4.砂漠の町
砂漠の町_宿屋
すでに日は落ち怪しげな月が辺りを照らして居た
宿屋前の通りは治安が良いとはとても言えない
物乞い…怪しい男達がしきりに行き交うその場所で
僧侶は一人…騎士が来るのを待って居た
「お客様…お連れ様をお待ちですか?」
「うん…」
「今日はもう遅いのでお部屋の方でお待ち下さい」
「でも心配だから…」
「お連れ様がお見えになりましたらお部屋の方までご案内しますので」
「落ち着かないの…」
「僧侶や…ちと休めい…」
「こんなに心がソワソワするの…始めて…なんか心の行き場が無いの」
「うむ…それは分かるが主が此処に居ては危険が有るのじゃ…部屋に入って待てば良い」
「分かった…」トボトボと部屋に入る僧侶
翌日
騎士は足を引きずりながら宿屋へ訪れた
「騎士?騎士ぃ?」…僧侶は安堵の表情で騎士に駆け寄った
「あ、あぁ僧侶か…ごめんよ心配掛けて」
「ううん…大丈夫?ひどい傷…」
「大丈夫さ…それよりエルフの娘を助けられなかった」
「店主さ~ん!お願い手伝って~!」
「おぉぅ…こりゃ大変だ…早く部屋の方へ」
騎士は宿屋の店主に背負われて部屋の方に連れられた
「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」
「ありがとう僧侶…もう大丈夫だよ」
「無事でよかったのぅ…」
「うぇ…うぇっ…ふぇ~ん」
「あぁ心配かけて済まない」
「それでエルフの娘はエルフ狩りに会うてしまったのか?」
「森の周辺を探したけど…逃してしまった」
「この周辺ではこの砂漠の町にしか行く所はあるまい?」
「この町で情報を集めないと…てててて」
「まだ動かないで!回復魔法!」
「このままだとエルフの好意を仇で返す事になってしまう…」
「そうじゃな…無事だと良いが…」
「この町はどうやら賊に溢れててあまり安全じゃ無さそうだ…」
「うむ…昨日も金貨の入った袋を盗まれそうになったわ」
「大丈夫だったのかい?」
「絡まれた直後にその盗賊さん目の前で消えたの~」
「魔女…どおりで肌の艶が」
「少しだけじゃよ…」
「そうかわかった…こうしよう!」
「ん??」
「僕は1人で酒場に行って情報を集めてくる」
「僧侶と魔女は2人で一緒に町で情報を集めて来て」
「え~?別行動?」
「酒場は女連れで行くと面倒が起きやすいんだ…ガマンして」
「ぶぅ…わかった」
「それから2人ともフードで顔を隠して置いた方が良い」
「そうじゃのぅ…美女2人を放ってはおかんじゃろうのぅ…」
「美女?ウフフ~良い言葉~~」
「よし!僕はもう大丈夫だから早速行動しよう!」
「ねぇねぇわたしって美女かな~?」
「何と言って欲しいのじゃろうか…」
「夜、宿屋で会おう!」
「ねぇねぇ…」
酒場
砂漠の街の建物はみな土で出来ていて独特の雰囲気がある
この酒場も同様に土で出来た建物だ…ただ殆どが地下になって居る
なぜなら地下の方が涼しいからだ
階段を下った先にこの酒場は有る
「おやおやこんな昼間から酒場かい?」
「良い話が聞けないか来て見たんだ」
「まぁ構わんが…あまり聞きまわらん方が身のためだぜ?」
「良いんだ…儲かる情報無いかな?」
「まぁ…まず酒でも飲めや」
マスターはそう言ってグラスに酒を注ぎ始めた
その時階段を数人の男達が降りて来た
「よう!マスター今日は付けを払いに来たぜ!」
「はっはー最高だぜ」
「ぼろ儲けぼろ儲け」
「これでしばらくは遊べるなぁハハー」
