第8話 吹雪来る
「大丈夫ですか?」
生きてる。意識もあるけど、結構危ないみたい。
「みずと…なに…かたべ……れ」
なにか言ってる。
水?あとは食べ物かな?
とりあえずバッグに入ってた水とコッペパンをあげた。
「救急車を呼びますね。安静にしていてください。」
とりあえず救急車を呼ぼうとした。どうしていいかわかんなかったから。だって怖いもの。応急処置とかわかんないし。習ったけど忘れちゃった。そんなの、めったにつかわないじゃない。
「もう大丈夫だ…救急車は…呼ばなくていい。」
少年は立ち上がろうとした。明らかに大丈夫じゃなさそう。ふらふらしてるし。
「大丈夫じゃなさそうだけど…」
「大丈夫だ。放っておいてくれ…」
すごいにらまれちゃった。
コッペパン嫌いだったかな?でもむしゃむしゃ食べてたし、よっぽどおなかがすいてたのかな。
もしかしてお金がない?よく見たら服も汚いし、ちょっと匂う。長い間家に帰ってないみたい。
大人な雰囲気はあるけど、顔立ちとか背丈からして中学生くらいかな。
家出?
でも今の時代、家出少年なんかすぐ見つかって保護されるし、長い間外で暮らすなんて無理だと思う。炊き出しとか行ったら通報されるよね?今までどうやって過ごしてきたんだろう。ちょっと気になる。怖いけど。
「ごはん…買ってこようか。なにか事情があるんでしょ?」
勇気を出して言ってみた。少年はすごく驚いた顔をしてる。ちょっと涙ぐんでない?
「…いいのか?」
「もちろん。なにか食べたいものはある?」
「…腹にたまるもの。」
「ちょっとそこで待ってて。動いちゃだめだよー!」
私は近くのコンビニに走った。腹にたまるものって。なにそれ。
どんなのがいいかわかんなかったから、売ってあるいろんな種類のものを買ってみた。さすがにお菓子はいらないよね。
レジ袋いっぱいに食べ物とか飲み物を詰め込んで少年のところに帰った。
少年は遠くを眺めていた。さっきよりずっと優しそう。
彼の目はナイフみたいにとがっていたけど、それもどこかにいったみたい。
レジ袋を彼の隣に置いて、私もその隣に座った。
「なにがいいかよくわかんなかったから、いろいろ買ってきた。好きなもの食べていいよ。」
彼は少し漁るように袋の中身を見た後、しゃけのおにぎりを開けて、瞬く間にかじりついた。
「…うまい……」
少年はほぼ泣いたような顔でそう言った。
「よかった。」
悪い人じゃなさそう。
「私、日向っていうの。
「…
「幸仁くんね。苗字は?」
「……言えない。」
「そっか。」
変わった子。だけどやっぱり悪い子じゃない。
それから少しのあいだ彼と話したんだ。
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