第35話 悪意

 リリスが語った瘴気しょうき


 たしか、中世に病気の原因がよく分からなかったときにウィルスなどの病原菌なんかをそう称していたとかだったような……


 井戸には投げ込まれたと思われるガーゴイルの亡骸がプカプカ浮いていた。気味の悪い色の液体が染み出していて、とても飲みたいとは思えなかった。だけど、渇ききったときはこんなのでも飲まなくちゃならない。


「なあ、リリス。このガーゴイルとか魔物はミーシャみたいに生まれた眷属なのか?」

「妾と接吻して生まれたミーシャは要の清浄な精気を吸い込んで出来た子。襲ってきた魔物は瘴気に穢れた魔族同士で生まれたものじゃ」


 俺とリリスの会話を聞いていた白樺さんが俺の耳元に手を当て、耳打ちした。


「桐島くん、奴隷とは言え、幼女に手を出すのはあまり良い行いとは言えないな……」


 うっ!?


 ジト目でもの凄く残念そうに見られてる!? リリスが接吻なんて言うもんだから、俺がロリコンみたいに思われてた。


「ちっ、違いますよっ! それにこいつはロリババアなんですよ。頭は幼女と大差ないですけど」

「妾に唇を奪われる無防備な要のくせに生意気なのじゃ!」


「分かった、分かった……二人は仲良しなんだな。良いことだ」

「「どこがっ!!」」

「ははっ、そういう息ぴったりなとこだよ」


 俺たちのやり取りを温かく見守るように笑う白樺さんだったが、誤解がある。少なくともリリスと俺は仲良しではない。仕方なく奴隷として雇ってやってるだけ。


 その割りに尊大過ぎるが……


「そういや、おまえはまったく瘴気の影響受けてなさそうだが……」

「妾は父上が逃がしてくれたのじゃ……だが、父上は蝕まれてしまった。優しい父上はもういない……」


 ポロポロと赤い瞳からこぼれ落ちる雫。


 くそ……泣き落としとか小悪魔か。こいつが半泣きになりそうになると頭を撫でて慰めたくなるのは何でなんだよ……


「泣くんじゃねえよ、面倒くせえ……」


 幼女姿の涙なんて、お人好しを簡単に籠絡してくる。両手を目に当て、ガキみてえにむせび泣くリリスを抱きしめながら、頭を撫でて慰めてた。


 だが、その瘴気を消し去る方法なんてあるのか? 


 それができない限り、リリスの父親である魔王なんて救えないぞ。


「なあ、その瘴気って奴をなんとかする方法はないのかよ?」

「考えられるのは元を断つこと。じゃが、それはかなり難しい」


 クリムっていう聞くにたえないクソ勇者を封印したら、そっからゴボゴボあふれてきたらしい。対策しようと出向いた魔族が次々とおかしくなって、人間だけでなく魔族すら襲うようになったと。


「なるほどな。とりあえず、そのクリムって野郎をなんとかすりゃいいんだろ?」

「おそららくな。ちなみにクリムは野郎ではない、女じゃ。妾も母上から聞いただけじゃがのう」

「ふ~ん」


 女クソ勇者……どんな奴なんだろうな。


「てか、俺たち以外に勇者なんて召喚したのか?」

「クリムは召喚された者ではない。生まれながらの勇者だったのじゃ、母上の国のな」


 とりあえず、リリスの母親の母国、アソタロソ皇国に行かないとならないのかもな。俺たちがリリスの話に耳を傾けていると……


「勇者さまっ! たいへんです、川に水汲みに行った者たちがまだ戻ってきておりません! どうか彼らの捜索にお力添えを願えないでしょうか?」

「もちろんだ、桐島くん。行こう!」

「はい!」


 俺はただ水を汲み行っただけであんなことになろうだなんて思ってもみなかった。



 * * *



――――コンウェル外の荒野。


 あー、くそ! 最悪だ!


