第29話

 ダンジョンから脱出した後は大変だった。


 ダンジョン暴走に気付いたダンジョンの警備員の方が関係各所に連絡していたのと、『混沌の光』の方々がダンジョン暴走に巻き込まれた動画がネット上で拡散された後にネット民によって場所が特定されたらしく、それを見に来た野次馬の人も集まりかなりの人数がダンジョン前にいたからだ。


 具体的には出るや否や事情を訊かれたり、写真を撮られたりして取り囲まれて大変だった。最早何かの事件の容疑者の気分を味わわされた。別に悪いことはしていないのに。


 それと僕が助けた『混沌の光』の方々からはお礼を言われた上、後日何らかの形で恩返し?を申し出られた。別にいらないので丁重にお断りした。……その際、何でもすると言われていたので正直なところ、それならダンジョン病の妹を治してほしいと言いたかった。不可能なことだけど。


 兎に角、そんなこんなで寮に帰ったときにはもう夜遅くなっていて魔法を使い過ぎたわけでもないのに謎の疲労感を抱いていた。先輩も西野さんも僕に何か言いたそうにしていたが疲れていたので先輩、西野さんにおやすみを言ってとっとと解散をした。


 部屋に入りベッドに倒れ込んで惰眠を貪った。


 ……今日も部屋の前に気配ありと。眠いので放置だが。



 そして翌日、起床した僕は普段ほとんど使わないSNSを開いた。自分の今の立ち位置を確認するために。


 その結果、強すぎる回復術師として本名バレまでしていることが分かった。誰だよネットに書き込んだの……。別にいいけどさぁ……。


 その後、教室に出た僕は大変だった。


 教室に入った瞬間、クラスメイトに取り囲まれた。


「おい、上野!昨日のあれって本当にお前か?」

「なんであんなに強いの?」

「上野くんちょっと……、放課後屋上に来てくれない?」


 などなど……。


 この前まで、僕のことを無能だと馬鹿にしていたのに……。実は強かったってなった途端にこうなるの、手のひら返し早すぎだろ……。


 そのおかげで本名晒した人間に何だか腹が立ってきたので探査魔法でネット上に僕の名前を晒した犯人を見つけて天罰を下しておいた。クラスメイトの一人が突然教室の隅っこで急所を押さえるように呻いてうずくまった。犯人、名前も分からないクラスメイトかよ……。


 ただあまりの付き纏われ方に呆れや苛立ちより鬱陶しさを抱き始めたので人避けの魔法を使い、僕の周りに寄ってきていたクラスメイトを強制的に追い払った。


 授業を担当する教師からも変な目で見られた。ただ、特に何かいうわけでもなく放課後学園長室に行くようにと言われただけだった。



 放課後、学園長に行き、九条の父親と話をした。とはいっても昨日のあの動画を見せられて僕かどうかの確認をされたのと、その質問に僕がYesと答えたため、今まで実力を隠していたのかと尋ねられたぐらいだが。


 最後の質問は少し悩んだが、ダンジョンに九条によって置き去りにされたときに能力が開花したということにしておいた。


 開花した後、何でその事実を隠していたのか尋ねられる可能性を拾いに、自ら墓穴を掘りに行きかけたが特にそこについてはツッコまれなかった。まぁ、尋ねられたところで思考誘導やら記憶消去メモリークリアで誤魔化せていたのでセーフだと思う。



 その後、先輩たちと合流してダンジョンに潜ったが今までとは違い、積極的に僕にも戦闘を任せてくるようになった。今までは僕が無能なことを踏まえてやっぱり気を使ってくれていたということを再認識した。特に実力を隠す必要もなかったので斬撃を飛ばしてモンスターをどんどん斬り殺していった。


「これ私たちいるの……?」


 そう先輩にボヤかれた瞬間、少し自重することを決めた。


 ちなみに外を歩くだけで野次馬が寄ってくるので常時人避けの魔法を使わされることになった。生きにくい世の中。



 ——一方、その同刻、学園長室。


 そこには三人の男と学園長が対面して座っていた。


 上野天がいなくなり、少し経ったところでこの三人は入ってきた。


 しばらく和やかに雑談をしていたがある話題になったところで突然三人の男は真剣な表情になった。


「九条さん。上野くんって子に会わせてもらってもいいですか?」

「……別にいいが、理由を訊いてもいいかい?」

「……彼を僕たちのパーティーに招待したいからですね」

「……!彼はそれほどなのか?……君たちに必要とされるくらい」

「ええ。昨日の動画を拝見させていただきましたが、彼は本物です」


 その迷いのない即答に学園長は少し目を見開かせたが、すぐに元の穏やかな様子に戻った。


「そうか……ただ君たちのパーティーに上野くんを入れる必要はないんじゃないかい?君たちは今以上になって、一体何を目指していくんだい?」

「……それはトップシークレットというやつです。おそらく後々お知らせすることになるかと」


 今はダンジョンに出かけていていないからそれならばまた明日来てくれと言われた三人が出ていき静まりかえった部屋で学園長は窓の外の空、もう輝き始めている二つの星を見つめた。


「雄志郎、結良さん、君たちの息子は君たちの血をしっかり引き継いでいたみたいだよ……。子どもは親よりも強くなるというがどこまで大きくなるんだろうね……」


 上野天はまだ知らない。人知れずとある計画が裏で進んでいることを。そして、あのダンジョン配信をキッカケとしてその渦中に巻き込まれ、彼自身の人生が大きく変えられることも。




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中間考査やっと終わりました……。更新頑張っていきます……。疲れているので今日はもうこれくらいの文字数で許してください……。(日本語おかしい部分は後日訂正するので……)

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