「景気が良さそうだな!いつもの酒で良いか?」
「あ~それで良い!あと女も頼むわ!」
数人の男達は奥のテーブル席へと進んだ
「さぁこれでも飲みな…ホップ酒だ」
「ありがとう…あの4人組みは?」
「常連さんだよ…関わらない方が良い」
「ぼろ儲けだとか言ってたが?…」
「さぁな?…薬でも運んでるんじゃないか?」
「砂漠の町では人身売買とかも流行ってるのかい?」
「シッ…そんな話を人前でするもんじゃねぇ」
「あるんだな?」騎士はマスターに詰め寄った
「俺は酒場のマスターだ…他人のことをベラベラしゃべって良い身分じゃねぇ」
奥のテーブルから話し声が聞こえて来た
(ハハー俺のいちもつをぶっこんだら大人しくなりやがってよ…)
(こんな経験めったに出来ねぇよなぐあっはは)
(おう!女が来たかぁ…かわいがってやんよ)
(おいおい嫌がんなよ…やさしくしてやるからよぅハッハー)
(金なら…おらぁ余るほどもってんぞひひひ)
(いいからこっち来いよおら…股開けぇ)
「……」
「とまぁこういう町だ…旨い話が聞きたいんなら商人ギルドに行くと良い」
「商人ギルド?」
「表向きは商人ギルドだが…裏ではこの辺りを牛耳ってる」
「そうかい…情報ありがとう」
「絡まれる前に店を出た方が良いぞ…」
奥のテーブルの話が気になった
(おれぁあのエルフの体が忘れられねぇ…)
(お前は速攻終わったじゃねぇか…偉そうにすんな)
(んだとゴラーギッタギタのボッコボコにすんぞ?ゴラ)
(まぁまぁここの女に忘れさせてもらえやウワッハ)
僕の中で何かが沸き上がって来た…それは一瞬で僕を埋め尽くす
ドン!!ガチャーン!!
「おいおい…あんまり大きな音を立てちゃ…」
奥のテーブルに詰め寄りながら既に剣を握っていた
「んあ?んーだお前?」
「おい!こいつ武器に手ぇ掛けてんぞ」
「俺達に立て付こうってのか?んあああ!?」
「おい!偉そうに立ちはだかってんじゃねえぞ」ドガッ ガチャーン
その男はテーブルを蹴とばしグラスと酒が飛び散った
「きゃああああ」…女達は慌てて逃げる
「お、おい…やるなら外でやってくれぇ」
「お前達に用がある…外に出ろ」
「ほーーーー言うじゃねぇかギッタギタのボッコボコにすんぞごら」
酒場裏
腹から湧き出る物を抑えながら外へ出た
「俺達をこんな所に呼び出したからには…落とし前つけてくれるんだろうな」
「折角の良い雰囲気をぶち壊しにしやがって」
「エルフの娘をどこにやった?」
「なんだとゴルァ!!」
(おい!こいつ気球から落ちた奴じゃねぇか?)…小声でその男が耳打ちする
(そんなわけねぇだろ…こいつぁピンピンしてるじゃねぇか)
「お前は何様だ?んああああ?」…その手には既にダガーを持って居る
「言っても分からない様だな…」僕も武器を抜いた…スラーン
「こいつ!!!抜きやがった…やるつもりだな?」
「やっちまえ!!」
カーン カーン キーン
騎士は4人の攻撃をすべてはじき返し
その内一人の後頭部をロングソードの柄で強打した…ゴスン!
「うがっ…」
「ヤローやりやがったなああああ」
ロングソードを相手に向けた
「もう一度言う…エルフの娘をどこにやった!!?」
「うるせえぇ!!」
襲い掛かるダガーの軌跡は良く見えた
それを叩き落し一人…また一人…後頭部が割れる程叩きつけ地面に這い蹲らせる
「くぅ…お前は誰だ!?」
「さぁ最後の一人…僕は本気だ」ロングソードをその男の足に突き立てる…グサ!!
