第18話 吹雪の前には雨が降る
「何かを得たければ、誰かから奪え。」
これは親父から最初に教わったことだ。
奪うことは権利だ。
強者の為に与えられた"権利"なのだと。
そう教わった。
弱者は弱者自身が悪いのであって、彼らに権利など何もない。何も許されていない。彼らは奪われる為だけに生まれてきたのだから。
強者は違う。生まれながらに奪う権利がある。むしろ奪うことは義務なのだ。彼らから何も奪わなければ、彼らに存在価値などないのだから。
私達強者は弱者に"奪うこと"で命を与えているのだ。
私達の行為は神にも等しい。
だから彼らは私達の行いに感謝するべきだと。
親父は俺に成功者の枷をつけた。
成功できない者は生きる価値がない。恥を晒して生きていくくらいなら死んだほうがマシだと。
成功のためには最高の環境がいる。物理的な環境だけではない。もっと大切な、"人間的な"環境。それは友人であって、妻であって、自分自身である。
全てが最高でなくてはならない。
全てが選ばれたものでなくてはならない。
俺は物心がついた時から親父が選んだ友人と過ごした。
親父が選んだ妻と夜を共にした。
だが、彼らは俺を見てくれなかった。彼らに見えているのは俺の背後にあるもの。それが大きすぎるが故に見えなかったんだろう。
それが俺にとって普通だった。
俺はこの世のすべての事が出来なければならなかった。
7時間の管理された睡眠と決められた食事の時間以外は、全てそれらの勉強と実践に費やされた。
学校には行ったことがない。親父が用意したそれぞれの分野の専門家が、家庭教師となって数時間ごとにやってくるから。
休憩など許されない。
失敗など許されない。
俺が何か失敗する度に、親父は俺の背中を叩いた。
何度も。何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
俺は厭になって逃げだした。
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