ニ.物語の佇まい

 「物語の佇まい」――小説を書く上で、一番大切にしている言葉です。


 児童文学作家の上橋菜穂子さんという方がいらっしゃるんですけど、その方がファンブックかどこかで書かれていたのが、この「物語の佇まい」という言葉です。

 どういう意味かというと、要するにストーリーを創っていざ文章として落とし込む上での情報の取捨選択ということになると思います。

 ……思いますって、なんでそんな曖昧な言い方なのかというと、この言葉を自分はかなり感覚で捉えてますし、上橋さんも詳しく解説していたわけではない(と記憶している)ので。

 いやしかし、これを「物語の佇まい」という表現をしてしまう上橋さんのセンスが凄すぎます。どうやったらそんな表現が浮かぶんでしょうね。


 とにかく、自分はこの言葉を常に意識して「うみコト!」を書いています。この上橋さんの言葉を知らなかったらまともに小説を書けてなかったというくらい、自分にとっては重要な言葉です。小説の書き方的な本も何冊か読みましたし、それはそれで参考になったのですが、それでも「物語の佇まい」を知らなかったらそれらの知識も生かせなかった気がしますね。


 ところで「ヴィンランド・サガ」というヴァイキングを題材にした漫画があるのですが、「物語の佇まい」の面で非常に唸らされたシーンがありまして(未読の方、ごめんなさい)。


 奴隷編でレイフとトルフィンが農場で二度目の再会をするんですけど、その再会シーンを完全に飛ばしてるんです。全く描いてません。これ、初めて読んだ時に本当にすごいなと思いました。読者は見たいに決まってるし、作者さんの頭の中にもふたりの再会シーンはしっかりあったかもしれません。それでも「物語の佇まい」を損なわないために、あえて描かなかったのだと思います。


 ちなみに、この「ヴィンランド・サガ」の作者さんも上橋さんの作品を読まれているとのことです。さもありなん。

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