「ぐああああぁ…足が…足がぁぁ」
「エルフの娘をどこにやった!」
「や、闇商人に売っちまった…」
「何処にいる?」グイ…柄を回し筋肉を引き裂く
「ぐあああああ…し、商人ギルドの地下だ…」
「……」
「ふふ…ははははは…お、お前はあのエルフの男か?」
「だったら何だ?」
「も、もう回しちまったぜ?ハハーー悔しいかぁ」
「だまれ!!」ボカッ…思わず拳で殴った
「っつう…最高の女だったわ…うははは」
腹から湧き出る物が押さえられない
気が付けばその男達4人共瀕死の状態で地面に転がっていた
「はぁ…はぁ…はぁ…」
---なんだこの腹から湧き出てくる怒りは---
商人ギルド
そこはこの砂漠の街で銀行の様な役割も持って居る
多くの商人や住民が訪れそれぞれの商談を交わしている
「はいはい!どのようなご用件で?」
「あぁすいません…あの」
「見かけない顔ですね~~旅人さんですか?」
「あぁ…はい」
「仕事を探しに来たんですね!良い仕事がありますよ~」
「いや…」
「あれ?なんか旅人さん悪い事でもありました?目がギラ付いて居る様な…」
「昨夜は寝て居ないからかな…」
「そうですか~それで?仕事を探しに来たんじゃないとすると…用件は?」
「ここの地下に闇商人が居ると聞いて来たんだけど…」
「はぁ??地下なんて無いですよ?」
「え?」
「お客さん~変な情報掴まされたみたいですね」
「ここは商人ギルドじゃないんですか?」
「そうですけど闇商人なんて聞いた事ないですよ?」
「…」(騙されたか)
「商人ギルドでは商隊を組むためのあっせんをしています」
「そうですか…」
「今丁度商隊の傭兵を募集をしてるんですよ」
「商隊で運ぶ荷物はどんな物が?」
「まぁ…色々な物がありますけど…儲けの良い仕事はなかなか…」
「その…運ぶ荷物の事だけど」
「商人ギルドで管理していますけど何か?」
「その…人身売買とかは?」
「はぁ?そんな物あるわけ無いじゃないですか~ハハハ」
「では商隊の主な行き先は?」
「南にある中立の国を経由して、その先は始まりの国と終わりの国、それから機械の国に運びます」
「そうですか」
「商隊の傭兵はいつでも募集してますので、他に仕事が無いなら尋ねに来て下さい」
「わかった…最後にもう一回」
「はい?」
「本当にここに地下は無いんですか?」
「ハハハ本当に無いですよ。なんなら入ってもらっても良いですよ」
「ちょっと見せてくれるかな?」
「お客さん…疑り深いんですねぇ…どうぞ」
奥の部屋
一階部分のすべての部屋に案内された
「…」(荷物は沢山あるけど怪しそうな物は無いな)
「お客さん!荷物には触らないでくださいね!」
「はい…」(地下に行けそうな階段も無い)
「もう気が済みましたか?」
「わざわざありがとう」
「いえいえ。ご用件はよろしかったでしょうか?」
「もう良いよ。いろいろ見せて貰ってありがとう。用があったら又来ます」
「はい!いつでもお待ちしております」
街道
露天商がテントを張って様々な物を売っている
ギャンブルをしている者…娼婦が居るテント…闇の市場…
埃っぽい街道を行き交う人々も様々な格好をして
そこにそれぞれの営みがある事を感じる
僕はアテもなくエルフの娘の手掛かりを探していた…
ドン!!
「うわっ…」
「おぅすまねぇ急いでるんだ」…そう言ってその男は走り去った
(スリに気をつけないとな…金貨はっと…よし大丈夫)
---なんか怒りが収まらない---
---あの山賊達は何処に行ったんだろう---
---もう一度突き止めてやりたい---
「あ!!騎士ぃ~~~」…僧侶だ…僕の乾いた心になんだか優しい水を注ぎ足してくれる感じだ
「お!?僧侶」
「ねぇちょっと金貨ちょうだい~ウフフ」
「あ、あぁ良いけど…どうしたんだい?」ジャラリ
「アレ~なんか怖い顔してる~~怒ってるの~?」
「いや…なんでもないんだ」
「ねぇあそこでね~賭けトランプやってるんだ~」…と言って指さす
「ん?あんまり関わると危ないよ?」
「魔女がすごいの~わたしもやってみたいな~って」
「へぇ?…どれどれ」
賭博場
ガラの悪い連中が博打を眺めていた
「また当たり…」
「わらわはもう止めたいのじゃがよいか?」
「おいおい勝ち逃げしようってのかよ…待ってくれよ」
「それはさっきも聞いたがのぅ~」
「あと3回だ!3回やって今度こそ終わりだ!良いか!」
「仕方が無いのぅ…」
眺めていたが3回やって3回とも魔女が勝った
(魔女すごいな全部当ててる)
(でしょ~わたしもやりた~い)
「ぐああああああイキサマに決まってる!!」
「イカサマなどしておらん…」
「俺の全財産どうしてくれるんだよ!!」
「それはおぬしが悪いんじゃろう…」
「このアマなめやがって…」
「まぁまぁまぁ…次はこの子がやるよ」
「わ~い!ウフフ~どうやってやるの~?」
「では僧侶に代わるかのぉ…よっこら」
「お前もイカサマじゃねぇだろうな!」
「イカサマってな~に~?ウフフ~イカ様?イカ~様?イ~カ様?」
「なんでも良い!!このカードより数字が上か下かだ!!いいか?」
僧侶は博打を始めた…
(魔女すごいね…どうやってカードを見分ける?)
