第20話 旅立ちへのカウントダウン(4)

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技能:《神託Lv-》《回復術(ヒール)Lv1》《祝福(ブレス)Lv1》《防御プロテゴLv2》《解毒デトクスLv3》《根術》《根術:スマッシュLv1》《隷属Lv-》


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 んー? なんだこれ?


 今日も暇つぶしにニィナの技能一覧を眺めていたら、見覚えのない技能が追加されていた。


 《隷属》……誰かに所有されてる状態を示す技能。


 つまり、ニィナは誰かの奴隷として所有されているということで……今、その主人から命令されればニィナは逆らうことができない。


 ……ニィナの周辺には警戒しておこう。


 そう思い、俺は再びニィナのところへと戻るのだった。



***



 というわけで、野盗退治に森に来ているわけなのだけど。


 昨日の努力のかいあって、森はとても静かなものだった。

 アジトに近づくたびに死体が増えて、先に進むカヴェルたちからは緊張が伝わってくる。


 一体誰が……と呟いたのは誰だったか。


 死体は見るも無残な焼死体だったり、上半身と下半身がねじられた死体だったりと、凄惨な光景に仲間の魔術士は顔色を悪くしている。


 明らかに異様な空気に誰もが感づき、警戒度が増していく。


 ……まったく、いったい誰がこんなことをしたんだろうね。

 なんてとぼけてみるけど、一人でふざけてるだけだからむなしい。





 そんなこんなで、野盗たちがアジトにしていた場所にまでやってきた。


「ちっ、ここも死体だけか……」


 カヴェルがそう愚痴をこぼすが、誰もそのことを気にしている余裕はなく……明らかに『危険な何かがこの場を荒らした』という事実に怯えている。


 かくいうニィナも緊張しており、周囲を探るために目が落ち着いていない。

 俺はニィナに落ち着いてと声をかけるも、あまり届いてはおらず、原因どころか犯人なのでちょっとだけ蚊帳の外。


 まあ、もともと存在自体があやふやだから別にいいんだけどね? 正直、現実味がないし、一人称視点のゲームでもやっている気分。


 だけど……普段は構ってくれるニィナにすら無視されるとなると、心に来る。


 境遇も心のうちも分かるからこそ、唯一身近に感じられる存在。

 この子以外はすべて仮想のもので、すべてこの子のために用意された舞台装置なのではないかと感じることがある。


 ……考えすぎか。ニィナに構ってもらえなくて落ち込んだせいでへんなことを考えてしまった。



 そんな呑気に考えごとをしてないで集中しようと意識を切り替えると、カヴェルが何かに気づいたように前方を睨みつけていることに気づく。


「――っ!! 伏せろっ!!」

「っ!」


 咄嗟の叫び声にニィナは奴隷時代のことを思い出し、その場にうずくまる。


 それが幸いしたのか……頭上に走る炎の波から流れることができた。


「……おや、外してしまいましたか」

「ちっ、何をしておる魔術士! きちんと仕留めんか!!」

「無茶言わないでください。ワタクシ、しがない魔術士ですゆえ……正面戦闘は苦手なのですよ」

「使えんやつめ……」


 前方から近づいてくるのは、黒いローブに金の装飾をほどこした頬が痩せかけた気味の悪い男と、でっぷりと太ったとても偉そうな中年のおっさん。


 太ったおっさんはカヴェルたち討伐隊を見渡し……ニィナの姿を見つけると、もの凄く恨みのこもった視線を向けてくる。


「いきなり何しやがる! 巻き込まれるところだったぞ!」

「黙れ薄汚い冒険者め。私を誰だと思っている」

「はっ、知らねえな! 少なくともいきなり人を焼こうとする奴は俺の知り合いにはいねえ!」


 カヴェルはちらりと仲間の無事を確かめると、いきなり現れた二人組に突っかかった。


「ふんっ、貴様に用はないわ。私はそこの逃げ出した商品を取り戻しにきただけなのだからな」

「商品……?」

「このデッブーカの店を燃やし、あまつさえ売れ残りの分際で逃げ出したそこの獣のことだよ」


 しかし、デッブーカと名乗ったその中年は殺気立つカヴェルを気にもせず自分の話ばかりをする。


 その話をまとめると、とうとう俺たちを追いかけて奴隷商の責任者が直々に捕まえにきたらしい。

 ご苦労なこって……と俺はため息をつきたくなる。


 やっぱり店を燃やすのはやり過ぎたか……と後悔しても遅い。


「さあ、魔術士よ! そこの獣を捕らえよ!」

「了解しました、雇い主」

「ちっ、狙いはニィナか! やさせるか!」


 デッブーカは頬の痩せた魔術士をけしかけてくる。

 剣を構えて迎え討とうとするカヴェルたち。


 そしてニィナは……

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