10.幽霊船
港町
以前と変わらず多くの船が出入りしている
スループ船は難なく桟橋に付けることが出来た
「よっし!着いた!今日は陸で休憩だ」
「ただいま~♪ウフフ」
「すまんが全員フードで顔を隠して行動してくれぇ」
「え~どうして~?」
「前来た時とは状況が変わってる…闇商人不在で物流が滞っててな…略奪が増えてんのよ」
「僕の不在で流通品の物価がすごく上がってると思うよ」
「その通りだ…物によっては前の20倍近い」
「旅商人が一番襲われやすいかな…これから皆一緒に行動しよう」
「教会に行きたかったなぁ~」
「済まない…今回はガマンしておくれ」
宿屋
「みんな一息つけたかい?」
「ふううぅぅぅおなかいっぱ~い」
「それにしても食材が随分偏ってるな…肉が無え…」
「しょうがないね…流してた格安の肉も僕が流さないと止まる」
「商人って色んな物を流通させてたんだね~」
「タダ同然で流通させてたから本来の価格に戻ったっていう言い方もあるけどね」
「さて…これからどうする?酒場行くか?」
「あぁ皆で行こう」
「わ~い」
「2~3杯だけの約束ね」
「は~い」
酒場
「いらっしゃいませ。4名様ですか?」
「カウンターで頼む。ハチミツ酒を4つ持ってきてくれ」
「かしこまりました」
商人はカウンターに座るなり酒場のマスターに話しかける
「マスター…最近の話題は何か無いかな?」
「ん~最近は景気が悪くてね~良い情報も入って来ないんですよ」
「始まりの国周辺では麻薬の需要ないのかな?」
「お客さんそんな話を人前でするのは…誰かに聞かれるとお縄かけられますよ?」
「これを捌きたいんだ…」
ドサリと粉の入った袋をテーブルに乗せた
「こ、これは…こんなに沢山」
「売人に会いたいんだ…知ってるよね?」
「表の街道にいるアクセサリー商人が知ってると思います…」
「ハハありがとう!景気良くなると良いねぇ」ジャラリ
「金貨が多い様ですが?」
「わかってるでしょう?口止めも含めたお礼だよ」
「あ、ありがとう御座います!」
「そうだ!お土産にハチミツ酒を少し貰えるかな?」
「はい!よろこんで」
表街道
フードを深く被った4人はハチミツ酒を飲みながら歩いて居た
特に盗賊は歩く素振りが近寄れない雰囲気を持って居る…誰もその4人に何かしようとは思わない
「僧侶。ゆっくり飲めなくてごめんよ」
「いいの~歩きながらでも楽し~いウフフ」
「ここからは盗賊に頼むよ」
「わかったまかせろ…多分顔見知りだ」
「あそこのアクセサリー商人だよ」
アクセサリーを売るその人は割と顔立ちの良い女性だった
「さぁ!ハチミツ酒持って来たぞ飲め!」
「!!?ハッ…あなた…」
「乾杯しようじゃ無えか」
「闇商人…これはどういう…」
「おいおいそんな事を声を出して言うなよ」
「ブツを捌きに来たの?」
「まぁ…そんな所だ」
「条件は?」
「1袋目:幽霊船の情報 2袋目:海賊と王国の情報 3袋目:魔女の情報」
「1袋目しか情報を持っていない」
「まぁ良い…他の情報はまた仕入れといてくれ」
「幽霊船については少しだけ情報がある…」
あの船の乗組員は全員薬漬けの始まりの国の衛兵
幽霊船に偽装してヤバイ物を運んでいるらしいわ
今は薬の流通があなた達のせいで止まってる
直に薬が切れて暴動が起きるのを王国が恐れているわ
「居場所はわかるか?」
「それは分からないわ…薬の到着を待っているから近くに居るとは思う」
「そうか…十分な情報だ…ほら」ドサリと粉の入った袋を置いた
「こ、これからどうやって連絡を取れば良いの?中立の国へ行っても…」
「こちらから連絡を取る…十分な情報があればの話だがな」
「わ、わかったわ…露店しながら待ってる」
「僧侶!」
「ふぁ~い」
「アクセサリー好きなもの一つ選んで良いぞ」
「わ~いウフフ」