 街から追い出されて、むさい野郎どもとキャンプする羽目になるなんてなぁ! 桐島、白樺、柏木……今度会ったら、ってやる。


 特に柏木の奴は許さねえ! テレビに出てるってだけでちやほやされて、調子こいてやがるからな。ああいう女は犯して分からせてやんねえと。


「船橋さん、縞ヤモリが捕れました! 食べましょう」

「いらねえよ、おまえらで食え」

「旨いのに……」


 ユリエルから与えられた部下が小さなヤモリか、とかげか、知んねえけど、細い尻尾掴んで暴れる獲物を俺に見せてくる。


 ちっ、んなもん食えるかよ。


「あっ! 逃げんな、こらぁぁーーっ」


 ヤモリは尻尾切って、どっかいっちまった。たくっ、馬鹿か……まともな飯、持ってこい。早く元の世界に戻って、まともな飯が食いてえ。


 しかし……


 まさか山で登山やソロキャンに来てる女狙って、物色してたら、災害に巻きこまれちまって変なところに飛ばされてきちまうなんてな。あんなことがなければ、上玉のJDの腰つきを堪能できてたってのによ。


 テントの中で泣き叫ぶJDは最高だったーーっ!


 夕方に麓のキャンプ場を歩いてると人を避けるように一人で長い黒髪のいい女を見つける。


『あの~、お一人ですか?』

『あっ、はい……』

『ごめんなさい、やっぱり警戒しちゃいますよね~。実は俺、ソロキャンプ初めてで……なかなか上手くいかなくて、ご相談に来たんです』


 なんて、一人でテントの外で背もたれのついた折り畳み式チェアーにゆったり座りながら、コーヒーすすって悦に入ってる女に声をかける。


 ソロキャンが趣味の

 軽く世間話で和んできたところで……


『あ~っ、寒い寒い~っ』

『じゃあ、良かったら中で話しませんか?』

『ほんとですかぁ!? それは助かります』


 先にテントに入ったJDのピタッと尻に張りついたジーパン、むっちりした感じがたまんねえ……油断して俺に背を向けてる間にナイフとガムテをウエストポーチから取り出した。


 胸もなかなかもんだ。モンデルモ○ベルのシェルジャケットからでもしっかり膨らみを感じられるからなあ。後ろから手荒く、もみしだいてやりてえ!


『声出すなよ、大声でも出してみろ。こいつが綺麗な顔を切り裂いちまうぜ』

『ひっぃ!?』


 ナイフを頬に当てると恐怖で綺麗な顔を歪む。


 いいね~! その表情。


 泣きながら、俺に懇願するんだ。「酷いこと、しないで」って。だが、俺がそんな頼み利くわけがねえ。


 腰を突き上げ、何度も何度も飽きるまで。気がついたら、朝になっててイッて気絶したJDを殴って起こして、また犯す……ほんと大嶽山はバレずにやれる絶好のスポットだったのによう。



 そんな回想に耽ってると部下どもが天幕を訪れる。


「ヤモリはいらねえっつてんだろ!」

「ち、違います。そこの小川で人間を捕まえたんですよ」

「野郎ならいらねえぞ」

「へっへっへ、ちゃんと女もいますよ」


 それを早く言えよ。


「すぐ、連れてこい!」


 部下が女を引っ張って中に入ってくる。二人がかりで左右の肩と手首を掴まれ、俺の前に跪かされた女。


 震える女の顎に手をやり、クイッと引き上げまじまじ眺めてやると、俺から視線を逸らす。いいねえ、その表情……茶色い髪に青い目にそばかす、見た目はThe村娘って感じだが、まあ悪くはねえ。


