第28話

「あの、それって僕のこと撮ってます?」

「ええ、一応配信中なので……」

 

 ……配信中?配信ってあの配信?あのネットとかにばら撒くやつ。


「えっ、まだ繋がってたのか?衝撃で壊れたと思ってたのに」


「というかあなたたちって『混沌の光』の皆さんですか?」


 その厨二病的な名前は一体何ですか、有原先輩?僕がそう尋ねる前に井上先輩により答えが明かされる。


「えっ、あのダンジョン配信者の?」


 ——ダンジョン配信者、それはダンジョンを探索している様子をネットに同時公開し、得た再生回数とダンジョンで取得した魔石の代金を収入として暮らす人々のことだ。


 僕の両親の職業もこれだった。


 いやいや、というよりそんな風に冷静になっている場合じゃない。今までの僕の戦いとかもまさか全世界にばら撒かれてたのか……?いやいや、流石にそれはないかと首を振りながらも悪寒が僕を襲う。


 お陰様で全員無事ですなどと呑気にカメラの先にいるのだろう視聴者に向けて話し始めた女性を横目に、僕は背負っていたカバンからスマホを取り出し『混沌の光』と検索をかけ、一番上に出てきた某有名動画サイトをクリックする。


 最初に登録者八十万人という数字がまず目に飛び込んでくる。ああ……。


 嫌な予感がするが、それを振り切るためにも現在配信中と出ている動画を押す。頼むから写ってないでくれ……。


 ただ、現実は僕にお情けなどかけてくれなかった。同接人数は二十万人。


 過去の部分に遡ってみると……、見事に僕が黒竜を倒している部分が写っていた。


 顔は勿論、突然僕が現れて一瞬で黒竜の首を斬り落とした上、えっ、弱っと溢してしまった部分も部屋全体に回復魔法を使ったところも全部。


 チラッと覗いてみたがコメント欄は凄いことになっていた。


“なんだ!?こいつ化け物かwww”

“魔力使えないのにこの動きかよwwwふざけてるだろwww”

“これは謎の実力者として切り抜き確定ですわw”

“悲報:この謎の男、回復術師の模様”


 など……。


 画角は撮影者である男性が気絶していたため、地面からだったので少しはマシだったのかもしれないが……。お願いだから、もっといい倒れ方してくれよ……。普通、そんな都合良く戦闘シーンが見えるようにカメラ落とすか?最早この道のプロの犯行だろ……。


 流石にネット上に上がったものは記憶消去メモリークリアでは消せないんだよな……。記憶を消したとしてもネット上にこの動画がある限り、記憶は復活し続ける。これでは永遠のイタチごっこだ。


 いや、僕の魔力が持たないか。体力差で見事に敗北だ。


 ああ、どうしよう……。終わった……と僕はしばらくその場でうずくまって考え込んでいたが、突然天からそもそもの原点を覆す問いが降ってきた。


 別にもう能力を隠す必要なくないか?


 能力を隠していた主な理由だった九条を絶望に堕とすという目標は達成している。それならば、隠す必要はないのでは?


 いや、というよりない。絶対にない。


 考えるのも面倒くさくなった僕は投げ槍にそう割り切り、一通り話し終わったらしい『混沌の光』の方とともにボスを倒した後に現れた帰還用の魔法陣に乗りダンジョンを脱出した……。




———————————————


矛盾はないはず……。

今週水曜日から中間考査が始まるので文字数少なめです。考査中の更新はまぁ……、悪しからず。

おそらく次の話から世界が揺れて妹さん救出が見えてくるかも……?(小説の中)

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