そのやり取りは誰かに見られて居れば密売に見えただろう
深くフードを被った4人はそういう雰囲気を持って居るのだから
宿屋
「十分な情報は入らなかったけど幽霊船の情報は大きいね」
「そうだな…乗組員が薬漬けの人間だと判った分動きやすい」
「そうと分かったら明日の早朝に探しに出ようか」
「ぐががすぴーぐががすぴー」ベッドに横になるなり寝た僧侶
「僧侶はのん気だな…緊張の欠片も無えな…」
「ハハ良いじゃないか。でも毎日お祈りは欠かしてないよ」
「囚人!やっと新鮮な血にありつけるな」
「フン!人を魔物扱いするな。俺は今酒を楽しんでいる」グビグビ
「死人でも酔えるのかい?」
「少しは気が楽になる…」
「そりゃ良かった」
翌朝
「むにゃ~ねも~い」
「もう出発するぞ早く気球に乗れ!!」
「あれって騎士じゃないか?」
「え!!どこどこどこ?」
「おぉ~そりゃ良い手だヌハハ」
「もう!!」
「目ぇ覚めたか?行くぞ出発だ!!」
まだ日が登る前に4人を乗せて気球は港町を離れた…
気球
ヒュゥゥゥ ギシギシ
「ねぇ~何してるの~?」
「船と同じ様な帆を張ってんのよ…これで風を受けて進むスピードが上がると思うんだ」
「へぇ~そういえば機械の国の気球はみんな羽がついてたね~」
「アレは軍事用で一般では買えないらしい」
「それをマネてみたんだ。船と同じなら横風でスピードが上がる筈」
「でも帆が小さいね」
「風の魔石だけで進むよりはマシだろう」
「ハハ早くなったかどうかは空に居ると良くわからないね」
「んむ…だが操作は船の帆と同じだ…進んでいる…と思う」
「まぁ幽霊船が見つかるまではゆっくりしていよう」
後日
「僧侶?何してるんだい?」
「騎士が持ってた貝殻の音を聞いてるの~」
「何か聞こえるかい?」
「ううん…な~んにも」
「僕にも貸してくれるかな?」
「ほ~い」
商人はその貝殻を耳に当ててみた
「不思議な感覚だね…」
「何か聞こえる?」
「う~ん砂の音みたいな…言い表しにくいね」
「騎士はその貝殻を聞いて何を思ってたのかな~…なんてねウフフ」
「貸して見ろ…俺には海の音にしか聞こえんが…ん?」
「何か聞こえる~?」
「こりゃ貝殻に何か細工がしてるあるな」
「え?…もしかして貝殻に何かエンチャントが掛かってる?」
「そうかもしれん」
「ハハ凄いじゃないか…エンチャントが出来るのはエルフしか居ない」
「ねぇねぇ何の効果かなぁ~?」
「さぁな?…でもこりゃ高く売れる」
「多分…知識のエンチャントだよ…ホラ耳に当てたら考え事をしてしまう」
「私も賢くなりた~い!!もっと聞く~」
これがエルフの娘が騎士に送った物
音を聞きその中で空間の繋がりを知る…世界を知る…己を知る
エルフが使う空気の会話…その一歩目だった
1週間後
「ねぇねぇ!アレ幽霊船じゃない?」
「おぉ!!やっと見つけたか!!」
「高度を上げて真上から様子を見よう」
「囚人!!起きろ!!仕事が近いぞ!!」
「私は寝てなぞ居ない…この体になってからはな」
気球は静かに幽霊船の真上へ向かって移動した
「やっぱり気球が大分スピードアップしてるね」
「お前もそう思うか!?上空に行けば海よりも良い風に乗れる」
「幽霊船は動いてないみた~い」
「真昼間だが…どうする?」
「囚人!行けるかい?」
「もちろんだ…後で傷だけは僧侶の回復で頼む」
「ヌハハ死人は自力で傷は塞がらんか?」
「だまれ」
「真上から高度下げるぞ」
「囚人!全員ヤルのは避けて欲しい。情報を聞きだせる相手を残して」
「分かっている」
「甲板には誰も居ないぞ?囚人が飛び降りたら安全高度まで離脱する」
「もう少し寄ったら飛ぶぞ?」
囚人は飛び降りて幽霊船の帆下駄に掴まった
怪我をすることなく上手く乗り移った様だ
幽霊船
ドサ!! ガタガタ!!
