23.抵抗
海賊船
ザーザー ジャブジャブ
「ひでぇ雨やな…一寸先が見えんや無いか…」
「海賊王!頼みがある」
「んん?商人か…おまん濡れて体冷やしたらあかんで?」
「そうも言ってられない…始まりの国の港町まで海賊船は入れるかい?」
「そりゃ無理や…港町に海賊船は寄るな言われとる」
「また避難民が大勢出そうなんだ…無理は承知で避難させて欲しい」
「パパ!白旗付けて入港したらいいじゃん」
「ん~む…そやけどなぁ…一般民が攻撃してくるかも分からんで?」
「海賊には民を助ける救世主になってもらいたいんだ」
「なぬ!!?救世主…えー言葉や!!わいが救世主か?」
「そうそう!正義の義賊…海賊王参上!!ってね」
「え~なぁ~!!ちぃと無理してみよか!!」
「よし!!始まりの国からの避難民は港町まで数日掛る…しばらくは避難民を輸送してもらう事になる」
「行き先は辺境の村でええんか?」
「そうだね…塩も向こうに置いて来て」
「そら忙しゅうなるなぁ」
「海賊船は全部で何隻あるのかな?」
「奪った商船と合わせて50隻はあるで~?」
「よし!騎士達はエルフの長老のところまでは1週間~10日かかる筈…その間僕達は避難民の救出だ」
「中立の国に残ってるゴーレムも心配じゃんね…」
「ちょっと全数が把握出来ないけど…暴走するとマズイ」
「20~30体でこの騒ぎだかんなぁ…倒せたのってその内何体だろ?」
「太陽の光で動かなくなったら処置できる…女海賊はそっちの処理できる?」
「心臓の機械を壊すんだよね?」
「そう!君の空賊?…で協力して壊して欲しい」
「ちっと考える!!わたしの奴隷1号~20号までフル稼働してみるわ」
「ハハ頼むよ」
夜明け
「明るくなって来た…盗賊!!始まりの国の上空まで行きたい」
「おう!忙しいな…飛行船に乗れ」
「もうキマイラは居ないから多分飛行船でも大丈夫」
「始まりの国の上空でもか?」
「もしかすると他の気球から攻撃されるかもしれないけど…飛行船なら逃げられるだろう?」
「一応私が弓主担当するわ」…女盗賊が手を挙げる
「囚人も弓使えるな?」
「私を誰だと思っている」
「ヌハハ元衛兵隊長も弓で頼む」
「機械の国の気球はただ森を焼くだけだ…見つけ次第落とそう」
「それにしてもひでぇ雨だな…雲の上まで飛ぶぞ!!」
一行は矢を大量に積み込み飛行船で始まりの国へ向かった…
雲の切れ目
飛行船は比較的雲の薄い所から上昇していく
海の湿った暖かい空気は大量の雨を降らせたが
陸の方は海ほどの土砂降りでは無かった
「雲から出るぞ…他の気球に気をつけろ!」
「沢山居るわ!!」
「勇者と魔女の魔法の射程は?」
「撃ち下ろしの弓程射程は無いぞよ?」
「じゃぁ勇者と魔女は風の魔法か何かで敵の矢を逸らせて…盗賊も弓主に回って」
「おう!それは良いが…操舵は誰がやる?」
「わたしが飛行船動かしてあげる…商人教えて?」…薬剤師が名乗り出る
「縦帆は風を受けて揚力を飛行船に伝えるんだ」
「ふむふむ…」
「横風を受けて進むのが一番速く進むらしい…風上へは30度の角度でしか進めない」
「いや…縦帆2本の角度によっちゃ15度まで飛べる…慣れろ」
「という事らしい…この飛行船は他の気球より高度が上げられるから割と安全に飛べる筈」
「縦帆の操作はこのロープね?」
「そのロープに繋いでるハンドルを回せ…まぁやってみろ」
「えい!」グリグリ
「いいね…次は反対に旋回してみよう」
「機械の国の気球しか居ないわ…始まりの国の気球は一つも飛んでない」…監視をしていた女盗賊は言う
「えらく小せぇ気球だな」
「一応羽付きだよ…普通よりも早い筈」
「あ!!機械の国の気球に見つけられたみたい…追って来るわ」
「高度を上げながら折り返そう…様子を見る」
「あっちは俺達のこと何だと思ってると思う?」
「さぁね?でもこんな大型で変な形した飛行船は怪しいだろうね」
「何か撃って来てる…反撃して良いかしら?」
「一発だけ球皮に当てて…そうすれば帰るしかない」
弓矢の撃ち合いが始まった
高さの利が有る分こちらが有利だった
加えて魔女と勇者の風魔法により相手の放つ矢は軌道が曲がりこちらへ当たらない
その撃ち合いは長く続くこと無く小型の気球は引き返して行く
「ヌハハやっぱ撃ち下ろしの方が圧倒的に有利だ」
「お前は外してばかりだったがな?」
「そう言うない!これであらかた片付いた…あいつら戻って行くぞ」
「どうすれば良いの?」
「追わない…釣りかもしれないしね…始まりの国の方向へ向かおう」
「分かったわ」
「あの小せぇ気球は機械の国の船の方向に戻ってるのか?」
「そうだと思うけど…すこし進路が違うね…どこに行くんだろう?」
「ん~む…どうやら女海賊の撒いた網は効果がなかった事になるな…足止め出来ていないって事だ」
「かもしれないね…」
「雲の切れ目!!下が見えるわ」
「うはぁ…ひでぇなこりゃ…」
「暗くて良く分からなかったけど…草原と森があったとは思えない有様だね」
「ゴーレムは何処行った?」
「所々にある石?」
「どうだろう?鎧を着て居無いなぁ…石になってるのはトロールかもね」
「始まりの国が見えてきたわ」
「よし!もう少し近づこう」
始まりの国上空
ドーン ドーン ドーン
「大砲で堀を作ってやがる…その後方にバリスタを配置…まるで攻城戦だな」
「始まりの国も夜にゴーレムが来る事を分かってるね」
「なるほど…あの堀に油流し込んで火の壁にするつもりか…火を避けて来るゴーレムに大砲ぶち込む気だ」
「これ今日中に守備体制整えるのムリそうだね」
「だな?」
「おい!こちらの飛行船に気が付いた様だぞ?」
「慌てているかな?手紙を書く」…商人はサラサラとメモ書きを書く
「こっちの様子を伺ってんだが…」
「皮袋に入れて煙玉と一緒に投下して…できれば宿舎の近くが良い」
「隊長宛か?」
「この海賊のバッチも入れておこう」ゴソゴソ
「落とすぞ!!」
盗賊は煙玉に火を点けその革袋を投下した
モクモクと煙を吐きながら落下して行く…とても分かりやすい
「よし!北の森で衛兵隊長を待とう!」
衛兵宿舎前
そこでは女隊長とその他衛兵が怪しい飛行船を見上げていた
「隊長!!アレが煙玉を落として来ました!!」
「よし!探しに行け!真っ直ぐ私の所へ持って来い!」
「ハッ!!」
「他の者は堀の掘削を急げ!!」
「堀の後方には馬防柵を構築しろ!!」
「精鋭兵!今の内に王子殿下を港町へ避難させるんだ」
煙玉を探しに行った兵隊がそれを見つけ戻って来る
「隊長!!手紙とバッチが入っています!!」
「見せろ!」パサ
”北の森で待つ
”同志より
「衛兵!!駿馬を持ってこい!!指揮を精鋭兵と変わる!!」
「どうされるのでありましょうか?」
「あの飛んでる奴らは味方だ!私を呼んでいる!」
「味方!?急いで駿馬を持ってきます」ダダダ
林
商人達は北の森へ続く林の浅い所で待って居た
見つけやすい様に狼煙を上げている
「煙!!あそこか…」
女隊長はその狼煙をすぐに見つけ馬を走らせる
パカラッ パカラッ
「来たね…一人かな?」
「見ての通りだ…さてどういう事か説明してもらおう」…そう言って馬を下りる
「まぁまず飛行船に乗ってよ…空から惨状を見てほしい」
「ふむ…私はあまり時間が無いが?」
「そんなに拘束するつもりは無いさ」
「まぁ良い!早くしろ」…女隊長は言われるがまま飛行船に乗り込んだ
「飛ばすぞ!!」
女隊長を乗せ飛行船はエルフの森南部を目指す…
「この船はどうしたんだ?」
「僕達の手作りさフフ…君の妹も同じ飛行船に乗っているよ」
「妹?そうか…共に行動していたのか」
「まぁ直ぐ会えるよ…今はゴーレムの処理をしてる筈」
「昨晩、黒い騎士に会った…私の部下と一緒だった様だが…どういう事か説明して欲しい」
「それは話が長くなるよ…まずエルフの森がどうなってるか見てから話そう」
エルフの森南部上空
そこは既に森では無い
キマイラの吐く光るブレスが森を根こそぎ剥ぎ取り地表を焼き
まるで溶岩が流れているかの様に山火事が地平線の向こうまで続いて居る
そこに雨が落ちモウモウと煙が立ち昇り被害の全容を覆い隠していた
「こ、これは…キマイラの火力がこれほどだとは…」
「驚きだよ…魔女の塔を破壊した時とは桁が違うね」
「これほど焼かれてまだゴーレムが居る…のか?」
「そうだね…ゴーレムはトロールと同じ様に再生するからなかなか倒せないんだ」
「機械の国は始まりの国を侵略するつもりか?」
「恐らくそうだと思う…中立の国の国王も暗殺された…もう機械の国の手に落ちてるよ」
「中立の国の国王が暗殺された?だと?」
「始まりの国の執政が関わってると思うわ…」
「あの愚か者め…そうだ!キマイラはどうなった?」
「キマイラはもう大丈夫さ…森へ帰ったよ…これからの問題はゴーレムだね」
「何体居るんだ?」
「100体近く居るはず…」
「なっ!!?そんな数が今晩始まりの国に?」
「いや…全部が来るとは限らない…ゴーレムは統率が取れていないんだ」
「暴走しているんだな?」
