第15話 監視カメラ

壮絶だった、浩哉の想像以上に。


ドメスティックバイオレンス.....よく聞く話しではあるが、大事な同僚や友達から聞かされた事は無い。


悲しみと怒りがこみ上げ、知らず知らず涙が溢れた。


「すみません、つまらない話を長々と.....なので男の人が苦手なんです。ご結婚されてる人となら安心して話せるんですけど。」


その後は


・役所や相談所にDVの報告はしない。

・会社には話さない。

・慰謝料300万を払うお金がないので、

代わりに毎月の家賃は支払う。

・子供の瑛人とは直接やりとりさせてほしい。


という島田からの提案があり、それを了承するとあっさり家を出ていったらしい。


「他にお付き合いしている女性がいたので、その人と一緒になったんだと思います。」


浩哉は思った、おそらく行政に連絡したり、会社に報告すれば社会的に島田は全てを失うだろうし、慰謝料300万を払わなくてはいけない。


月5万程度の家賃の支払いをするだけで、会社の地位なども失うことなく、さらに子供とも会える。


7年も経っていれば、DVの証拠なども無くなって、むしろ別れた後にしっかりと相手の家賃を払っているまともな人だと捉えられる可能性もある、島田にとって有利な条件だ。


(本当にこのままでいいのか?でもあまり根掘り葉掘り聞いて、嫌な思いをさせてもいけないし.....)


「それは大変だったね.....よく耐えたね。ほんと頑張ったね。」


「大丈夫です。でも、嘘だと思いますよね?この話しすると大体皆んな離れて行きますね。虚言癖があるとか言われたりもします。」


「確かにドラマみたいな話だけど、嘘だなんて思わないよ。花菜の気持ち、よく分かるしね。」


「チーフには分からないですよ.....。」


「離れていくどころか、離れたく無くなった!」


「そんな事言わないで下さい....本当は、チーフと離れるために話したんですから。」


「ちょっと待って、どう言う事?」


「私、これ以上チーフと仲良くなりたくないです。この話しを聞いたら、私の事嫌いになってくれると思って。」


「俺は花菜と、もっと仲良くなりたいと思ってるよ。」


「やっぱり結婚なさってるので、こうやって話しをする事でチーフの帰りが遅くなるのも迷惑だし。それに.....」


「それに?」


「もっと仲良くなった後で嫌われるより、早いうちに嫌わられた方が、傷が浅くてすむので。」


「全然迷惑じゃないし、そんな過去の事で花菜の事嫌いになんてならないから安心して。」


「.....それだけじゃないんです。今でも島田さんから監視されてるような気がするんです。私と子供が家に着いたタイミングで島田さんから子供に電話がかかってくる事が多いので。」


「どんな内容なの?」


「男の人が家に来たんじゃないか?とか、今日どこどこでママ見たよ、だとか。だからどこかで見てるのかと.....」


「監視カメラとか、盗聴器が仕掛けられてる可能性があるってこと?」


「そうですね.....そうであっても不思議じゃないです。島田さんならやりかねないと思います。」


(なるほど.....外で会わないのはそう言った理由もあったのか。盗聴器があるなら電話の内容も聞かれてそうだけど.....)


「いつも瑛人に連絡が来るのは土日が多かったんですけど、最近は平日の夜に電話がかかってくるようになって。」


「俺と電話で話すようになってからって事か.....」


「偶然だと思うんですけど。子供の電話が鳴るだけでビクッとします。」


(絶対おかしいだろ.....DVされただけじゃなくて、その後の人生を怯えながら過ごさなきゃいけないなんて.....盗聴器と監視カメラがない事が分かれば花菜も少しは安心できるのだろうか?)


「これからも、話そうよ。今まで通り。

誰にも話せなかった事話してくれたってことは、聞いて欲しかったんでしょ?」


「さっきチーフに嫌われたくて話したって言ったじゃないですか.....」


「そうだとしても、まだまだ話したくても話せない事お互いに色々あると思う。それに、昔似たような経験があるから、他の人よりは花菜の気持ちが理解できると思うから。」


「それ、さっきも言ってましたね。でもチーフは男ですから、怖い気持ちとか分からないと思いますよ?ちなみに、昔の似たような経験ってなんですか?」


「聞きたい?」


「はい、そこまで言ったら気になるじゃないですか.....」


「知ったら、嫌いになると思うよ。」


「嫌いになりません、大丈夫です!もしかして私の真似してます?」


「バレたか、花菜の話し聞いた後だと本当にで大した話しじゃないんだけど.....」


「大した話しじゃなければ尚更話して下さいよ。」


「分かった、少し長くなけるけど.....」


浩哉は幼少時代の出来事を話し始めた。

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