その着地は静かだったとは言えない
「な、なんの音だ?」
「お前見て来い」
「薬が切れてやる気がでねぇ」
「海賊船が来たのかも知れん…見て来い」
乗って居る兵隊は明らかに士気が低い
「ぎゃああああ」
「だ、誰だお前は!!」
「死神だ…」…そう言って兵隊の首から溢れ出る生き血をゴクゴクと飲む
「敵だぁ!!敵がきたぞおおおお!!」
「クックック…新鮮な生き血だ…力がみなぎる」
「1人だ!!囲めぇ!!」
「死にたい奴はどいつだ?」
囚人の剣は一振りで兵隊の喉を欠き切る
飛び散る生き血を手ですくい口へ流し込むその姿は誰の眼にも死神に映っただろう
「な、何だこいつ…」
兵隊達は一斉に囚人に襲い掛るが
切りつけても何事も無く囚人は怯まない
そもそも囚人の剣裁きは一介の兵隊とは訳が違う
まさに鬼人の如くその場をあっという間に制圧した
「バ、バケモノだぁ!!ひぃぃぃぃ」
「この船は俺が頂く!!命が惜しい奴は自分で牢に入れ!!」
「たたたた助けてくれぇ…」
「逃げる者は容赦無く殺す!!」
「頼むぅぅ殺さないでくれぇぇ」
「早く牢に入れ!!全員だ!!」
「あいつ…死体から血を吸っていやがる…本物の魔物だ」
「殺されたいのか?」
最後の一人が牢に入った所で鍵を掛けた
ガチャン!!
「全員牢に入ったな…無駄口を叩いたやつは容赦なく殺す!」
「見ていろ…こうなると言う事をその眼に焼き付けておけ!」
囚人は瀕死で横たわっている兵隊の首を切り取りしたたり落ちる生き血を口に流し込んだ
「ひぃぃぃぃ…」ガクガク ブルブル
あまりに凄惨なそれを見た者は恐怖しその場でへたり込む
復讐の心は恐怖ですべて洗い流された
上空の気球では…
「幽霊船の占拠は終わった様だな…」
「囚人が死体を海へ片付けてるね」
「思ったより少ない…」
「降伏したかな…囚人もなかなかやる」
「甲板に降りるぞ」
「後で帆が開けなくなるよ…船尾楼の方が良さそう」
「分かった…」
「僧侶!君はフードを深くかぶって顔を隠して」
「は~い」
「それから僕が許可するまで一言もしゃべらないでね」
「オッケーウフフ」
幽霊船
この船はガレオン船で船尾楼の上に広いスペースがある
気球はその一番良いスペースに着陸させた
フワフワ ドッスン
「よし!降りて良い!僧侶は商人の後に続け」
「囚人!上手くいったみたいだね」
「20人程牢に入れた。こいつは牢の鍵だ」
「船長らしき人は?」
「残念だが抵抗してきたから殺した」
「僧侶!囚人に回復魔法を掛けてあげて」
「回復魔法!」
「死人にも回復魔法が効くとは」
「だまれ」
「よし!片づけが終わったら積荷室へ行こう」
「私は少し血を浴び過ぎた…海水で流して来るから少し待て」
「残ってる死体はまだあるか?」
「片付けた…床に飛び散った血を流しておかないと後で匂うぞ?」
「おう!流しとくわ」
積荷室
そこには長期航海に必要な物資がびっしりと積まれて居た
ひときわ目立つのが大きな鉄の牢…兵隊達はその中に押し込められている
(大きな声は出さないで)商人は小声で言った
(えらくでかい牢だな…キマイラを運ぶ牢か?)
