12.魔女の塔

魔女の塔の上空


「す、すごいな…噂には聞くけど一面の花か…」


「このお花はね~魔女が200年間毎日植え続けたんだって~」


「魔女の塔もすばらしいね」


「これを破壊するなんて頭どうかしてるぜ」


「わたし泣いちゃうかも~」


「塔の天辺に降りるぜ?」


「そうだね…降りるのに丁度良さそうだ」



そのまま塔の最上部に気球を下ろす


フワフワ ドッスン



「しばらくはこの塔を拠点に情報を集めようか」


「森の町が歩いて30分くらいのところにあるよ~ハチミツ酒がすごく美味しいの~」


「俺が買出しと情報収集に行って来る」


「えええええ私も行きたい~~」


「顔はフードで隠してもらうぞ?」


「ハハ良いじゃないか…男女2人の方が怪しまれにくい」


「わ~いウフフ」


「盗賊!頼みがある…僕は歴史の事が知りたい…古文書の様な物があったら買ってきて」


「歴史かヌハハ…本気で200年前の伝説を調べるつもりだな?」


「僕は本気だよ…僕の勘は結構当たるんだ」





花畑で…


僧侶の過去の記憶では始まりの国で起こった魔女騒動の後に塔が破壊されると言う


商人はその事実を確認しようとする一方で


どうにかして塔の破壊を阻止出来ないか考えていた


魔女の塔でそれが起こるのを待ちながら広い花畑で考えにふける



「♪ラ--ララ--♪ラー」


「僧侶が歌ってるその歌はなに?」


「魔女に教えて貰ったの~『愛の歌』だって~♪ラ--ララ--♪ラー」


「そういうメロディだったのか…この古文書にその歌詞と同じフレーズが載ってる…見て」


「アレ~本当だ~…魔女ってすごいね~ウフフ」


「その歌のルーツはエルフにあるらしい…エルフと人間の愛を歌った叙事詩だってさ」


「へ~…そういえばエルフの長老も聞かせてくれって言ってたなぁ…」


「ヌハハ…ロマンチックな話だぜ…俺には縁が無え」


「いや…もしもの話だ…魔女は始まりの国の牢屋でその歌を歌ったとしよう」


「ほえ?」


「キマイラがその歌を聞いて目覚めた…話が出来すぎかな?」


「鋭い…その可能性は否定できんな…キマイラはエルフの血から造られている」…囚人が言う


「まぁ考えすぎかな…それにしても歴史は色々と面白い」


「商人辞めて学者になるぅ~?ウフフ」




数日後


「魔女来ないなぁ…シュン」


「そう段取り良くはいかない様だ…まぁ此処ん所忙しかったから良い休憩だ」


「ううむ…魔女は来ないかもしれないね」


「どういう事~?」



僧侶…君が経験して来た事さ


魔女はこの塔が直に壊される事を知っている


数年後君達がここに指輪を持ってくる事も知っている


魔女はそれを止め様が無い事も分かってる筈さ


僕なら思い出の地が壊される所は見たくない



「やっぱり全部私が知ってる過去の事の通りに進んでる?」


「そうだよ…たぶん始まりの国で気球が禁止されるのも僕達が関係している」


「え!?」


「幽霊船の時、墓地から逃げる時、それから魔女の塔が壊される時も…僕達は気球で逃げる」


「そんな…」


「もっとある…君の時代では始まりの国とエルフの森で争いが活発になってると言ったね?」


「うん」


「僕がエルフの密売をやらなくなったから始まりの国は自分で狩りに行くしか無いんだ」


「まだある…魔王軍が活発になってるとも言ったね?」


「うん」


