新たな疑問

図書室に着くと私は目当ての本を探した。

家の図書室でもあんなに本があったんだ、学園ならきっともっとあるはず…

「百は何の本を探しに来たの?」

「えっと、魔法の本を少し」

「魔法の?魔法なら百の家の方があるんじゃないの?」

「そんな事ないですよ、、やっぱり学園の方が種類も多いし、それに」

「それに?」

「玲央様と一緒に居られる時間が増えるので……」

「っ……そう、だね……俺も百と一緒に居るの好きだし、嬉しいよ」

「えへへ……私も玲央様と一緒の時間が好きです……!」

玲央様の言葉に、思わず頬が緩んでしまう。

好きな人と同じ時間を過ごせるのはとても幸せなことだなと思う。

好きな人と同じ時間を過ごせるのはとても幸せなことだなと思う。

「あ、あった……!」

目的の本を見つけて、手に取ると玲央様の元へと戻る。

玲央様は、何やら難しそうな分厚い本を眺めていた。

その表情は真剣で、邪魔をしない方が良いと思い静かに玲央様の隣に座った。

本棚から持ってきた本のページをペラペラとめくる。

やっぱり……この本にも、治癒魔法は普通の人には使えないと記されていた。

けれど、その本にはこう記されていた。

『治癒魔法は聖女だけに使える術だが、ある条件を持つ人間が二人揃う時

力は発動される』

ある条件を持つ人間……それって一体…

もしかして、異世界から来た私とあかりとか……?

いや、そんな簡単な事では無いか。

はぁ……とため息を付いて本を閉じた。

「あれ?その本ダメだった?」

「いいえ、すごく参考になりました…でも、やっぱり私には出来ないみたいです……」

私は苦笑しながらそう答えた。

玲央様は、私の頭を優しく撫でてくれた。

「あんまり無理はしないでね?」

「玲央様…はい…」

優しい言葉をかけてくれて思わず泣きそうになってしまった。

そう言えば、お兄様にも似たようなことを言われたことがあったっけ…

本当に優しい人たち…この人達を悲しませるなんて事したくない。

そうだ、今度あかりにも魔法について聞いてみよう、何かヒントがあるかもしれない

「そう言えば、玲央様は何を読んでいたのですか?」

「俺?俺はねぇ…これ」

そう言って見せられた難しそうな本の表紙には、魔族の歴史と書かれていた。

これは確か、授業で習ったことがあるような……

魔族は昔は人間と対立していて、今はもう人間と共存しているって……

でも、どうして急にこんな事を……

私が不思議に思っていると、玲央様は微笑んでいた。

そして、私の顔を見て言った。

「もし、俺が魔族だって言ったら百はどうする?」

「玲央様がですか…?そう言われたらびっくりはしますけど、何も変わりませんよ、玲央様は玲央様ですから」

「ふふ、百はそういう子だもんね」

「えっ!?じゃあ玲央様は…」

「え?人間だよ?もしそうだって言ったら百どんな反応するかな~って」

「もぉ~玲央様!からかうのはやめてください!」

「はは、ごめんごめん」

玲央様はそう言って笑う。

全く……玲央様はいつも意地悪だ。

だけど、玲央様が言う通りもしも彼が魔族の血を引いているとしたら……

ううん、玲央様は玲央様だもん…何も変わらない、私の大切な人。

だから、大丈夫……

「さて、そろそろ帰ろうか?」

「そうですね・……あまり遅くなるとお兄様が心配するので」

私は本を片付けて、図書室を出た。

この世界のこと、魔法の事、そして……魔族の事。

まだまだ分からないことだらけだけど…

いつか、分かるといいな。

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