったから、全盛期で言うと多分頼光とは比べ物にならないぐらい強かったと思うよ」


「そうか、ワシもまだまだじゃのう」


「そろそろ、帰りませんか?」


「あ、リリルカさん」


 リリルカさん居たんだ、忘れてたぁ。


「サキさん、今絶対『居たんだ』とか思ったでしょ!」


「何のことでしょぉ?」


 ヒューヒュー……誤魔化したいことがあったら口笛を吹けば万事解決だっておじいちゃんが言ってた!!


「全然口笛吹けてないですからね!そもそも口笛じゃあ誤魔化されませんから!!」


「そんな事より早く帰りましょ、妹さんが待ってますよ」


 私はリリルカさんの言っていることが聞こえない振りをして、洞窟の外へと小走り気味で向かった。


「そんなことって、あっ!待ってくださーい」


 その後ろを追ってリリルカも小走りで洞窟の外へと向かった。




「騒がしいやつらじゃなぁ。でもそういう所も面白いから、これからが楽しそうだ」


 頼光は修行時以外のサキの祖父のように好々爺のような表情をして二人の後ろ姿を見ていた。


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