「王国から見たら不振な行動をする僕達は魔王軍にしか見えないんだよ…全部が予定通りさ」


「今居る世界はまだ過去?」


「そう…信じられないけど今はもう過去なんだ…物事が動くのはまだ先さ」


「おい!!変える事は出来ないのか?」


「きっと無理だ…僕達がキマイラを防いだとしても他の誰かが塔を壊す」


「歴史の強制力って言うのかな?…そう言うのには多分…抗えない」


「じゃぁわたし達がこの塔に居る理由って何?」


「すまない…分からないんだ…ただ導かれている様に思う」


「ううむ…何か方法は有りそうなんだがな…」


「僕達が歩んでる道はいつも選択肢が少ない…ひょっとしたら一本道かもしれない」


「どうにかして未来を変えられればな…」


「うん…僕も考えてるよ…なかなか思いつかないなぁ…」




またまた数日後…


「おう!買出しから戻ったぞ」


「何か変わった情報は無かったかい?」


「選ばれた勇者が行方不明になったという噂が出始めた」


「……」うつ向く僧侶


「僧侶心配しなくて良い…騎士は必ず生きている」


「あとな?始まりの国の衛兵達が森の町で集まり出した」


「そうか…やっぱり予定通りだね…歴史の強制力だ」


「どうする?」


「すこし考えたんだけど…衛兵隊長と取引がしたい」


「隊長と!?」


「そうさ…こっちにはコレがある」


「海賊のバッチか!!」


「洗いざらい隊長に打ち明けるとどうなると思う?」


「衛兵隊長自ら正体不明の我らの前に出てくるとは思えんがな」…囚人が会話に割り込む


「僕は未来を変えてみたいんだ…この世界は僕達の物だ」




翌朝


「おい!見ろ!!衛兵隊が来るぞ…すげぇ数だ」


「クックックたかが4人に随分な数を集めたな」


「いやこれはパフォーマンスさ…人の目が必要なんだと思う」


「パフォーマンスだと?」


「キマイラの入った戦車の圧倒的火力を他の国へ知らしめる為さ」


「そんな事の為にこの塔をぶっ壊すってか…」


「キマイラが不良品だというのは知れてはマズイんだよ」


「なるほど…通りで私がその戦車に近付こうとした時に必死だった訳だ」


「そうだね…特に終わりの国へはどうしても知られたくない事なんだよ…だからパフォーマンスさ」


「ふむ…」


「それと同時に魔女騒動を収束させたい狙いかな」


「魔女はこれをどこかで見てないかなぁ?」


「そうだね…見てるかも知れないね」



その時向こうの林からガラガラと音を立てて戦車が姿を現した


それは花畑を踏みしだき魔女の塔の目の前までやってきた



「戦車だ!!砲身がこっち向いてるぞ…やばくないか!?」盗賊は慌てだす


「気球は何分で動く?」


「1分は掛かる!」


「盗賊は気球の準備をしておいて」


「わかった!!」…盗賊は屋上に待機してある気球へ走った


「僧侶は僕と囚人から離れないでお祈りをお願い」


「は~い」





御対面


衛兵隊を率いた始まりの国衛兵隊長は塔の目の前で仁王立ちになった


他の者へ見せしめる意味もあるのだろう…彼女は大声で叫ぶ



「魔女の塔で待つ者!!そこに居る事は分かっている!!」


「出てこないとこの塔を破壊するぞ!!」



静寂が辺りを包む



(どうして知ってるのかなぁ?)


(ほら?書置きを残しちゃったからだよ)


(そっかぁ…どうするの?)


(まぁ見て居なよ…)