(わらわにはカードが全部見えておる…それだけじゃ)
(それってイカサマって言うんじゃ…)
(それは知らぬ…勝負しようと言うて来たのはアヤツのほうじゃ)
(僧侶は大丈夫そうかな?)
(あの博打師はイカサマ師じゃから僧侶では勝てんのぅ)
(ハハ…これでトントンか)
(ん!?そなたの腰巻に紙がはさまっておるぞ?)
(え!?)
(なんだこれ…いつのまに…)
紙にはこう書かれて居た
”今夜商人ギルド裏へ1人で来い”
「うははははははは」
「ええええええ」
「お譲ちゃんまだやっていくか~?」
「最後の最後!!」
「よ~し!正々堂々勝負だ…」
「神様神様神様神様…」
「うははははは又俺の勝ちだ…」
「そんなぁ~」
「お譲ちゃん次は体掛けても良いんだぜ~?」
「ふぇ~ん」
宿屋
「お帰りなさいませお客様。お体はもう大丈夫ですか」
「あぁもう平気だよ。今日は3人一部屋で頼むよ」
「それなら大部屋の方へご案内致します。こちらへどうぞ」
「あぁ…広くて良いね」
「それではごゆっくりおくつろぎ下さい」
「ありがとう」
挨拶を済ませ店主は部屋を出て行った
「……」
「僧侶?気にしなくて良いよ」
「負けるのは最初から分かっておったでのぅ」
「グスンごめんね~金貨無駄遣いしちゃって」
「それより何か良い情報聞けたかな?」
「半年ほど前に勇者らしき旅団が来てたという事くらいかのぅ」
「森の町で聞いた話と合致するね…行き先は聞いてないかい?」
「その情報は無いのぅ…」
「でもね~この砂漠の町から西は砂嵐がひどくて旅には向かないってさ~」
「そうか…」
「騎士の方は何か情報あったの~?」
「いや…何も…」(エルフの娘の事は言えないな)
「エルフの娘が心配じゃのぅ…」
「しばらくこの砂漠の町で情報を集めよう」
「うんそうだね~…負けた分は取り返さないと~」
「いやギャンブルは控えめにしてよ…」
「わたしはもうい~の~ウフフ今度は魔女に任せる~」
「今日は食事したら休もう…僕は少し疲れた」
「は~い」
深夜
落ち着かない…
エルフの娘が今この瞬間も誰かに奪われているかも知れないと思うと…
腹から何かが湧き出て来る…イライラが止まらない…
「ぐがががすぴーぐががすぴー」…僧侶はぐっすり寝て居る
「すぅ…すぅ…」…魔女もやっと寝た様だ
よし!行くぞ…
気付かれない様に僕は部屋を出た…
(昼間とは打って変わって冷えるな)
(オアシスの湖に月が反射して意外に明るい)
(暑さを凌げば割と住みやすそうだ)
(…まてよ?砂の声も聞こえるかもしれない)
耳を澄ませてみた…サラサラサラ…
(無常を感じる…成すがままに…か)
(くそぅ心が落ち着かない)
(確か魔女は言った…人間はエルフに一方的に恋をするって)
(恋とは少し違う…心が通じたんだ)
(どこに居るんだ?…聞こえない…無常しか感じない)
(砂が音を掻き消していくのか?)