(恐らくそうだろう…)
(騎士達は居なかったのかい?)
(私が見た範囲では居ない)
(他の積荷は?)
(この幽霊船は恐らく積荷待ちだ…ほとんどが空だ)
(なぬ!?積んで有る箱は全部空だってか?」
(まぁ後で良く調べる事だ)
(ふむ…チャンスだね…海賊を待っていれば良い)
(あの捕らえた兵隊達はどうする?)
(海賊との取引が終わったら解放する)
(俺が情報聞きに行って来る)
(頼むよ)
盗賊は深くフードを被ったままいつもの風体で牢に近付いた
兵隊達は怯え切っている
「聞きたい事が有る…位の高いものは前に出ろ」
「この船がエルフや魔物…それからキマイラを運搬している事は分かっている」
「魔王島から連れてきた3人の行方を言え」
「知らんと言うなら全員ここで死んでもらうぞ!!」
盗賊は床に落ちていた剣を拾い上げ兵隊の一人に突き刺した
「ぎゃあああ」
「では話せ!!」
「たたた助けてくれ…」
「命乞いは聞きたくない!知っている事を全部話せ」
「わ、分かった…魔王島から連れて来た女は始まりの国へ送った…」
「残りの2人はどこだ?」
「の、残りの2人はこの船には乗っていない…魔王島から逃げたらしい」
「死んでもらおう…」
「まままま待ってくれ…本当にこの船には乗っていない…本当だ!!」
「では質問を変える…キマイラはどこに行った?」
「キマイラは不良品のまま始まりの国へ…」
「不良品とは何だ?」
「キマイラを目覚めさせて数分しか動かないらしい…」
「どんな形をしている?」
「鉄の戦車の中で寝ている」
商人が話しに割入る
「十分だ!」
「命が惜しかったらおとなしくしていろ…」
「お、お前達は一体…本物の魔王軍なのか?」
「だまれ!」
「ハハ良いねぇ…帰ったらそう伝えると良い…」
船長室
「この船は新型の軍用艦だな…幽霊船に偽装してるが装備が半端ない」
「ハハ真上からは無防備だったね…対艦船特化かな」
「おい!これを見ろ…すげぇ」
「これは…すごい収穫だよ…裏航路が全部書いてある」
「魔王島、終わりの国、機械の国への裏航路だな」
「始まりの国が各地へ魔物を運んでいるのは事実なようだな」
「この事実を掴んだ以上タダでは済まんな…一生追われそうだ」
「僕達の顔が割れたら一生追われる身だね」
「んむ…まだ顔が割れてないのが幸いか」
「全員殺せば済む話しだが?」
「まぁまぁ…殺すのが目的じゃない」
「ねぇねぇ!!海賊船みたいのが近づいてくるよ~」
「本当か!?ちぃと早いな…」
「よし!僧侶にお願いがある」
「なぁに~?」
「僕と盗賊から離れないで例の精霊の加護を祈ってて欲しいんだ」
「何するの~?」
「海賊と取引をする…これはとても危ない…君の力が必要だ」
「わかった~」
「囚人!僕らはあまり動けないから有事のときは囚人が動いて」
「分かっている」
甲板
ガコン! ガコン!
