第36話 覚醒その1
俺がミーシャの見てきた映像をベースに船橋さんの悪行を語っていたら、先生よりも前にいつも聞いてくれてる花山からクレームが来る。
「桐島ぁぁ……ちと、話が重いって……」
「あ……いやさ、この先俺が覚醒するから大事な話なんだよ。もうちょっとオブラートに包んだ方が良かったかな?」
そりゃそうだよな……レイプにNTRなんて、いくら画像とか、動画がなくても問題あるよな。
そう思っていたら……
「問題ない! 行け」
「あ、うん……」
花山たち男子の目の色が変わり、キモいくらいにキラキラしてる。
“覚醒”
健全な厨二病男子ならば、このキーワードに反応しない奴はいないだろう。少なくとも俺はあのとき、確実に強くなったことを自覚した。それと同時に初めてデリートを使ったのだ。
男子たちが腐女子受けするような目で俺をみるので金子さんも目をキラキラさせてた。学園祭のときは一応、オブラートに包むようにはした方がいいかも。
俺の異世界語りを聞いていた担任の薄井先生がひとしきり、頷いていた。はっきり言って、俺はこの担任を苦手としていた。
「いや~、先生参っちゃったな。桐島くんがこんなに面白い話ができるだなんて思ってもみなかったから」
うっ、う~ん……
担任の手のひら返しが凄い。いや、何かされたっていうわけじゃない。むしろ、何もされなかった。はっきり言って、俺は薄井先生にとって『いないもの』扱いと言って良かったのかもしれない。
たしかに一時的とはいえ、本当にこの世界から『いないもの』にはなっていたんだけど……
まあ、今となってはどうでもいい。
手のひら返しこそあったものの、話の面白さは認めてくれているみたい。
「私は桐島くんの出し物で異論ないから、学級委員の方で決を取って」
「分かりました。では、多数決を取ります。賛成の方は挙手を!」
学級委員の中野くんにより、多数決が取られたのだが、全会一致で俺の異世界語りに決まってしまった……だが、これには裏がある。
花山たちの無言の圧力によって無理やり賛成に回るよう、挙手しなかった級友をずっと
クラスのみんなが俺の異世界語りに好意を抱いていないのは知ってる。特にデブだった俺が人気者になってしまったのだから、余計に嫉妬ってものを買ってしまってるに違いない。
そんな俺の心配をよそに花山を無茶をした理由を告げる。
「やる気の問題なんだよ。その方が桐島が気持ちよく取り組めるって、俺はそう思ったな」
花山は聞きに来てくれてる常連の級友たちに「おまえらも、そう思うだろー?」と訊ねると一斉に「そうだ! そうだ!」と声が返ってきて、俺は花山たちの気遣いに目頭が熱くなってしまってた。
馬鹿だが、こいつが友だち思いだったなんて、知りもしなかった。いや、知ろうともしなかったのだ。
「なんた? 桐島、おまえ泣いてんのか!? うわっ、恥っず!」
「泣いてねーよ! 花山の気持ちがうれしかっただけだ」
「素直じゃねーな」
実は俺自身は手を挙げないでおこうかと思ってた。自薦って、なんか苦手だったから。自意識過剰な奴がやるものだって……
だけど、同調圧力という物に負けた。
ただ、クラス一丸となって、出し物をするっていうのは、たまには同調圧力も悪くないと思った。
「お互い様だろ?」
「まぁな!」
ニヒヒッと口角を広げて、イケメンがうれしそうに笑う。俺も釣られて、ガッと肩を組んで笑ってた。まさか俺が花山と肩を組む日がくるなんてな。
* * *
――――コンウェル周辺。
とぼとぼと荷馬車に
「イナンナならこんな無駄なことしなくて良いのじゃ」
「はぁ、本当リリスはおこちゃまだな。そんなことすりゃ、おまえがすぐに魔族ってことがバレちまうって」
うぬ~って頬を膨らませて、怒ってる。街の人達もロリのかわいさに騙されて愛玩動物のように扱ってくれているが、正体が分かった途端につるし上げられかねないんだから。
しかし、そんなことより気になることがある。
―――――――――――――――――――――――
【
―――――――――――――――――――――――
って、ガーゴイル戦での成果なのか、街でいろいろしてる間にステータスの通知が着てた。だけど、この異世界はとにかく不親切。この【固有スキル】は果たして強いんだろうか、そんな疑問が常に湧いてくる。
何度も鉈で切り落としてると、やっぱり刃こぼれしてしまって、水汲みに出る前に被災してしまった研ぎ師に超特急で仕上げてもらった。
切れなくなった刃で手足をちょん切ろうものなら、スパッと両断できなくて、激痛が走るんだよな……処刑されるなら、上手い首切り役人にお願いしたい。
なんて、馬鹿のことを考えていたら……
「あれっ!? リリスの奴がいない!?」
あいつ、どこ行きやがったんだ!
「お花を摘みに、って行ったきり戻ってきていないな」
白樺さんにだけ告げて、手洗いに行ってたのか……だけど、ゆっくりと小川まで進む荷馬車のあとをついてきていたのに、戻ってきていないらしい。
リリスの足でも十分追いつけるはずなのに、どこに水を汲みに行って、油を売りに行く馬鹿がいるんだ。一旦、馬車を木陰に隠し、白樺さんと見合わすと答えは一つ。
「二人で手分けして探そう。その方が早い。見つけたら、笛で知らせるんだ」
「はいっ!」
俺たちはリリスがお花摘みすると言った場所まで戻り、そこから捜索することにした。どうせ、あいつのことだ、蝶々でも見つけて追いかけてるんだろうよ。
ガサゴソと道外れて林の中を抜けると広い場所を見つけると、ちょうどキャンプ場のようになっていた。XXなら、「BBQしたいね」なんて言い出しそうな雰囲気の良い場所。
だけど、その周辺にいる奴らはどう考えても雰囲気は悪そう。
って……なんだよ、あれ……
うわぁぁぁーーーっ!!!
「てめえみたいな魔族いるから、俺たちが苦労ばっかさせられるんだよ! このウジ虫がっ」
「魔族は死ねよ! 俺の家族はおまえらの眷属の魔物に殺されたんだ。俺がおまえを殺したって文句言ねえんだぞ。分かったか、このクソガキ!」
小さな身体で傭兵みたいなカッコしたおっさんどもから殴る蹴るの暴行を受けてる。なんでイナンナを喚ばねえんだ。そんな奴らすぐに片づけられるだろうによお!!!
「わ……妾は人間と……争いに……来たのじゃない……魔族の暴走を止めに……来て欲しい……のじゃ……」
「なにをわけの分かんねえことをくっちゃべってやがるっ! おまえなんかこうしてやるっ」
リリスに向かって、棍棒を振り上げたおっさんに俺は無我夢中で突進していた。
「ウオオオオォォォォーーーっ! 大の大人がなにガキんちょをいたぶってんだよぉぉっ!」
ドゴーーッ!
俺のタックルが効いて、吹っ飛ぶ棍棒のおっさん。
「大丈夫かっ!? リリス!」
「助けに……来るのが……遅いのじゃ……」
くっそ、顔も、手も、足も――――
肌が見えるところだけでも
(許せねえ、絶対、許せねえ!)
たとえ、魔族を憎んでるからって、無抵抗な幼女にやっていいことと悪いことがある! 転んだおっさんは腰をさすりながら仲間に引き起こされ、他の野郎どもは俺を十数人で取り囲んでいた。
「おまえらの血の色は何色ダァァァーー!!!」
リリスから流れる赤い血を見て、俺は叫んだ。そのとき、天幕の切れ目からのれんを潜るように船橋さんが出てくる。
「おーっと! クソザコの桐島くんじゃないか、一体どうしたって言うんだ? 俺らの縄張りに土足で踏みこんでくるなんてよぉ!」
「俺の仲間がなにか、あんたらにしたのかよ?」
「いや~、なんにもしてねえ。だが、そいつは魔族……ただ、ムカついただけだな」
俺を馬鹿にしたような口調でのらりくらりと質問に答えていく。俺は気を失いかけたリリスを片手で抱えながら、船橋やクズの集まりと対峙していた。
「なんで、なんでイナンナを召喚しなかったんだよ……」
「要が人間と喧嘩しないように……って言ったのじゃ……」
くそっ、こんなときだけ馬鹿素直になりやがって……
「俺はあんたに決闘を挑む。勝ったら、リリスは返してもらうからな!」
「はあ? 立場分かってるぅ~? 桐島くんは頭がおかしいんですかぁ~?」
ポケットに手を突っ込み、上半身をひねって下から俺を上目遣いで見てくる。いつの時代のヤンキーなんだよ、東京梵字アヴェンジャーズくらいでしかみたことねえ!
「クソザコに負けんのが、そんなに怖いのかよ。粗チン野郎が」
「おまえ……死んだぞ。とっとと表出ろや!」
表出ろや! って、ここ外じゃねえか……血が上ると冷静さにかけるのかもしれないな、船橋は。
「リリス、ちょっとここで待ってろ。あいつをぶっ倒して、帰って旨いものでも食おう」
「分かったのじゃ……負けてはダメ……なのじゃ……」
「ああ! 負けるつもりなんてさらさらねえよ」
リリスを抱いて木陰に休ませ、振り返……
「黒曜剣!」
あぶねっ!
