青空のせいじゃない
Blue Jacket
第1話 雨雲
最後に青空を見上げたのはいつだろう。
いつに日からか空を見ることはなくなってしまった。ひたすら下を向いて歩いてきた。
何かきっかけがあったわけではない。ただある種の癖として。
転ばないように。唯、転ばないように。
これまでの人生、すべてが悪かったわけじゃない。もちろんいいところもたくさんあった。だが、取り立てて言うほどの出来事はない。
特に不幸があったわけでもない。映画のような悲劇があったわけでもない。言うなれば何も起きなかったこと自体が悲劇なのかもしれない。
今もそうだ。
テキトーに学校に行き、テキトーに授業を受け、テキトーに帰り、テキトーに寝る。
そんな生活。
友人もいないわけではないが、特別な人間は一人としていない。普通の人。
学校の先生も普通。稀に特別授業と称して謎の講師が来ることもある。だが、これも胡散臭い、偉そうな話を聞くだけ。どの人も先生たちの時代の有名人らしいが、過去の栄光に縋っているようにしか見えない。
そんな普通の人生。普通の生活。
昔は神童と担ぎ上げられたこともあったけど、それも昔の話。
「君たちには無限の可能性がある」
そんなことは綺麗事だ。何事も上手くいく人は最初から決まっている。天からの贈り物があるからだ。それを人は“才能”と呼ぶ。才能は成功への切符だ。いや、むしろ権利というほうが正しいだろう。成功する権利。強者でいる権利。それを持ち合わせていない者の事はもはや言うまでもない。
何事も権利には義務が伴うということが世の常であろう。
ならば強者の義務とは何だろう。
そんなことを考えた高1の夏。雨は降りやまない。
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