後方から接近して来た海賊船は並走する形で接弦した
(接舷した…慣れてるな…ロープを掛ける場所にも迷いが無え)
(盗賊!こっちに乗り移るのは少数にしろと言って)
(わかってる)
(僧侶…離れないでね…加護の祈りをお願い)
(オッケ~ウフフ)
一人の海賊が乗り込んで来た
「遅くなっちまったぁ!!船長は居るかぁ!!?」
「物資は何だ!?」
「誰だお前ぇぇ!?」
「質問に答えろ!!」
「薬と補給物資だ!!エルフは居ねぇ!!」
「海賊王は居るか!?」
「この船には乗ってねぇ!!」
「薬だけ降ろして海賊王を呼べ!!」
「補給物資はいらねぇのか~!?」
「良いから早くしろぉ!!」
「おい!お前ら薬の入った箱だけ移せ!!あと照明弾を撃て!!」
空へ向けて閃光弾が放たれた
ヒュルルルルル ピカーーーーーー
「これで海賊王が直に来る!!」
「ではさっさと行けぇ!!」
「んああ!!?おい金貨はどうなってる!!」
「金貨は後で海賊王にまとめて払う!!」
「おい!!ざけんなぁ!!こっちに金貨回ってこねぇだろ!!」
(まずいな…)商人は耳打ちした
「わかった…ひとまず薬は後で良い!!今は海賊王と話をするのが先だ!!」
「なんかいつもと違うじゃねぇか…おい!お前は誰だ!?」
「やるのか?」囚人はスラリと剣を抜く
「待て!!取引の最中だ」
「おいおい物騒じゃねぇか…いつもアブネェ物運ばせておいて金貨がねぇじゃすまねぇぞ?」
「どてっぱらに穴明けられたい様だな…囚人!!大砲主に伝令しろ!!」
小声で(囚人!ハッタリだハッタリ)
「わかった…」
「待て待て…分かった…おい!お前ら船を幽霊船の前に付けろ!!」
「始めからそうしてれば良い…」
「だがこれで逃げっこ無しだ…幽霊船の前方に大砲は無いだろう?ウハハ」
(状況は変わってないな…)商人はつぶやく
「金貨はしっかり払ってもらうぜぇ!!」
少しの間…
(ヒヤヒヤするよぅ…)
(大丈夫だよ)
(俺も口が渇いた…)
(てかよ?この船の積荷にどっか大量の金貨積んでるんじゃ無えか?)
(そうだね…荷を調べる時間が無かった)
(探して来るか?)
(それは後にしよう…もう一隻こっちに来てる)
(あれが海賊王が乗る船か…)
(僧侶?海賊王の娘の短刀を貸して)
(ほい)
(前方に行った海賊船からもこっちを監視してるね)
(だな?あの位置だといつでも乗り込まれるぜ?)
(うん…下手に動けない)
(まぁ…囚人が居りゃ余程どうとでもなるか…)
(アテにし過ぎるな…私も首が落とされてしまっては何も出来なくなる)
(うほー怖い話だ…)
(静かに…向こうの船が接舷する…)
海賊王の船
その船は大きくは無いがど派手な装飾があちこちに施されている
何に使うか分からない器具が目を引く謎の多い船だ
ガコン! ガコン!
(海賊王の船は割りと小さい船なんだな…)
(速度重視なんだろうね…賢いといえば賢い)
(出てきたぞ…手足が義手義足の奴だな?)
