第12話 地獄の入口

(東館の306号室.....この部屋だわ。)


時間は分からないが、おそらく23時を回っているだろう。ノックの音が響いてしまうのを避けるため、部屋に着いた花菜は島田にメールを入れた。


花菜:お待たせしました!今主任の部屋の前に着きました!


島田からはすぐに返信が来た。


島田:空いてるから入って。


花菜はメールの通り、ドアノブを回して部屋に入った。


部屋の中の電気は消えていて薄暗かったが、女性4人の部屋とは違い洋室なのが分かった。


洋室の奥にはベッドがあり、ベッドの上には島田が横になっていた。


花菜は静かに声をかける。


「主任、薬持ってきましたよ.....テーブルの上に置いておきますね.....」


「ありがとう.....俺、熱あるかな?おでこに手、当てて見てくれない?」


「分かりました.....」


花菜は島田のおでこに手を当てて確かめてみた。


すると島田は突然、花菜の手を引くと強引に抱きついた。


「や.....やめて下さい!」


「来てくれて嬉しいよ....。ずっとこうしたかった....。」


「離して下さい.....!」


「花菜ちゃんさ、社員旅行にまできて俺の気を引くために一生懸命だったじゃん。」


「違います...!主任本当にやめて下さい!大声出しますよ!」


「大丈夫、全部分かってるから.....安心して。」


そう言うと島田は花菜に無理矢理キスをした。


「ん.....!!」


驚いた花菜は島田をドンっと突き飛ばした。


自分が花菜から拒否されるなど微塵も思っていなかった島田は、予想を裏切られて激怒した。


「なんなんだよ今さら!浴衣なんか着て誘っちゃってさあ!素直になれよ!」


島田は花菜をあらためてベッドに押し倒すと、強引に服を脱がした。


「いや!いや.....!」


花菜は渾身の力で抵抗する。


「うるさい!」


バチンッ!


島田は花菜の顔を引っ叩いた。


花菜は痛みよりも、顔を叩かれたショックで呆然となった。


島田の血走った目と、恐ろしい形相、顔の痛み、そして力の強さに花菜は恐怖し、徐々に

抵抗する気力を無くしていった。


(勘違いさせるような事した私が悪いんだ.....全部私が....)


抵抗することやめた花菜に、島田は


「やっと素直になったね。嬉しいでしょ?俺に抱かれて。いっぱい気持ちよくさせてあげるからね。」


島田はまともな前戯など無いままに、花菜を犯した。


(初めてってもっとロマンティックなものだと思ってた.....こんなに擦れて痛いんだ.....)


一方的な行為の後、しばらくして花菜は泣き出した。


「ごめん、初めてだったなんて....俺、花菜ちゃんの事、必ず大事にするから。一生大事にするから、泣かないで。」


(ああ、島田さん優しいな.....それよりゴムってつけてたっけ?まあ、いいかどうでも.....)


「明日から、よろしくね花菜ちゃん。これは2人の秘密だからね。人に話すと会社の迷惑になるからね。」


その日を境に、島田は花菜を家に頻繁に呼びだすようになり、その度に乱暴な性行為を繰り返した。


一度、島田からの呼び出しを断った事があったが、その時は徹底的に痛めつけられた。


痣と擦り傷だらけの花菜を抱きしめ


「ごめんね、痛かったね.....花菜が言うこと聞かないのが悪いんだよ?ちゃんと言うこと聞けば、優しく抱きしめてあげるんだから。」


島田は優しく介抱した。


これが地獄の日々の、ほんの入口だとは花菜はまだ知るよしも無かった。

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