商人ギルド裏
体の大きい男が一人待って居た
「待ってたぜ?遅いじゃねぇか…」
「お前は…闇商人か?」
「まぁあせるな…こっちに来い」
ギギギギギ…
隠されて居た扉が開いた…
「こんな所に階段が…」
「おい!武器は預かる…よこせ」
言われるまま武器を渡した
「よし付いて来い」
商人ギルド地下
ここは酒場と同じ様に半分地下の空間…
外の音は一切遮断されて静寂だ
「連れてきたぜ」
「やぁ」
「お前が闇商人か?」
「困るんだなぁここら辺で嗅ぎまわられちゃ」
「闇商人に聞きたい事が…」
「君みたいのが要ると商売に影響が出るんだよ」
「質問に答えて欲しい」
「僕が…世間で言う闇商人なんだけどその名前は本当は違う」
「どういう事だ?」
「僕はどちらかというと正義の味方さ」
「顔を見せられないのか?」
「そうだね…顔が割れるのは良くない」
「エルフの娘を探してるんだ…ここに売られた筈」
「さぁ?僕は商品の中身までは確認してないよ」
「昨日か今日に大きな荷物の取引はしてないか?」
「さて…どうして僕が一方的に情報を提供するんだい?」
「取引したいのか?ならエルフの娘を買い戻す」
「はは~んこれは良いお客様だね」
「エルフの娘を知っているな?」
「さぁね?ただ僕はお金に興味は無い」
「何が欲しい?」
「情報さ…どうしてエルフの娘を追う?」
「仲間だからだ」
「ハハハ面白い!!どうやってエルフを仲間にした?」
「待ってくれ…エルフの娘は無事なのか?」
「さぁね?でも情報をくれたら出来る限りの事はしてあげよう」
「信用できない」
「ならこれならどうかな?」ファサ…と深く被って居たフードを下ろした
「やっぱり君か…」
「盗賊!この人は大事なお客さんだ。顔を見せてあげな」
「良いのか?簡単に顔を晒してよぅ…」ファサ…
「え……」(師匠?)
「さてこれで対等だね」
「君達は一体?…」
「どうしたんだい?おどろいた顔をして…そんなに意外だったかな?」
「変な真似はしない事だ…俺達を倒してもここから出ることは出来んぞ」
「あぁ盗賊の言ってる通り…出る方法は僕達しか知らない」
「取引…どうすれば良い?」
「そうだな…エルフの娘を追ういきさつをまず教えて」
僕はエルフの里での出来事を話した
「へぇ?という事はそのエルフのオーブがあればエルフを仲間に出来るって事か…」
「だがオーブは渡せない」
「よし!約束だエルフの娘の行き先を教えてあげる」
「何処に?」
「今朝方エルフを買い取ったんだけど…もう商隊で南の中立の国に送った」
「さてここから取引だ」
「エルフが買い取られた先は知りたくないかい?」
「君が買い取ったと…」
「僕は仲介してるだけさ…どうだい知りたくないかい?」
「教えて欲しい…」
「条件は…同志になる事」
「なに!!?」
「そうすればエルフのオーブも僕の手に入ったも同じだ」
「そ、それは…」
「な~に心配しなくても良いよ。僕達はどちらかというと正義の味方さ」
「……」(どうする?…信用できるか?)
「君にあと2人美人な仲間が要る事も知ってる。町での安全も保障するよ」
「信用していいのか?」
「盗賊!カギを!」
「おいおいマジか…初対面の相手なんだぞ?」
「僕の勘は当たるんだよ…彼は仲間を裏切らない」
「わーったわーーた!!ほらよ!!ここのカギだ」…といって鍵を放り投げた
「取引成立かな?じゃぁ…エルフが買い取られた先は…」
「先は?」
「王国さ」
「王国?どこの国かな?」
「エルフ達を捕まえて売買してるのは始まりの国、終わりの国、中立の国、機械の国…それぞれの王国さ」
「どうして王国がエルフを…」
「その秘密を暴くのが僕の仕事だよ。だから君の協力が欲しい…エルフを仲間にできる君にね」
「もう少し詳しく…」
「それは明日にしよう。宿屋に仲間がいるんでしょ?」
「わかった」
「明日、人目につかないように仲間をここに連れておいで」
その話を最後に僕は宿屋へ戻った
そして思い返す
あの盗賊と言う体格の良い男は間違い無く師匠だ
つまり師匠は僕に合うもっと以前に違う僕と会って居た事になる
どうして何も言わず僕に訓練をしたんだろう?
