第4話 気配を察知するとか憧れるよね

 マイルームに戻ってきた俺はさっそくマウスを動かして、自分のステータスを確認する。



――――――――――――


【男】

AP 7/10

WP 3/10

BP 3/12(2↑)

SP 9/10

加護:《満腹の加護》《健康の加護》《安眠の加護》《浄化の加護》

知識:《魔術》《技能付与「神託Lv-」》

権能:《外神》


――――――――――――



「BPが増えてる?」


 さっきの戦いで成長したということだろうか。

 俺にはニィナのようにレベル表記がないからよく分からない。

 ……まあ、でも。

 増えているならちょうどいい。


 俺は、先ほどの戦闘の反省をし……今、必要なものを取得するべく、マウスを動かす。


 前に見たときから目を付けていたものがあるのだ。

 もしBPが増えたら、必ず取ると決めていた。



知識:《念力》

 消費BP1。

 APを消費することで、見えない力を操る。

 消費するAPの量で力の強さが変かする。


知識:《外敵察知》

 消費BP2

 悪意を持って近づくものの居場所を知覚化する。



 この二つ。

 《念力》はさっきの戦闘で、手数を増やしたくて取ろうと決め……《外敵察知》は前に取ろうと思ったけどBPが足りずに諦めたものだ。


 なぜこの二つなのかというと……


「圧倒的に、コスパがいいんだよなぁ」


 そう。

 《念力》は知識なのにWPではなくAPを消費して発動する。

 一日に使える量が限られているWPよりも、自然回復するAPを消費するから、《魔術》との兼ね合いもいい。



 そして何より、この《外敵察知》!


 これがあれば先ほどの奇襲も、もう少し早く気付くことができた……かもしれない。

 初めに見たときに取ろうかとも思ったけど、あの時はそれよりもニィナを万全にすることを優先したため、断念したのだ。


「じゃあ、早く戻るか……モニターで様子は見れるけど、何があるかわかんないし」


 俺はそう呟き、再びニィナに憑依するのだった。



――――――――――――


【男】

AP 7/10

WP 3/10

BP 0/12

SP 9/10

加護:《満腹の加護》《健康の加護》《安眠の加護》《浄化の加護》

知識:《魔術》《技能付与「神託Lv-」》《念力》《外敵察知》

権能:《外神》


――――――――――――



***



「ん……ふわ」


 朝日がまぶしくて目を開けるニィナ。

 夢を見ないほどに熟睡できたおかげで、とても体が軽い。

 今まで感じたことのない、充足感にちょっとだけ感動している。


 痩せ細って不健康だった手足も、なんだか肉付いてきた。


 寝ている時についたであろう土埃をはたき落として、立ち上がると、景色に若干の違いがあることに気づく。


「ん? 昨日と場所が違う?」

『ああ。ちょっと敵襲にあってな。危ないから移動したんだよ』

「ふーん……?」


 首を傾げてそうなんだ、と納得するニィナ。

 やっぱり昨日のことは記憶にないらしい。

 まあ、知らないなら知らないほうがいいだろう……と俺はニィナに黙っておくことにする。


「それで今日も街に向かうために歩くの?」


 ニィナは寝癖を弄りながら、そんな質問をしてくる。


『うーん……まあ』

「神様?」


 ニィナのその言葉に俺は曖昧な返事をしてしまう。

 ……昨日やってきた追手の荒くれ者のことを思い出すと、町に行くのは危ないんじゃないかって思ってしまうのだ。


 なにせ、建物や商品を丸々一つ燃やし尽くしたのにも関わらず、追手を向かわせるほどの余裕と恨みがある。


 なら近くの街には根回しをして待ち伏せをしているかもしれない。


『いや、なんでもない。……とりあえず街に向かおう』


 どっちにしろ、このままここで生きていくのは難しいんだ。

 街の近くに行ってから考えよう。





 朝食は《満腹の加護》でお腹を満たし、出発する。


 けれどもこの加護は食料は与えられるけど、喉の渇きを癒すことはできない。

 おまけに日が昇ると急に気温が上がって、体から容赦なく水分を奪っていく。


 昨日からずっと水を飲んでいないニィナ。

 《健康の加護》と《安眠の加護》でまだ大丈夫なように見えるけれど、こんな状態が長く続くはずもない。


「……ねえ、神様」

『ん? なんだ?』

「わたしに何かした?」

『…………なんのことだ?』


 早く街の近くまで行かないと考えていたら、閉じていた口を開くニィナ。

 昨日は雑談もなしに歩き続けていたから、驚いたけれど……なんのことか分からない俺はただ何故と問い返すことしかできなかった。


 何かしたかと言われれば、心当たりは昨日の戦闘くらいしかないのだけど……気付かれたとは思えない。

 それならもっとはっきりと聞いてくるだろう。


「んー……なんか、ぼんやりとだけど、周りの気配が見えるようになった感じがするの」


 ピコピコとケモ耳を動かしながら周囲を見渡すニィナに、俺はその言葉に安心する。


『あー、それは《外敵察知》っていう新しい力だよ』

「そっか、そうなんだ」


 敵襲があったから習得したんだ、とニィナに言えば納得したように頷いてくれた。


「神様の力ってすごいね。なんでもできちゃうんだ」


 本当にほめているのか怪しく思えるほどに平坦な口調だぜ……。

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