「そう…コントロール不能で機械の国も慌ててる筈」
「弱点は無いのか?」
「倒すには心臓の機械を破壊するしか無さそうだ」
「あれほど早く動けるゴーレムの心臓を破壊するのは困難だぞ?」
「うん…日が出ている内に民を避難させた方が良い…海賊船が港町に入港するからそれに乗って…」
「まて!海賊船は港町には入船出来ん…返り討ちになってしまう」
「だから君に会いに来た…民の避難を優先したい…海賊船で辺境の村まで移送する」
「なぜ辺境の村に?」
「ゴーレムは海を渡れない…おそらくこの大陸はゴーレムにメチャクチャにされると思う」
「この惨状でもまだ動くゴーレムか…流石に逃げるしか無さそうだな…」
「始まりの国は民が避難するまで時間を稼げば良い…3日あれば港町までなんとか移動できるよね?」
「その後の食料はどうする?」
「どうにかするしかないよ…とりあえずの食料は海賊船にも積んで有る」
「よし分かった協力しよう…私は兵隊を率いてギリギリまでゴーレムの進行を抑えれば良いな?」
「そうだね…僕達も出来るだけサポートしてあげる」
「取り引きはこれで終わり…これから君が聞きたいであろう話をするよ」
「そうしてくれ…どうやら私はお前達と違ってかなり情報が少ない様だ」
「うん…どこから話そうかな…今の選ばれた勇者の話からしようか」
「今の?森の町で行方不明の筈だが…」
「まぁ話はややこしい…良く聞いてね?」
商人は今の選ばれた勇者がどの様に黒騎士に成長して行ったのか詳しく話した
時間をさかのぼった事…エルフやドラゴンのと関り…魔王島での出来事…
その後始まりの国で捕らわれの身になっていた事…そして本物の勇者の事…
女隊長はそのいきさつを聞きながら時折うつむき悲し気な表情をしていた
「あの黒い騎士はずっと私の近くに居たのか…そして僧侶が奴を救った…」
「そういう事になるね…あの2人の運命は誰よりも特殊だよ」
「フフ私は恥ずかしくて顔向け出来ん…」
「恥ずかしい?何の事かな?」
「個人的な事だ…気にするな」
「まぁこれで前後関係は理解してもらえたかな?」
隊長は傍で話を聞いていた勇者に向き直った
「魔法剣士…いや…お前が本物の勇者なのだな?」
勇者は戸惑いながら軽くうなずく
「フフフ…ハハハ…私の目は節穴だ…なんという馬鹿者か」
「それは仕方が無い…本人もあまり自覚は無いのさ…これからの事を考えよう」
「大体理解した!!今は始まりの国を守らなければならない…元の場所で下ろしてくれ」
「わかった…でも隊長!君はまだ死んではいけない人だ…無理はしないように」
「私も降ろせ…隊長を守ってやる」…囚人が名乗り出る
「お前を知っているぞ…終わりの国の衛兵隊長だな?」
「今は囚人だ」
「2年ほど前だったか?宿舎の地下牢で亡くなった筈だったが…それも理由が有ったのだな?」
「クックック…まぁそう言う事になる…私は既に不死者の身だった…これで理解出来るか?」
「なんとまぁ私の目を欺き随分近くに居た物だ」
「その当時は行方不明になった騎士を探していたのさ」
「まぁ良い…お前達との接点は一人欲しいと思っていた…歓迎する」
「良いね…どうやら囚人は海賊王の娘達と相性が良い様だ」
「あのワガママ娘よりはマシな話が出来そうだ」
「私の邪魔はするなよ!?」
「フフ手並みを見せて貰おう」
「元の林に着いたぜ?」
フワフワ ドッスン
「じゃぁ隊長と囚人!!気を付けて!!事が済んだら海賊王の船で会おう!!」
飛行船
女隊長と囚人を降ろした飛行船は早々に高度を上げ次の目的地へ向かう
「次は港町で良いのか?」
「そうだね…次は盗賊と女盗賊に飛行船を降りて貰う」
「避難民の誘導か?」
「それと物資の調達もだよ」
「金が無えぞ?」
「女盗賊の家にある」
「え!?そんな物無い筈…あるのは薬だけ…」
「中身を確かめたかい?」
「どういう事?」
「あれはねフフ…僕達は海賊に騙されて塩を掴まされたんだよ」
「なぬ!!?お前…知ってたのか?」
「ハハ済まないね…あの時は海賊も黙って薬を渡すほど僕達を信用してなかった」
「フフフさすが闇商人ね」
「どうやってわかったんだ?」
「舐めただけさ…僕が舐めた時ジロジロ見られたけどね」
「今なら塩は薬より高く売れるな?」
「そうだね…皆困ってる筈…それで物資を調達して海賊船に乗せて欲しい」
「わかったわ…運ぶのは盗賊が手伝ってよね?」
港町
「じゃぁよろしく頼む」
「おう!任せとけ!行くぞ女盗賊!」
「待って!もし硫黄が手に入るようだったら入手しておいて」…薬剤師が慌てて言った
「硫黄か…大砲の火薬作ってる所ならありそうか?」
「あると思う」
「どれくらい必要なんだい?」
「酸を作るのに必要なの…ゴーレムの鎧を鎔かせると思うのだけれど…量は…」
「できるだけ沢山って事で良いんだな?」
「あと…空き瓶も必要」
「分かった…飛行船に積んでる塩も持っていくぜ?金が足りんかも知れん…」
「良いよ…僕達は一回海賊船に戻るよ」
「飛行船の操作はわたしに任せて」
「明日もう一回港町まで来るよ…もうすぐ日が暮れてしまう…急がないと」
「気をつけろよ!!」
「分かってるよ…じゃぁ作戦通りお願い」
飛行船
盗賊と女盗賊を降ろした飛行船は海賊達と情報共有を謀る為一路海賊船へ向かう
これで飛行船をまともに操作出来るのは薬剤師だけとなった
「上手く海賊船を見つけられるかしら…」
「大丈夫さ…およその場所は分かってるし向こうも港町を目指してる筈だから」
「雨で視界が悪いわ?」
「まぁ進路はこのままで良いよ…ところで勇者!君は照明魔法を使えるかい?」
「使える」
「よし!今夜は勇者と魔女の照明魔法で始まりの国を援護する」
「照明魔法をどうすれば良いのじゃ?」
「ゴーレムに当てる…その魔法はどれくらい持つかな?」
「一晩は持つ筈じゃが…遠く離れると効果が切れるやもしれん」
「僕達は上空で状況を見てるさ」
「それにしても夜に戦なんて厄介だ…」
「まだ満月なだけありがたいよ」
「あ!!あれ海賊船?」
「お!?意外と早く見つけたね?」
「よかった…このまま見つけられないかも知れないと思ってヒヤヒヤしたわ」
「球皮の熱を抜くね…上手い事着地させて」
「自信が無いけれどやるしか無いわね…」
海賊船
フワフワ ドッスン
薬剤師は縦帆の仕組みの理解が早く初めての割に上手に着地させる事が出来た
「ムッカ!!あんた達私の前でベタベタしないでくれる!?」
女海賊は勇者の顔を見るなり吐き捨てた
「まぁまぁ落ち着いて…」
「ほんで?向こうの方はどうだったのさ!?」
「今日君のお姉さんに会ったよ」
「え!!!オネエに?」
「今始まりの国の衛兵達を指揮してる…籠城して3日はなんとか凌ぐつもりさ」
「その後どうすんの!?」
「市民を避難させた後に海賊船に乗る」
「早く逃げないと危ないじゃん…てかお姉に何か有ったらパパブチ切れるよ?」
「囚人が君のお姉さんを守るといって飛行船を降りた」
「あのオッサンが!?ほんじゃ大丈夫か…」
「それで君の方はゴーレムの処理…どうだった?」
「20体くらい心臓取り出したさ」
「見られるかな?」
「今パパが分解してる…船長室に居るよ!」
「ちょっと見て来る…」
船長室
ガチャ ガチャ
海賊王は謎の機械をバラバラにして中身を調べていた
「こりゃ凄いわ…応用すりゃ遠隔で義手の指も動かせそうや…」
「海賊王!何か分かったかい?」
「商人か!すごいもんが入っとったわ…魔石をエネルギーにした永久ポンプや」
「ハハ僕の心臓もそれにしたいな」
「そらムリやな…トロールやから交換出来るちゅうもんや」
「やっぱりその心臓で遠隔操作してるのかな?」
「そうやな…雷の魔石も入っとってな…どうやらこれでゴーレムを動かしとる思う」
「そんなことできるんだ…」
「それよりこの永久ポンプの仕組みや…金属が雷の魔石で伸縮しよる…これを使えば…」
「筋肉の代わりになる?」
「そうや!!…これをゴーレムの体に埋め込んどるんや…それで自由に動かせる」
「なるほどね…雷に弱い訳か」
「でもダメダメ!ゴーレムの鎧が本体へ雷が届かないようにしてんのさ」…女海賊が口を挟む
「鎧に穴が空けば雷で動きを止められるってことでしょ?」
「どうやって鎧に穴なんか開けんの?…ゴーレムめちゃ動き早いじゃん…大砲とか当たんないし」
「薬剤師が酸の薬を作れると言ってる…硫黄が有れば良い」
「あーーーなるほど薬をぶっかける訳ね」
「ただ今日は間に合わない」
「なんだよ期待させんなって…今晩どうすっかなぁ…」
「まぁ上空から始まりの国の衛兵達をサポートする位しか出来ないね」
「海水は?海水を掛ければ本体に雷が効くかも」
「お!?良いね!!」
「ゴーレム1体分の海水ならなんとかわたしの飛行船で運べる」
「ん~~~1体か…」
「突出したゴーレムだけやれば進行を遅らせれるかも…」
「わかった…今日はその手で行こう…君は海水をゴーレムに掛ける役だ」
「海水をぶっ掛けたら閃光玉で知らせるわ」
「おけおけ!なんとか今晩を乗り切ろう」
ヒュルルルルル~ ドーン!
「お!!?信号弾だ…ちっと見てくる」ダダダ 女海賊は船長室を飛び出して行った
「さて…もうすぐ日が落ちてしまう…今のうちに食事を済ませよう」
「今日は長くなりそうね」
「また寝られないねえ…」
「交代で休むしか無いわ」
「寝られないのは始まりの国で守備してる衛兵達も一緒さ…向こうはもっと必死だよ」
「そうね…」…うつ向く薬剤師
「んん?少し休むかい?」
「いえ違うの…結局予言の通り戦争になってしまったと思って…」
「あぁ大丈夫…僕に考えがある…このまま予言通りにはさせないよ」
「考えって?」
「落ち着いたら話すよ…とりあえず今晩を乗り切らないとね」
「そうね…」
ドタドタ バタン!
女海賊が勢いよく戻って来た
「パパ!!機械の国の船がクラーケンの大軍に襲われてる!!」
「なんやとう!!?」
「10匹は居るっぽい…巻き添え食らわないうちに避難した方が良い!」
「方角と距離を先に言えと教えたろうが!!どっちや?」
「10時の方向で10海里ぐらい…飛行船だと上がればすぐ見える」
「ちいと陸沿いに転進や!!クラーケンはそこまでは来ん!!」
「まずいな…機械の国の船が沈むと又暴走し出すゴーレムが増える」
「わたしは海水汲んで上空で待機しとく!!」
「休んでる暇ないな僕達も行こう」
「商人は飛行船で少し休んで…操作はわたしがやるから」
「ハハそうも言ってられないさ」
商人と薬剤師…勇者と魔女の4人は満足な休息を取る事無く再び飛行船に乗る事になった
海賊船はクラーケンが追って来ない陸沿いの浅瀬へ向かい事無きを得た
飛行船
海賊船の安全を確認した後一行は再度始まりの国へ向かう
暗闇での戦いになってしまうから照明魔法で始まりの国を援護する為だ
「エルフの森の火災は治まったみたい?」
「いや…まだくすぶってるね…」
「暗くなってきて良く見えないわ…少し高度下げた方が良い?」
「待って…高度下げてしまうと速度が落ちる…勇者!このビンの中に照明魔法出来るかい?」
「照明魔法!」ピカー
「このビンを落としていく…もっと作って」
勇者と魔女は2人で協力しながらビンの中に照明魔法を閉じ込めた
「薬剤師!このまま北に進路を変えて…ビンを順に落としていく」ポイ
商人はそのビンを順に落として行き光のラインを作った
それはそのラインをまたぐゴーレムを発見しやすくする為だった
「次はここから真っ直ぐ南だ…これで2本の線が引ける」ポイ
「賢い…これで見やすいわね」
「この線をまたいだゴーレムに接近して照明魔法を撃つ」
「照明魔法だけで良いのかな?」
「余裕があったら他の魔法も撃てるかい?」
「氷結魔法で足を止めれるかもしれない」
「わらわは氷結魔法は使えぬ」
「それじゃ照明魔法は魔女が担当だね…2人の合わせ技が頼りかな」
「見て!森でまた火が出てる」
「ええ!?暴走したゴーレムが又動き出したかな?」
「違う!!空から火が降ってる」
「ドラゴンか…」
「ドラゴンとは作戦の共有が出来て居ないけれど…大丈夫かしら」
「ドラゴンは賢いよ…きっと僕達の動きもしっかり見てるさ」
「この飛行船はここで旋回してて良い?」
「うん…待とう」
その後商人達の飛行船は光のラインを超えるゴーレムに照明魔法を当て
勇者の放つ氷結魔法で動きを遅くし始まりの国へ進撃するゴーレムを足止めしようとする
しかし大砲をいくら当ててもゴーレムの進撃はなかなか止まらない
ドラゴンが森の上空でゴーレムに対し遊撃してくれているお陰で
始まりの国へ一気にゴーレムがなだれ込む事は無かったが
それでも数体は城へ向かって突き進むゴーレムが居た
「あのゴーレムの進みが止まらない…このままだと城壁に取り付いてしまう!!」
「くそう!!動く的の心臓をそう簡単に大砲で撃ち抜けないか…」
「どうするのじゃ?近付いて高位魔法で焼いて見ても良いが?」
「試してみるか…」
ヒュルルルル ピカーーー!!
その時女海賊が使ったと思われる照明弾が光った
「あ!!女海賊が海水を掛けた合図だ!!薬剤師行こう!!」
「わかったわ!!」
「勇者!!射程に入ったら雷魔法を!!」
「もう撃てる!雷魔法!」
ガガーン!ピシピシ
落雷がゴーレムに直撃する
「どうだ!?」
「おぉ…止まっておる…」
「アレを止めて固定して!!」
「雷魔法!雷魔法!雷魔法!」ガガガガガーン
その様子を見ていたのか始まりの国の衛兵隊はバリスタの大弓を一斉に撃ち始めた
バシュン! バシュン!
「よし!!ゴーレムに当たってる!!これで心臓に当たれば倒せる!!」
「ゴーレムが動かなくなった」
「やったか!?やっと1体…」
「次のゴーレムが来てるぞよ?焼かれておるから分かりやすいのぅ」
「いやこれからだ…次々出てくる…マズいな…ゴーレムは何かの連絡手段を持って居そうだ」
「連絡!?もしかして仲間を呼んでる?」
「休んでる暇無い!!足止めしないと!!」
ゴーレムが仲間を呼ぶ習性があるのは返って好都合だった
魔女が高位魔法でゴーレムを焼く事で飛行船を囮にする事が出来たからだ
そうやって始まりの国へ進撃するゴーレムを足止めしながら夜明けを待つ
夜明け
始まりの国の衛兵隊ではゴーレムに対し命中率の悪い大砲よりも
威力は劣るがバリスタで大弓を当てた方が効果的な事が分かり
城門の外にバリスタを何台も配置して迎撃態勢を取っていた
「もう少しで夜明けだ!!それまで持ちこたえろ!!」
「ハッ!!」
「バリスタ撃てえぇぇぇぇ!!」
勇者と魔女の魔法により動きの鈍くなったゴーレムに大弓を当てるのは難しい事では無かった
だが心臓にピンポイントでなかなか当たる物では無い
「堀に落ちたゴーレムに火を掛けろ!!」
「ダメです!!這い上がって来ます」
「ええい!!この角度では心臓を狙えん!!」
ゴーレムは四つ足で這って来ているから心臓部が丁度守られる体勢なのだ
「バリスタ隊までゴーレムが来てます!!」
「くぅ…バリスタ隊引けぇぇぇ…ゴーレムに大砲を直撃させろぉぉ!!」
ドーン ドーン ドーン
城壁の上に配置された大砲が火を吹きゴーレムに直撃する
ゴーレムは手足が粉砕しても尚進撃を止めない
「まだ動いてます!!」
「全体城門まで引けぇぇ!!」
「隊長!!ドラゴンの形をした飛行船が来ます!!」
ザバーーーー
ゴーレムに大量の海水が浴びせられその飛行船は照明弾を放つ…ヒュルルル~ ピカーーーー
「待て!!大砲主!!ゴーレムが止まるのを待て…良く狙って心臓に直撃させろ!!」
「もう一基の飛行船が来ました!!」
「よし!!落雷でゴーレムが止まる!!良く狙え!!」
ガガガガガガーン
稲光がゴーレムを直撃する
「今だ大砲主!!ど真ん中を撃てぇ!!」
ドーン ドーン ドーン
大砲の十字砲火はゴーレムをバラバラに打ち砕く
「ゴーレムを倒した!!全体!!元の位置に戻れえぇぇぇ!!」
「隊長!!日の出です!!」
「よし!!衛生兵は怪我人の処置を行え!救護班は倒れている者を運べ!!」
「ハッ!!」
「各自食事を今のうちに済ませろ!!」
その日…ゴーレムの進撃はなんとか凌ぐことが出来た
しかし大砲の砲弾やバリスタの矢が無限にある訳では無いから
衛兵達は寝る間も無く弾薬の補充と塹壕の掘削に追われ次第に疲弊して行った
そして経験した事の無い破壊と進撃を目の当たりにし…誰もが滅びを予感した
飛行船
ヒュゥゥゥゥ バサバサ
ゴーレムの進撃が止み…生ぬるい海からの風が吹き抜け縦帆が虚しく音を鳴らす
「夜明けよ…」
「結局倒せたのは4体だけ…か」
「これ以上ゴーレムが増えてしまうと厳しいわね…」
「石になってるゴーレムはどれくらいかな?」
「数体かな…森の中にはもう少し居るかもしれない」
「これは…3日持たせるのはキツイね…」
「硫黄が手に入れば酸を使って戦える」
「どれくらいで作れる?」
「材料が揃えばすぐに出来るわ」
「よし!港町に行こう」
「みんな少し休んでて…」
港町
仮眠を取ったのもつかの間
飛行船は風に乗りあっという間に港町に到着した
4人は盗賊が調達したであろう硫黄を求め女盗賊の家へと向かう
「盗賊たちは何処に居るのかしら?」
「多分女盗賊の家だと思う」
「この町はまだ慌てた様子が無いわね」
「対岸の火事くらいにしか思ってないんだろうね」
「海賊船もまだ入港していない…」
「今日辺りから慌しくなるんじゃないかな?」
「女盗賊の家はこっちで良いの?」
「多分…この辺りだったと思う…あそこかな?」
坂道を上がった先に有る掘っ立て小屋
港を一望出来る立地の良い場所だったが中心街からは少し離れている
商人はその掘っ立て小屋の扉を叩いた…トントン
「居ないのかしら?」
「盗賊!?僕だよ…居ないのかい?」
ガチャリ
「おぉ…誰かと思ったぜ」
「うわ臭い…」
「硫黄の臭いだ…この臭いが嫌で女盗賊は宿屋に泊まってる」
「今からここで酸を作るわ…硫黄を燃やすから魔女手伝って?」
「わらわに何か出来るんか?」
「硫黄を燃やすのを手伝って欲しいの」
「それは簡単じゃ」
「それから盗賊!空き瓶と水を沢山持って来て…商人は宿屋で少し休んで」
「あ、あぁ良いのかい?」
「じゃぁ鍋に硫黄を入れるから順に燃やしていって…」
数時間後
「うお!!ひでえ臭いだ…目に滲みる」
「これで全部…ビンで50本くらいかな」
「これを飛行船に積めば良いか?」
「うんお願い!絶対に割らないように」
「そんなに危ねぇ物なのか?」
「その液体を被ると体が解けてしまうの」
「なぬ!?…もしつまづいたら?」
「液体を被ったらアウト…とても強い酸だから気をつけて」
「恐えぇ物運ばせるんだな」
「でもそれでゴーレムの鎧を鎔かせると思う」
「そうか鎧さえ無ければ何とか出来るんだな?」
「多分…」
「お前は宿屋に商人達を呼びに行ってくれ」
「うん!そうする」
一行は酸を飛行船に乗せ港町に向かっている筈の海賊船に向かった
一睡もしていない薬剤師はこの間に仮眠を取り
飛行船の操作は軽く宿屋で休んだ勇者に変わった
海賊船
フワフワ ドッスン
「おっそい!!何してたんだよ!!」
「ごめんよ~ゴーレムを倒す最新兵器を持ってきたのさ」
「え!?もしかして例の奴出来た?」
「薬剤師が作った酸入りのビンだ…これをゴーレムに当てれば鎧が溶ける」
「マジか!!じゃぁ今のうちに…」
「どうしたんだい?そんなに慌てて」
「動けるゴーレムがあちこちで暴れてんだって!!」
「え!?どういう事かな?」
「機械の国の船がクラーケンに襲われてて身動き取れなくなってんのさ」
「沈没したのかい?」
「沈没はしてないけど…多分中に乗ってる人が忙しいんだと思う」
「それで暴走するゴーレムが増えてる?」
「多分そう!わたしはその酸を持ってゴーレムにぶっ掛けてくる」
「ゴーレムは何処まで進行してるのかな?」
「行ってみないと分かんないけど始まりの国にも行ってるかもしんない」
「君に任せて良いのかい?」
「何言ってんだよ!酸をぶっかけた後雷魔法使うんじゃ無いの?あんたらも一緒に来るんだよ」
「もう昼も夜も関係無しか…」
暴走したゴーレムの数は増え次第に戦いが激しさを増していった
ゴーレムの鎧を酸で溶かす事に寄って昼間の進撃はどうにか減らす事が出来たが
石になったゴーレムをそのまま放置しているといつの間に再生してしまい中々数を減らせない
結局始まりの国へ進むゴーレムの足を止めバリスタの大弓で倒すぐらいでしかまともに数を減らせなかった
そうした寝ずの籠城戦は2日続き疲労困憊の中…又夜が明ける
2日後…
「民の避難はほとんど終わった…そろそろ限界かな」
「そうね…」
「女海賊の飛行船は何処かな?見える?」
「もう海賊船の方に引き上げて行ったと思うわ」
「そうか…女海賊に今日通達するよ…始まりの国の衛兵を引かせよう」
「女海賊に?」
「そうさ…これから指揮を取るのは海賊王の娘2人だ…」
「どういう事?」
「あの2人には辺境の村に避難した人たちをまとめて貰う」
「わたし達は?」
「騎士を追ってエルフの長老の所に行く」
「なにか考えがあるのね?」
「まあね…魔王の予言を変えてみせる」
「とりあえず一旦海賊船に戻る…で良いの?」
「うん…」
海賊船
海賊王の船は港町のすぐ近海で待機していた
その他海賊船は商船を装いひとまず近くの無人島まで避難民を輸送する為何度も港町を往来する
始まりの国の惨状は人づてに港町に住む者へ伝わりやっと他人事では無い事に気付いた様だ
海賊王はその様子を望遠鏡で眺め険しい表情をしていた
「商人か…よう戻ったな?」
「うん…避難はちょっと厳しそうだね」
「そや…全員を避難させるのは大分時間が掛かりそうや…今のままやと直に暴動が起きるで?」
「船が足りないか…」
「とりあえず無人島に移送しとるが物資が全然足りんわ」
「女海賊は?」
「船長室で寝とるが…起こすと機嫌悪うなるで?」
「急ぐんだ…」ヨロヨロ
「お前も寝た方が良いんちゃうか?」
「僕は後で寝るよ」
船長室
ガチャリ バタン!
「女海賊!…起きて居たか…話がある」
「んあ?わたしは疲れてんの!!」
「君に最後のお願いさ…君のお姉さんの所に行って始まりの国の兵を引かせる様に説得して欲しい」
「オネエに?」
「もう始まりの国は3日分程度の食料しか残ってないはず…これ以上はムリだ」
「ゴーレム退治はどうすんの?」
「これ以上の消耗は出来ないよ…兵も疲れきっている」
「兵を引かせてどうするつもり?ここら辺放棄すんの?」
「辺境の村で建て直しをして欲しい…君と君のお姉さんの2人でね」
「お姉ぇと一緒か…」
「もうゴーレムの進行は始まりの国だけじゃ無い筈さ…被害が拡大する前に他の町の人も避難させないと」
「あんた達どうするつもりなのさ?」
「僕は騎士を追ってエルフの森へ行く…その後は各町で避難民を誘導するよ」
「アイツも連れてくの?」
「ん?勇者の事かい?」
「言わせんなよ!他に居ないじゃん!」
「うん…連れて行く」
「くっそ!どうすっかな…」
「勇者の事が心配かい?」
「一生アイツを守るって約束したのさ…アイツはなんかもう忘れちゃってるみたいだけど…」
「勇者は記憶が戻った感じの素振りは無いかな」
「アイツ…記憶が無くなって行くのってなんで?」
「魔女と次元の調和がどうのっていう話をしてたな…理屈は良く分からないよ」
「なんかイライラすんなぁもう!!」
「やっぱり君と勇者は何か特別な関係だったんだね?」
「うっさいな!!」
「この際ハッキリ言わせて貰う…勇者は200年の時を超えなければいけない存在だ」
「ほんなん分かってる!」
「君と結ばれる運命には無い…君には君の進む道が有るから横道に逸れないで貰いたい」
「うっせぇな!!全部知ってんだよ!!あっち行け!!」…女海賊の目から涙が零れる
「じゃぁ僕達はエルフの森へ向かうとするよ」
「もう行くの?」…背中越しに言う女海賊
「お別れをしたいならまだ時間があるけど?」
「もういい…アイツにコレ渡しといて」…腰巻きに挟み込んでいた短刀を取り出す
「君の短刀か…」
「これ一本で2人生き延びて来たのさ…忘れて欲しくないんだ」
「分かった…預かっておくよ」
「おっし!!わたしも寝てらんない!お姉ぇの所に行く!!」
「よし!僕も最後の賭けだ!!」
「商人は賭け事が弱いって僧侶に聞いたけど?」
「ハハハまいったな…でもジョーカーをいつ切るのかは僕が決める…今度こそ上手く行く」
「おっけ!次ぎ会うのは辺境の村だね?」
「そうだね…必ず戻るから…」
「あんたも体に気を付けて…」
「大丈夫さ…今までこの調子でやってきたんだ…今度も上手くいく」
「じゃ!!又会おう!!」
女海賊は勇者と別れの言葉を交わさなかった
顔を見る事も無く意識して別れを避けたんだと思う
飛行船の中で女海賊から預かった彼女の短刀を勇者に手渡した
勇者はその短刀を手にし海賊船を振り返る
これが2人の今生の別れとなった…
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