(続き3)

私がテーブルの席に着こうとした時、奥から彼がコップを両手に持ってやってきた

「申し訳ない、来客用の紅茶を切らしていたよ。」

彼から差し出されたのは緑茶だった

ともに置かれた皿の中には何の変哲もないビスケット。成程、本当に紅茶を用意するつもりで準備していたらしい


彼はしゃべりながら静かに椅子を引き、席に着いた

私も席に着いた


姿勢を正し、背筋を張った彼は

「汗でびしょびしょだったよ、今は夏だから気を付けて出かけないと熱中症で死んでしまうよ、君はどこから来たんだい?」

特に否定するような、落胆するような声色ではなく、とてもやさしく、聞く人を包み込むような声の音色で彼は訊ねてきた


「…日遠路から」

「日遠路?」

「えぇ、日遠路から来ました」

「そう…ですか」


彼は私の発言に不思議そうにそう答えた

顔にも行動にも出ていないがその口ぶりは明らかに首をかしげる姿が思い浮かんだ

「日遠路はここだけど、日遠路のどこから来たんだい?」

「え〜っと、北区東町3丁目です」

「…日遠路北区は随分前に財政的に中央区に合併されたけど…、そこのことを言っているのかな?」

「…?」

ポーカーフェイスと動揺の沈黙が流れた

…後にそれを断ち切ったのは彼だった

「そうだ、もし君がこの町が気になるのなら一緒に買い物に行こう。ちょうど紅茶も茶菓子も切れていたからね」

続けて彼は

「あぁ名乗るのを忘れていたよ、私の名前は”青木徹"、君の名前は?」

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