第17話 旅立ちへのカウントダウン(1)

 ――あれから三日ほど。

 アレクとパーティーを組み、カヴェルの指導の下、着々と冒険者としての実力を付け始めてきた。


 初めはぎこちなかったパーティーも、徐々に洗練されていき、言葉を交わさずとも目配せや合図で連携できるようにまでなっている。


 そしてニィナは――


「――だーかーらー! どうしてそう先走るんだよ!」


 未だにパーティーに馴染めずにいた。


 ……結局、染みついた常識を変えることは難しく、なんでも一人でなんとかしようとするニィナにアレクたちは手を焼いていた。


「……ごめん」


 もちろん、それではいけないとニィナも思っている。……けれど、過去の記憶が忌々しくニィナに刻まれ、無意識に他人に頼らないようにしてしまっていた。


 これで、ニィナの行動が足を引っ張るものだったらアレクもやりやすかったのだろう。

 しかしニィナは積極的に魔物の攻撃を引きつける上に、自分で回復ができるため非常に優秀な盾役として機能している。


 だからこそ、もっと自分たちと連携できれば強い魔物相手でも戦えると、歯がゆいとアレクは思っているのだろう。


「お前ら反省会はその辺にしとけ。……野盗が出たってウチの狩人から連絡があった」


 茂みの奥からカヴェルが現れて、アレクたちにそう告げる。


「最近多くないですか? 野盗」

「ああ……ここら辺は魔物が多いだけで治安は良かったんだがなあ」


 不思議そうにするカヴェルのつぶやきを聴きつつ撤退していく。


『……やっぱり、このままのんびりって訳にはいかないよなあ』


 こちらをつけてくる大量の敵の気配を感じ取りながら、愚痴をこぼす。

 なんだかんだでこの生活に慣れてきたと思った矢先に厄介事が舞い込んできそうな予感が止まらない。


 勘違いだといいなあー。


 なんて叶うはずもない願望を思ってみる。



***



 ……はい、案の定というか。

 平穏に済むはずもなかった。


「最近の野盗騒ぎで隣町にいる貴族の領主から応援とこの街にいる冒険者に依頼が入った。合同での野盗殲滅らしい」


 次の日。

 組合に集まったカヴェルの口からそう告げられる。

 野盗の集団が森に住み着いたことで、冒険者などを中心に被害が広まってしまい、隣町にいる貴族に応援を求めたらしい。


 領主お抱えの傭兵や騎士たちと共に森で野盗を討伐する依頼が組合を通して、街にいるすべての冒険者に依頼……というより、強制参加させられることになった。


 当然、カヴェルたちのパーティーやニィナたちのような新人も含めて。


「という訳だ。あんまりやらせたくはねぇが、お前らも参加することになってる」

「何だそんなこと、気にしないでくださいよカヴェルさん」


 と申し訳なさそうに告げるカヴェルにアレクがそう答える。



 一方で、俺はというと……めちゃくちゃに嫌な予感が働いていて、参加させたくないと思っていた。


 ニィナのことを付け狙う野盗って言えば、奴隷商からの刺客以外に考えつかない。


 けれど、参加せざるを得ないだろう。


「うん、わたしもがんばる」


 なぜなら、ここ最近やたらと好戦的なニィナのやる気に火が付いてしまったのだから。

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