(噂では聞くけど実際見るのは初めてだよ)
(取り巻きがすげぇな…筋肉の塊じゃ無えか)
(ドワーフだよ…)
海賊王と呼ばれるど派手なドワーフが姿を現した
「わいを呼ぶからには半端な理由じゃないやろうなぁ!!」
「海賊王と取引がしたい!!」
「誰やお前は!!?顔を見せんと取引せぇちゅうんかい!!?」
「大砲がどてっぱらに向いてるのを忘れたのか!?」
「わっはっは…お前らぁ!!全員幽霊船に乗り込め!!」
「待て!!少数で来い!!」
「お前ら幽霊船に乗っとる人数に比べりゃ少数だわ!!全員乗れぇ!!」
「うおおおおおぉぉぉ!!」
(まぁ…しょうがない)商人はある程度想定して居た…
商人は1歩前に出た
「動くな!!!!これが何だか分かるかい?」…そう言って拾った短刀を掲げた
「短刀?…まさかワイの娘に何かしたんちゃうやろうな?」
「この場合察しが良いと言うのかな?」
「お前らぁ!!乗り込むのはちょっと待てぃ!!」
海賊達はピタリと止まった
「海賊王と1対1で取引がしたい」
「お前は何者や?さては闇商人やな!?」
「ハハこの船は僕が頂いたんだ」
「なんやとぅ!!?」
「頭ぁ!!4人しか居ませんぜ!?」
「お前らぁ!!あの4人を捕まえろぉ!!」
「うおおおおおおぉぉぉ!!」
「ヤレヤレ…囚人!殺さないように頼む!」
囚人は無言で迫りくる海賊達をなぎ倒す
カーン カーン キーン!
剣技で世界一とうたわれたその技は未だ健在だった
「頭ぁ!!あの3人に傷一つ付けれやせん!!」
「バケモノが居る!!切っても死なねぇ!!」
「ぐぁぁぁ!!」
「どうなってんだぁぁぁ!!」
商人は静かに口を開く
「そろそろ止めにしないかい?」
「はぁはぁ…おまんら何が望みや!?」
「僕は取引がしたいだけさ」
「近付くと切るぞ!?」
「お前らぁ!!!やめい!!!」
海賊王の一喝でピタリと戦闘が止まる
「さて取引しよう」
「海賊王の娘2人の内1人は始まりの国の衛兵隊長…そしてもう1人は…」そう言って短刀を見せる
「それをどうしよった?」
「取引に応じたと見ていいのかな?」
「話による…娘に何かしたんやったら総力でおまんらをぶちのめしたるわ」
海賊王から覇気を感じた
「まず人を払ってもらおうか…聞かれたくない話もあるからね」
「お前ら!!海賊船に戻れ!!倒れてる奴は引きずって行けぇ!!」
「頭ぁ!!良いんですか!?」
「何度も言わせるな!!馬鹿どもぉ!!」
海賊王は一人残った
「さて…条件は簡単さ…同志になってもらう」
「なんやとぅ!?」
「多分僕達の利害は一致してる…海賊は物資が欲しい」
「そして…王国の秘密を探っている…違うかい?」
「だったらなんやっちゅうんや」
「ハハその顔は当たりだね」
「娘は無事なんやろうな?」
「選ばれた勇者達の仲間として娘を紛れ込ませたね?」
「生きておるんか!?」
「さぁね…まだ取引の最中だよ…同志になるかならないか?」
「どないしておまんらを信用せいちゅうねん」
「はい!この短刀を返す」
「ま、間違いない…下の娘の短刀や」
「さぁここからだ…僕はまだ海賊王から決定的な情報を得ていない」
「娘は無事なんか?」
「さぁね?ズバリ聞く。海賊は王国をどうするつもりかな?答えによっては娘の事と僕達の目的を話す」
「海賊は本物の勇者を保護し今の王国を潰すつもりや…」
「フハハハハそれで薬をばら撒いてる訳かハハハハハ」
「次はお前の番や…娘はどこにおる?」
「盗賊!!例の海図を持ってきて!!」
「おう!」
「海図?」
「娘はきっと生きている。勇者達と魔王島へ行った後小舟で逃げた。海図の印の場所で小舟を発見した」
「ほらよ!!」盗賊は記を打った海図を放り投げた バサッ
「この場所は商船の航路や!」
「そう!!たぶん商船に拾われている筈…ほんの1週間前だよ」
「ほんまかぁ…」
「もう少し話したい…船長室に来て欲しい」
船長室
「娘さんは恐らく商船に拾われて何処かに身を隠して居ると思われる」
「きっとお金も何も持って居ない…だから直に海賊とコンタクトを取ると思うんだ」
「それで娘さんが戻って来たら話が聞きたい…僕達も不明になった仲間を探しているのさ」
「話は大体分かったで…ところでこの幽霊船はどないするんや?」
「ハハ僕はこんなお荷物は要らないよ。海賊が好きに使えばいい」
「そらあかん!上の娘が始まりの国の衛兵隊長や。捕らわれの身と同じ様なもんや」
「…ならこうしよう。僕達魔王軍から海賊が幽霊船を取り戻した事にすればいい」
「おお!!ええなぁ」
「この船には武器が沢山積んである。全部海賊船に積み替えてしまおう」
「わっはっはボロ儲けやなぁ!!」
「幽霊船に乗ってた衛兵は牢に入れてある。これが牢の鍵だよ」
「これで王国に対しては義を尽くした事になるわけやな?。たんまり金せびれるなぁ」
「じゃぁ僕達はこれで引き上げるよ」
「裏航路の海図は貰っていくぜぇ!」
「あ…そうだ…海賊王にもう一つ。機械の国で作っているゴーレムの話は知ってるかな?」
「ゴーレムやと?」
「知らない様だね…質問を変える。トロールが何処に運ばれてるか知ってるかな?」
「あぁトロールは馬鹿でかい船に積まれとる。あの馬鹿でかい船で何か作っとるらしいが…」
「なるほど…ありがとう」
「ゴーレムちゅうもんを作っとるんか?」
「ただの噂だよ…気にしなくて良い」
「じゃぁわいらは今からこの船の武器をあさってくるわ」
「また連絡するよ」
「そうや!!これを持って行け…海賊のバッチや…これを見せれば海賊に襲われんで済む」
「助かるよ」
「ほんじゃぁ…うまくヤレな?」
甲板
「おっしゃぁ!!お前らぁ!!幽霊船から武器全部移し替えろぉぉ!!」
「うおぉぉぉぉ!!頭ぁ!!金目の物取っていーっすか!!?」
「好きにしろぉぉぉ!!海賊のルールに乗っ取り完全に山分けやぁぁ!!」
「但し!!積荷室の牢には近づくなぁ!!」
「ひゃっほ~ぅ!!」
「照明弾上げて仲間を集めろぉ~~!!」
ヒュルルルルル~ ピカーーーー!!
「じゃぁ僕達はこれで引き上げる…あとは海賊王に任せた」
「任せとけぇ!!」
「薬の箱だけは貰っていくぜ」
「好きにせぇ!!そんなもんワイらには要らん」
こうして商人達は海賊達を残し気球で帰路についた
気球
僧侶はションボリした様子で言った
「結局騎士たちの行方は分からなかったね…」
「まぁそうしょげるな…一応海賊王と繋がり持てた訳だしな?」
「そうだね…海賊王の娘が何か知ってるかも知れない」
「魔王島から小舟を使って逃げた2人って…海賊王の娘ともう一人は誰かなぁ…」
「う~ん…状況から察するに騎士とは考えにくいね」
「何処に行っちゃったんだろう…」
「あとは…魔女を追うしかないね…魔女が事情を知ってる可能性が高い」
「始まりの国か…」
「魔女が幽霊船に乗ってたって事は魔王島で過去に戻ったのは間違いなさそうだね」
「ふむ…エルフの娘も何処行ったか分からんな」
「多分一緒なんだと思う…魔女は神隠しが出来るから捜索が厄介なのさ」
「心配だなぁ…」
「きっと大丈夫さ…僕の情報網で必ず探してあげる」
「うん」
「取りあえず魔女を追おう…港町へ戻るよ」
一行は再び港町へ戻った…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます