第2話 雨空

たいして長く人生を送っているわけではないが、確実に言えることがある。普通ということは決して悪いことではないということだ。


この国に生まれれば、大抵のことは何でもできる。よほどの高級品でなければ、買うことができるし、その為の仕事も選ばなければ容易に見つかる。普通に暮らしていれば、死ぬこともない。


戦争や貧困が溢れているわけでもなく、命の危険が常に隣り合わせなわけでもない。何も困ることはない。物に溢れ、物に囲まれる平和な国だ。

サラリーマンは酒を飲みながら、健康診断の結果を気にする。

主婦は家計が苦しいと言いながら、ダイエットに勤しんでいる。何とも滑稽なことだ。


この国のどこでも見る。普通の風景だ。


歴史に名を遺すこともないし、とても華やかとは言えないが、世界的に見たらとても恵まれている。


そう、我々の国は実に恵まれている。それでも、生きている心地がしないのはなぜだろう。


僕の心はずっと雨に打たれている。傘を持ち合わせていないから、打たれ続けるしかない。

何か感じようにも雨音にかき消されて、何も聞こえない。

何かに触れようにも濡れた不快な感触が残るだけだ。


雨が降っている。ずっと。


ずっと。

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