商人は隊長に聞こえる様に大きな声を返した



「ハハハ見つかってしまっては仕方が無い」


「なに?」…隊長は驚きの顔で見上げた


「始まりの国の衛兵隊長と少し話がしたい」


「お、お前は何者だ!?」


「僕は魔女を率いる魔王軍の側近さ」


「馬鹿な!!…そんな筈は…何が望みだ!?」



どうやら隊長はそこに誰か居るとは思って居無かった様だ


想定外で明らかに動揺している



「君と少し話がしたいだけさ」


「姿を見せろぉ!」



商人は衛兵隊長から視認出来るテラス部にその姿を見せた



「これで良いかい?高い所から済まないね」


「ここで何を待っている!!?」


「あまり大きな声で話したくないなぁ…これを持って上がってきてくれないか」



海賊のバッチを放り投げた



「一人で来ないなら取引は中止だよ」


「これは!!これを何処で?」


「隊長!!これは罠です!!一人で行ってはいけません!!」


「だまれ!!相手は数人しか居ない…10分で戻らなければ全員で突撃しろ!」


「し、しかし…」


「全員戦闘態勢で待て!!」



そう言って一人魔女の塔へ入り階段を登る


さすが判断が早いと言うか見切りが良い



「クックック隊長一人で来るとは…」


「やぁ…」商人は隊長の姿を見るなり軽く挨拶をした


「お前達…これは父のバッチだ…どういう事だ!?」


「君のお父様とは仲間なんだよ」


「こんな所に居てもらっては困る!!この塔は今から破壊する」


「それを待って欲しい…いや…塔を破壊すると歴史を変えられない」


「言っている事が分からない」


「魔女と僕達は仲間だ…海賊達、エルフも仲間だ…信じて欲しい…キマイラを止めて戦争を無くしたい」


「キマイラは戦争を無くす為の兵器だ」


「そうやってキマイラ、ドラゴンの大砲、機械のゴーレムが造られている…いずれ破綻するよ」


「……」隊長は黙ってこちらを見つめる


「キマイラは暴走したでしょう?」


「いつか暴走するのは分かっている…だからここで使わないと又被害が出る」


「他に処分する方法は無いかな?」


「国王が納得すると思うか?」


「この件は他国からの侵略を防ぐための抑止力になる…そうやって戦争を防ぐのだ」


「なるほどそういう事だったか…ではこう言うのはどうだい?」


「策が有るなら言って見ろ」


「塔を外してその破壊力を山林に向ける…これで塔は破壊せずともキマイラの威力は見せられるんじゃないかい?」


「どうしてもこの塔を残したいか…ならば私に下れ…一度牢へ入りその後逃がしてやる」


「おぉ!!イイネ!!」



その時遠くから歌声が聞こえた


♪ラ--ララ--♪ラー



「この声は魔女!!魔女が来たよ!!」


「え!?こんなタイミングで?」


「なんか衛兵が動き始めたよぅ…魔女掴まっちゃうカモ~」


「ええい!!囚人!!魔女を助けに行って!!」


「クックック忙しい事だ」


「おい待てぇ!!どうするつもりだ!?」



ヴオォォォォォォ


話の途中だったのに物事が色々動き出す


キマイラが目覚めた様だ



「まずい!!キマイラが目覚めた…なぜ急に…」隊長はきびすを返す


「くそう!どうやら思い通りに事が進まないようだね」


「塔から避難しろ!!砲身は塔に向いている!!衛兵は私が何とかする!!」



そう言って隊長はテラスをそのまま飛び降りて行った



「囚人と魔女は何処に?」


「あそこ!!囚人が衛兵と戦ってる」





花畑


突然咆哮をあげだしたキマイラの影響で衛兵達は混乱状態に陥っていた


そんな中囚人が一人魔女の所へ向かい疾走する



「だ…誰だお前は!!」


「邪魔をするなぁ!!」



衛兵を跳ね除け魔女の目の前へ



「おぉ囚人…わらわを迎えにきたのかえ?」


「魔女!付いて来い!キマイラが目覚めた!塔は破壊される」


「衛兵!!!!!!全員避難しろおぉぉぉ!!爆発するぞぉぉぉ」


「隊長…ひ、避難?」


「魔女急げ!」


「わらわは少し年を取ってしまってのぉ…走るのはしんどいのじゃ」


「ええい!!背中に乗れぇ」



その時一閃の光が塔を貫いた


ピカー チュドーーーーーン!!



「はう…塔を貫通して森が吹き飛んだ…ととと…とんでもねぇ」…呆然とする衛兵達



その光は数キロ先まで到達し…その間にある木々を一瞬で焼き払い大爆発を引き起こす



「魔女!しっかり捕まっておけよ?」


「囚人~早くぅぅぅ塔が崩れるぅぅぅ」


「僧侶…僕達も急ごう…すまないけど僕の手を引っ張ってくれないか?」


「え?また心臓が?」


「いや階段がきついんだ…僕は走れない」


「お前ら急げぇぇぇぇ!!」



ピカー チュドーーーーーン ゴゴゴゴゴゴゴ


二射目…完全にキマイラは暴走している…その光は周囲を一瞬にして地獄に変える



「衛兵!!森の火事が拡大しないように木を切り倒せ!!」


「他の者は近くの川から水を運んで来い!!」


「森の町からも助けを呼んで来い!!」


「隊長!!塔の天辺から気球が上がって行きます!!」


「アレはもう良い!魔女はもう戻って来ない…忘れろ!」


「しかし…あんな形の気球は見たことありません…早い」



ピカー チュドーーーーーン ゴゴゴゴゴゴゴ


三射目…幸いにもキマイラは戦車の中に閉じ込められて砲身の動く範囲は限られていた



(不良品のキマイラでこの火力か)


(もし完全なキマイラが暴走したら世界を滅ぼすな)



その日…隊長を始め多くの者がキマイラの力を目の当たりにし恐怖した




気球


「危機一髪だな…」


「わらわの塔が…」


「魔女…塔が破壊されるのは分かっていたよね?」


「知っては居ったがいつ破壊されるかは聞いて居らなんだ」


「あの塔の地下には愛しき人の墓が有るのじゃが…」


「墓?…そうか…地下があったんだ」


「塔は崩れても地下は無事そうだね~」


「ところでキマイラの火力はとんでもねぇな…あんなんどうやって倒すのよ」


「不良品で数分しか動かない筈だけど…」


「完全なキマイラが造られれば世界は破滅する」…と囚人


「こりゃなんとしても阻止せんといかんな」


「キマイラのブレスが収まった様だ…塔が崩れて行く…」


「見とうない…わらわの記憶が崩れて行く様じゃ…」


「ふぇ~ん…魔女ぉだっこしても良い?」




その後気球は一旦進路を西へ向かう


安定飛行に入った所で商人達は魔女に魔王島での出来事を聞いた



「わらわの愛しき人はまだ生きて居る…2人で小船に乗って逃げたのじゃ」


「それを見送った後に幽霊船に乗る始まりの国の者どもに捕らえられてしもうたのじゃ」


「そうか…やっぱり指輪は今騎士が持っているのか」


「指輪が無いとわらわは普通よりも早く年を取る…このままじゃと2年程で朽ちてしまうのぅ」


「魔女に指輪は帰ってくるよ~ウフフ返す約束とか言ってたもん」


「返しておくれ…わらわはまだ愛しき人に会うておらん」


「わたしに言われてもなぁ…」


「いや大丈夫さ…歴史の強制力で指輪は必ず魔女の手に戻る」


「して…この後どこに向かうつもりじゃ?」


「砂漠の町を経由して中立の国に行こうかと…」


「わらわをエルフの森に下ろして行ってもらえんか?」


「良いけどどうして?」


「エルフの長老にエルフの娘を守れなんだ事を伝えねばならん」


「そうか…大事なことだね」


「エルフの森は安全じゃ…指輪が帰るまでは森で静かにして居った方が良かろう」


「その方が良いね」


「エルフの森の中は時間の流れがゆっくりじゃで年を取り難いのも有るのじゃ」


「わかったよ」


「ねぇねぇ魔女?あの歌の事なんだけど…エルフと人間との愛の歌って本当~?」


「あの歌はエルフの長老がわらわの為に作った歌じゃよ…エルフの長老はわらわを愛しておった」


「え!!?三角関係だったんだ~ウフフ」


「ちょっと待って…エルフの長老は何歳になるのかな?」


「わらわと同じ位かのぅ…始めて会うた時の年齢を知らんで何とも言えん」


「魔女の指輪で命を吸う時はどうすれば良いの?」


「数年前を思い出すだけじゃ…」


「200年分命を吸うとしたら200年前を思い出す必要がある?」


「そういう事になるのぅ…なぜそんな事を聞くんじゃ?」


「い、いや…聞いてみただけだよ」




エルフの森付近


「魔女?一人で大丈夫?危なくない~?」


「わらわの事は心配せんでも良い。直にエルフが迎えに来るじゃろぅ」


「それじゃぁ魔女…体に気をつけて…必ず迎えに来るよ」


「愛しき人の事が分かったら迎えに来ておくれや…エルフの長老の所におるでのぅ」


「うん約束するよ」


「そなたらの方こそ無茶をするでないぞ?」


「ハハハ僕は少し無茶をするかもね」


「何か考えがあるのじゃな?」


「そうだよ…必ず世界を元に戻す…いや変えてみせる」


「良い心意気じゃのぅ」


「さぁそろそろ行くぞ!みんな乗れぇ!」


「じゃぁ~またね~」…手を振る僧侶




一行は魔女を降ろし一路砂漠の町へ向かう




「ひとまず砂漠の町で身を落ち着ける…でいいのか?」


「うん…」


「商人なんか元気ない?」


「いや…考え事さ」


「なんだ?言って見ろ」


「僧侶…回復魔法をかけてもらえないかい?」


「良いよ~どこか痛いの~?」


「ちょっとね…確かめたい事があるんだ」


「行くよ~回復魔法!」優しい光が体に染み入る


「やっぱりそうか…」


「どうしたの???」


「僧侶…君はまだ自分の凄さに気が付いていないね」


「え!??なに?わたしってどう凄い?」


「君の回復魔法は体の傷を癒すだけじゃないんだ…心も癒す力を持っている」


「え?え?え?どういう事?」


「思い出してごらん…僕や盗賊や囚人…エルフの娘も君の回復魔法で変わってるんだよ」


「わたしの?」


「罪や復讐の意識を安らげて希望が湧く意識に君の回復魔法が変えてるんだ」


「ウフフ~ほめられるってうれしいなぁ~うふふのふ~♪」


「僕は人間だからちょっとした事で諦めたり疑ったり良くない方向へ心が流れる」


「それはみんな同じじゃないの~?」


「君の回復魔法はそういう良くない方向を正す力があるんだ」


「200年前の魔王が掛けた呪いはその負の感情の事かもな」


「するどいね…きっとそうに違いない…僕達の心に魔王が住んでいる…それを考えていたのさ」


「ぬはは…ってことはこの世はすでに魔王に支配されてるな」


「そう言い換える事が出来るね…魔王の心に支配されて滅亡の道を歩んでる」


「まぁでも考えすぎな気もするがな」


「いや…あながち外しては居ない…監獄に居る間は復讐の心が芽生えてくる」


「そういう心こそ魔王の正体かもしれない…」


「ん~む…僧侶がすべての人間に回復魔法を掛ければ良いのか?」


「キーワードは200年前さ…ともあれ僕はもっと歴史の勉強が必要かなハハ」




砂漠の町


一行は世界各地を回り沙漠の町に帰って来た形になる


この町は商人と盗賊にとって拠点ともいえる場所だった



「さぁ!久しぶりの砂漠の町だ」


「わたしね~騎士と過ごした宿屋に泊まりたいなぁ~」


「かまわないよ…この町は危険に見えるけど本当は安全さ」


「はぁぁぁ~あの頃はわたし幸せだったなぁ~」


「騎士も大変だったろうな…」


「ん?そんな事ないと思う~ウフフだってわたし達夫婦だもん」


「いつの間にそんな事になってんだ?」


「内緒…」


「まぁ毎晩やりまくってたらそうなるわな…」


「え!!?もしかして見てたの?」僧侶は慌てている


「ウソだバーカ」


「アハハ!さて!仕事が待ってる…僕は商人ギルドに顔を出して来るよ」


「囚人!荷物を下ろすのを手伝ってくれ…少し教えたいこともある」


「かまわんが雑用はやらんぞ」


「雑用じゃねぇ大事な事だ」


「じゃあ私は宿屋で軽く水浴びしてから商人ギルドに行くね~」


「ゆっくりで良いからね」




宿屋


僧侶は以前使った事のある部屋を指定して宿泊する事にした


一人で宿泊すると寂しさが身に染みる



---あの時と変わらないお部屋---


---騎士が掛けてた椅子---


---騎士と一緒に寝たベット---


---この部屋で騎士と一緒に過ごした---


---魔女もこうやって愛しき人の香りを探したのかな---


---だっこしたい---


---わたし騎士を愛してる---


---何処に居るの?


---さみしいよぅ---






翌日_商人ギルド


建屋内では相変わらず商談で沢山の人が集って居た


その一角で商人と盗賊が話し合いをしている



「やほ~」


「あぁ…俺は俺のやり方で騎士を救う」


「騎士!!?何の話~?」


「盗賊が一人で旅に出るって…」


「え!?何処に?」


「確か騎士の故郷は向こうの大陸の辺境の村だったな?」


「え?あ…うん。そう言ってた…どうするの?」


「コレだ…ドラゴンの涙だ」…そう言って騎士が持って居た豆を取り出した


「こいつを飲ませれば騎士はそう簡単には死なない」


「ドラゴンの耐性を付けるのか…暑さ寒さ飢えに耐性が出来る」


「わたしも連れて行って!!」


「それはダメだ…僧侶は商人を守ってくれ…囚人にはあらかた仕事を教えておいた」


「シュン…」


「大丈夫だ!僧侶…俺は昔の騎士にドラゴンの涙を飲ませたら必ず帰ってくる」


「ふむ…確かに今騎士の行方が分からない以上その方法が効果的かもしれない」


「馬を一頭借りていくぜ!!早速辺境の村に向かう」


「分かったよ…合流は中立の国で良いかな?」


「おう!!商人!!お前もお前のやり方で頑張れ」


「ハハ影武者の癖に対等に口を利くじゃないか」


「これからは闇商人の影武者は囚人と僧侶だ」


「ねぇ…お願いがあるの」


「なんだ?」


「若い騎士に会ったら『わたしを置いていかないで』って伝えて」


「ヌハハ分かった必ず伝えてやる」


「じゃぁ盗賊!気をつけて!」


「おう!!行ってくるわ!!」



---結局盗賊が騎士の師匠になるのもわたしの知ってる過去の通りに進んでいく---




その後…


商人は今後の事を軽く説明してくれた



「しばらくは商隊が中心になるよ」


「僕の考えを先に言っておく」


「結論から言うよ。エルフ、ドラゴン、クラーケン、海賊を仲間にする」


「やり方はまず中立の国で物流を僕がコントロールする」


「物流さえストップしてしまえばキマイラもゴーレムも造れない」


「そして海賊にはこれからもっと力をつけてもらう」


「その後ドラゴンと取引をしたい…ドラゴンの子供を解放するのを条件にね」


「海賊にはその時発生する終わりの国の難民を避難させてもらう」


「その為には大量の船が必要なんだ」


「次にエルフを…」



---わたしたちはいつの間にか魔王軍になってる---


---何と戦うのかな---

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