第19話 雪はいつか溶けて消えてしまう。
人は俺を全て持つ者と呼ぶ。生まれながらにして全てを手にした男と。金も、家柄も、人脈も、資産も、妻も、召使も。全て。
だから皆俺のことを羨み、嫉妬し、妬む。
ある人は俺に生まれてきたらと溢し、ある人は俺を不平等の象徴だと叫ぶ。
だが、本当の俺は何も持ってない。人格も、自由も、時間も、身体も、権利も、本当の友人も、本当に愛する女性も。
俺は道具として生まれてきた。親父の道具、家の道具、五十嵐グループの道具。家を継ぐために生まれて、家を継ぐために育てられる。友人や妻も知らない間にできていて。愛し合うことを強制される。
周囲の人間は皆、俺のことをおだてる。だけどちっともうれしくない。こいつらには俺が見えていない。
俺は普通の家に生まれたかった。
生まれながらに全てを持つ男なんて冗談だ。
俺は生まれながらに何も持っていない。
俺の持っているものは、全て親父のものであり、家のものであり、五十嵐グループのものだ。
俺は生まれながらに親父に全てを奪われた。
何も持っていない者。
生まれながらに失っている男だ。
俺は厭になって逃げだした。
親父の暴力から逃げ出したわけじゃない。
俺に持たさせられていた全てから逃げ出したかったんだ。
家を出た俺は何も持っていない。
残ったのは少しばかりの知識と無数の背中の傷だけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます