あかりとデート

とある日の放課後、私は珍しく一人で下校していた。

玲央様は、先生呼ばれているらしく、私だけ先に帰ってと言われてしまったのだ。

なので今日は、寄り道していこうと街へとやってきた。

「あっ!あの服可愛い……!あっちの雑貨屋さんもいい感じだし……あ!でもこっちのお店も気になるかも……!」

色々なお店を周りながら、買い物を楽しんだ。

みんなと一緒に来れたらもっと楽しいんだろうなって思いながら。

「ん?あれって……」

ある店の前を通りかかると、そこにはよく知っている人物がいた。

「あかり……?」

「え?百?月城さんはどうしたの?」

「ん~なんか、先生に呼ばれて先帰っててって。あかりは?一人なんて珍しいね」

「うん、なんか奏用事があるとかで先帰っちゃって…」

「そっか~…そうだ!だったら一緒にお店まわらない?私あかりと遊びたかったし」

「いいの!?えへへ、じゃあお言葉に甘えて……」

私たちは二人で色々と見て回った。

あかりは楽しそうにしていて、私も嬉しかった。

しばらく歩いていると、あかりは立ち止まった。

そこはアクセサリーショップで、中には女の子たちが沢山居た。

「あ、これかわいい……!」

「どれ?あぁ、あかりに似合いそう…こっちはどうかな?こういうの好きだったでしょ?」

そう言ってあかりに渡したのはピンクゴールドの小さな花のネックレス。

その花の中心にはキラキラと輝く宝石が付いている。

あかりはそれをじっと見つめていた。

「うーん……確かに可愛くて好きだし、欲しいんだけど……やっぱりいいや」

「え?なんで?」

「だって、これを付けていく場所ないし……」

「……だったら、私が買ってあげるよ?」

「え?でも悪いよそんな……」

私は店員さんのところに行き、それを購入した。

そして、そのままあかりの元へ戻り、彼女の首元に手を伸ばす。

あかりの首元の髪を退けると、そこにネックレスを付けた。

そして、鏡を彼女に手渡す。

すると、彼女は目を輝かせて笑顔になった。

あかりには、その顔が一番似合うと思う。

本当に可愛い……

あかりは私に向かってお礼を言ってきた。

気にしないで、と言うように首を横に振った。

あかりはその後、私の方に視線を向けた。

「私も実は……」

そう言ってあかりが取り出したのは、小さな青い石の付いた指輪だった。

それを左手の小指にはめる。

それはまるで、結婚している証のようにも見えた。

「あかり……いいの?これ……」

「うんっ!いつものお礼と、それから……今日のデートの記念、貰ってくれるかな?」

「もちろん……!!ずっと、大切にするから!」

「よかったぁ……ね、百?」

「ん?なぁに?」

「百に言いたいことがあるんだけど聞いてくれる?」

真剣な眼差しで私を見てくる彼女。

一体何を言うつもりだろう。

私は息を飲み込み、静かに耳を傾けた。

すると、彼女は口を開いた。

「私、やっぱり百が好き、婚約者がいることも、その人に好意を寄せているのも

分かってる…けど、やっぱり好き、抑えられない」

そう言った彼女の目からは涙が流れていた。

そして、ゆっくりとこちらへと近づいてくる。

そして、私の頬に触れると優しくキスをした。

柔らかい唇が触れて、心臓がドクンと脈打つ。

「あ…かり……」

「返事は聞かない…ううん、聞けない。でも、これだけは言いたくて」

そう言って、彼女は微笑んだ。

だけど、どこか寂しげにも見える。

「あかり、聞いて欲しい言事があるんだけど聞いてくれる?」

「……………うん」

「私も、あかりが好き……恋愛って意味で。でも、玲央様の事も恋愛として好きで……おかしな事言ってるって言うのは分かってる。でも、私にはまだ、選べない……最低な子でごめんなさい…」

そう言うと、あかりは少し悲しそうな顔をして笑った。

だけど、すぐにいつも通りの表情に戻り、今度は自分から私に抱きついてきた。

私もそれに応えるようにして抱きしめ返す。

「ううん、今はそれが聞けただけで嬉しい……ありがとう」

「あかり……好きだよ……」

「私も好き……ねぇ、また今度こうやってデートしてくれる?」

「もちろん……!」

「やったぁ!じゃあ、帰ろうか?」

「そうだね」

そう言って二人で笑いあって

歩き出す。

この気持ちがいつか変わる時が来るのかは分からないけれど、それでも私はこの選択を選んだことを後悔はしていない。

だって、私はあかりの事が大好きだから……

「あ、忘れてた」

「どうしたの?」

「あかりに聞きたいことがあって……今思い出した」

「百ってホントタイミング悪いよね~ふふ」

くすくすとからか様にあかりは笑った。それにつられて私も笑う。

さっきまであんなに悲しい空気だったのに、もう大丈夫みたいだ。

「もぉ~それで聞きたいことなんだけど外じゃちょっと話しにくいから

今から家に来ない?」

「百の家に?行きたいっ!」

そうして私たちは家へと向かった。

帰り道、あかりはずっと楽しそうでこっちまで嬉しくなる。きっと、私も同じだと思う。

家に着くと、あかりはすぐにソファに座って寛ぎ始めた。

その姿がなんだか猫っぽくて可愛らしい。

飲み物を用意してあかりの隣に座ると、早速本題に入ることにした。

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