「や、やめて、やめてください! 仮にも勇者さまがこんなこと、するなんて……」

「くっくっく、はっはっは! のこのこ川に水を汲みに来る方が悪いんだよ」


 まあ、一緒にいた男は……


「勇者さま、男はやっちまっていいですか?」

「おう、煮るなり焼くなり、勝手にしろ」

「あいさー!」

「勇者さまの許可が出たぞ! 食料がねえんだ。バラして食っちまおう」


「ひっ!?」


 部下どもは剣を突き上げ、男の手足を棒に縛りつけて薪の用意を始めている。人肉ねえ……あっちじゃ、色々悪いこともやったが、さすがにそれは食ったことがねえよ。


「あらら。あいつらああなったら、止まんねーぞ。どうする? おまえの心がけ次第で助けてやんねえこともねーんだがな……」

「本当ですか!?」

「ああ、勇者は嘘をつかないからな!」


 女は恐る恐る俺に乞うように訊ねてくる。


「一体、何を?」

「ちょっとよ、たまってんだわ。それに戦ったあとだから、猛って仕方がねえんだよ。なーに、命は取らねえから。ほんのちょっと俺たちの相手をしてくれよ。なあ?」


「エマ! そんな提案乗っちゃダメだ!」

「うるせえ! てめえは黙ってろ!」


 部下が縛られた男の腹をブーツでつま先で蹴り込むと、ごほっごほっと悶える。


「なあ? あいつっておまえの恋人?」

「……」

「正直に答えねえと……やれっ!」


 俺が部下にアイコンタクトすると、また蹴り込むモーションに入る。おうおう分かってるねえ、俺の部下どもは。


「待って! 待ってください! ヨハンは私の恋人ですから、だから彼だけは……」

「エマちゃんだっけ? キミは本当に偉いよ。まさに恋人の鏡だ。だからね、ヨハンくんに何をされたのかしっかり見せてあげよう」


「えっ!? いやっ! それだけは許してぇぇ!」


 部下どもが縛られた男を置いて、天幕から出て行く。


「ご苦労、あとで代わってやっから、待ってろよ」


 スキップしながら、出ていきやがった。どんだけ女日照りなんだよ、くくっ。俺がさっそく始めようと女の服を無理やり剥ぐと傍らで見ていた男が叫ぶ。


「止めろおぉぉーー!」

「あーうるさい、うるさい。あいつら猿ぐつわを忘れるなんて、馬鹿か!」


 その辺に転がってたロープを男の口に噛ませて縛る。う~ん、なんかテンション上がって来たわー!


 思いっきり、力づくで破くと小ぶりだが形のいい乳房が露わになった。さっと腕で隠し、天幕の端へと逃げようとする女。しかし、髪を掴んでそのままマットの上に引き倒す。


 そのあとは、まあなんだ、スカートを引きちぎり、パンティを脱がしたら、お約束通りに突っ込んだわけよ!


「いやーーーーーーーっ!!!」

「うーっ、うーっ、うーーーっ!!!」


 ヒャッハーーーッ、NTR最高ーーぅっ!


 涙目になった男に向かって、訊ねてやる。やっぱ、こういうのって、しっかりお気持ち訊いてやんねえとなあ。


「どうだ? 恋人の前で犯されるっつうのは?」


 何も答えずに泣き崩れるだけ。こうなると絶対にイカせるまで頑張っちゃうのが、俺のいいところ。



「はーっ、すっきりした!」


 結局、恋人の前でイキ顔晒して果てやがった。まあ、そんときの男の顔ったら、傑作だったね。


 やっぱ、娼婦と違って、生娘犯すのは最高だわ! クソみてえな世界かと思ったら、それなりには楽しめそうだな。


 朝まで楽しんだあと、部下どもに女を譲る。用済みになった男は、精力つけたい部下どもに……



【スタッフが美味しくいただいちゃいました】



 されたんだけどな!



 俺が疲れて寝てると……


「船橋さん! 変な奴がうろついてたんで、連れてきました!」

「ミーシャ! 逃げたらダメなのじゃ……」

「ほう、ロリか……」


 ロリコンの趣味はねえが、美少女ではあるな。こいつの悲鳴を聞くのも悪くねえな……くっくっくっ。


―――――――――あとがき――――――――――

新作書きました。


【勇者学院の没落令嬢を性欲処理メイドとして飼い、最期にざまぁされる悪役御曹司に俺は転生した。普通に接したら、彼女が毎日逆夜這いに来て困る……。】


https://kakuyomu.jp/works/16817330665423914887


石鹸枠の悪役に転生したラブコメです。寝取られで脳死してしまった読者さまを癒せるかと思います。よかったら見てくださ~い。

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