アイナの家伝の剣技で俺の振り向きざまを狙って斬りつけくる。どうせ、卑怯な真似はしてくるだろうと予想してたんだが、その通りで芸がない。
上手く躱した……
はずだった。地面に転がる俺の左前腕。
「うぐっ、うぐっ……い、痛い、痛い……」
腕が千切れるなんて、最近の俺にとっては日常茶飯事。痛みにも多少は耐性がついてきてた。だが、内緒にしていたから、船橋は小躍りしていやらしく挑発してくる。
「おいおい、オープニングから腕ちょんぱ~っ! マジ、ザコ島くんでウケるぅ~!」
ほざいてろ、と心の中でうそぶいた。俺に止めを差しに来たときがチャンス。そのときはすぐにやってきた。
「ははははーーーっ!!! 本当におまえ、勇者なのかよ? ザコ過ぎねえか?」
俺のうずくまって傷口を押さえ痛がる演技に釣られて、のこのこ近づいてくる。もっとだ、もっと近づいて来い。
「せっかく勇者に成れたのに、勇気のないザコ勇者は冒険の書はここで終わりだーーっ!」
冒険の書? いつの時代だよ……
「いちいち古いんだよ! おっさんは黙ってろ!」
白樺さんと特訓した甲斐あって、斬撃を
「うわぁぁぁーーーっ!?」
目が潰れるんじゃないかってくらいの閃光が筒と船橋のわき腹の間から漏れたかと思ったら、奴が大きく大の字になって吹っ飛ぶ。王立魔導院特製の
「くそったれ、
船橋は地面に背中を叩きつけられたようで上半身を起こしながらも、なかなか立ち上がれない。部下たちが寄ってきて奴を起こそうとしているが、俺にやられたのが悔しいのか、「触るなっ!」と八つ当たりしてる。
俺はその間に千切れた腕を拾い上げた。
「そんな千切れた腕なんてどうするんだ? おまえは馬鹿なのか?」
負け惜しみなのか、傷口に取れた腕を合わせていると【結合しますか?】とステータス表示に出てきたので繋ぎ合わす。
「あ~、やっぱり元に戻ると安心するな」
「なんだとぉぉぉーーーっ!!!」
俺が千切れていた腕をグーパー、グーパーと繰り返しているのを見て、腰を抜かしていた。いや、まだ立ち上がってなかったか……
「もう、テンカウント経ってると思うけど、まだやる気ある?」
「格下の分際で舐めやがって!」
【幻肢痛】の副次効果で完全回復した俺は船橋と第二ラウンドを迎えようとしていた。
「スキル、全部使ってやる!
戦い方が白樺さんとアイナが戦ったときとそっくりになった。だが、俺の腕を切っても無駄だと思ってたのか、予想外の動きをしてきて……
「掴んだぞ! 最初からこうしてりゃ苦労なんてしなかったのによぉぉーーっ」
「刺されるっ!?」
俺の手首を掴み、引き込みながら腹にダガーを突き立てようとしてくる。そのときだった、
―――――――――――――――――――――――
【幻肢痛】(
使いますか?
はい ←
いいえ
―――――――――――――――――――――――
初めて見る表示、自切……
なんでもいい!
この窮地を脱せられるなら。
プチンッ!
「おっ、おわぁぁぁーーっ」
俺が引き込まれないように耐えていたこともあり、急に俺の手首が抜けたことで、引き込んでいた力が全部、自分に返ってきて十メートル以上下がってバランスを崩してゴロゴロと回りながら転んだ。
同時にポロリと落ちたものがあった。
「う、腕がああああっ!!!」
「ははっ、おめでとうがざいます。初めての腕ちょんぱ!」
離れ際に俺も左手で鉈を振るい、船橋の利き腕を切り落としていた。俺のは拾えば、元に戻るが……
「いっ、いっ、いでぇぇぇーーーっ、お、お、俺の腕がぁぁぁっ!」
俺はかなり痛み慣れしてるけど、痛いこともそうだが、腕が欠損したショックの方が実はデカいんだよな。
どうも自切はそれほど、痛くなくて助かった。俺が船橋が転んだときに手首を取り行って油断したときだった。
「動くなっ! こいつの命が惜しかったら、大人しく武器を捨てろ。早くしろぉぉぉーーっ!」
左手一本になってしまった船橋がリリスの首にダガーを当てて、人質に取っていた。
「やっぱりクズ橋だったのかよ……」
―――――――――あとがき――――――――――
作者、性懲りもなく冷やし中華みたいに新連載を始めました。
【ネトラレうれしい! 許婚のモラハラ幼馴染が寝取られたけど、間男の告白を蹴った美少女たちが、俺と幼馴染が別れた途端に恋心を露わにしてくるんだが。】
脳死しない笑えるNTRざまぁラブコメですので読んでいただけるとうれしいです!
表紙リンク↓
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