宿屋の大部屋
外に出たのがバレない様にコッソリと部屋に戻ろうとしたけど…
「どこに行ってたの!!!」…僧侶が仁王立ちで待って居た
「いあ…眠れなかったから散歩を…」
「クンクン…クンクン…」
「犬かい?」
「隠し事はない?」
「う、うん…実は」
今までの出来事を隠さず話した
僧侶はエルフの娘の事を知って少し動揺した様だ
「わかった~ウフフでもね~わたしに隠し事はしないでね?」
「わかってるって…」
「今日はもう遅いから寝よ?」
「うん」
「だっこー」
「うるさいのぅ静かにしてくれんか?」
「あぁゴメン…」
ベッドの上で抱き着く僧侶の気持ちがなんとなく伝わって来た
僕の心がエルフの娘に行ってしまって居るのを案じているんだ
でも違うんだよ…そういうのじゃ無いんだよ
上手く表現出来て居なくてゴメンよ…
翌日_商人ギルド地下
「やぁみんな来たね」
「言われた通り仲間を連れてきたよ」
「じゃぁ今の状況を説明する前に…自己紹介しよう」
「僕は見ての通り商人…と言うのは表の顔で裏では情報屋さ」
「世間では闇商人とか言われてるけど取引するのは主に情報」
「俺は盗賊。商人の右腕だ。影武者にもなっている」
「私は僧侶~ウフフ騎士の従士なの~」
「わらわは愛しき人を探す魔女じゃ」
「みんなヨロシク!」
「よろしくね~」
「さて…昨日はどこまで話したっけ…そうそう王国の話だ」
商隊で運ぶ物は色々な物があってね
何に使うか分からない様な物は大体王国が絡んでるんだ
エルフの売買も王国が絡んでる
そういう物を合わせて見ると
どうやら何かの兵器を造ろうとしている様に見える
多分戦争の道具だろうね
僕はそれを何処で造っているかが知りたい
そしてその目的もね
「明日から大事な荷物を南の中立の国へ運ぶ仕事がある」
「それを君たちに護衛して貰いたい。今回は僕も行く」
「エルフの娘の事は…」
「あぁ方向は同じだよ」
「無事なんだよね?」
「商隊は現地に運ぶまでが仕事さ。その後の事は商人ギルドは関わらない」
「王国に渡った後に連れ出せって事かな」
「そこは任せるよ」
「話がよく分からないんだけどエルフの娘は売られちゃったの~?」
「僕が賊から買い取って王国に売ったと言った方が良いかな」
「ひどい~」
「ハハむしろ助けたと言ってよ賊に捕まってる内は陵辱され放題だから」
「ねぇ陵辱ってなに~?」
「恥ずかしい事を色々される事だよ」
「え!!?」
「まぁ中立の国までは20日くらい掛かるからその間は命の危険はないよ…」
「良い娘だったのにのぅ…エルフと人間の和を論じておった」
「それは悪い事をした…でもこっちも商売でね」
「明日ここを出発する予定で良いかな?」
「日の出の前に出るから準備しておいて」
宿屋
「あの商人さん信用して良いのかな~?」
「今は信用するしかないかな…情報屋だと言ってたし…勇者の事も知ってるかも」
「まだ勇者の事は聞いておらんのかえ?」
「何か聞く度に条件を出されるんだ」
「情報を商品にする商人かぁ…なんか怖いなぁ」
「でも悪い人には感じ無いんだ。それと…」
「ん?」
「あの盗賊…多分僕の師匠だ」
「ええええええ!!」
「本人はまだ知らない…」
「ほぅ…なにやら起きそうな予感がするのぅ…」
「師匠は昔僕に似た仲間が居たって言ってた…まさか僕だとは…」
「不思議と何をしても…辿り着く所は決まっておるのかものぅ」
---退役した衛兵隊長はウソだったのかな---
商隊
商人達がそれぞれの馬車で荷物を安全に運ぶ為に集団で移動する
その中には旅人や傭兵も含まれ
多少の魔物や賊に襲われても大抵は追い払う事が出来る
「よし!!傭兵隊は荷馬車の前後に二手に別れて配置してくれ」
「各馬車の配置はこうだ…」
「盗賊さんなんかすご~い!!商隊の指揮してる~」
「僕の影武者だよ。僕は普通の商人の振りをして紛れ込んでる」
「へ~何か危ない事でもあるの?」
「顔が割れたく無いだけさ」
「でも盗賊さんが顔割れちゃうよね?ウフフ」
「それで良いんだ。僧侶と魔女は僕と同じ馬車に乗って僕を守る」
「騎士は?」
「騎士は盗賊と一緒だ。盗賊の用心棒って事になってる」
「えらく偽装するのだのぅ」
「今回の荷物はそれだけ危ないって事だよ」
「何を運んでるの?」
「さぁね…ヒミツだよ」
「出発!!」
盗賊の掛け声で馬車が一斉に動き出した
商隊での旅が始まった…
馬車
「どうだ?商隊の感想は?」
「思ってたより大規模だったから驚いてる」
「これ位の数が居ないと安全に運べ無いくらい襲撃があるんだ」
「荷馬車含めて馬車が…20くらいかな?」
「これからは暫く馬車の旅が続く。暇潰しも考えておけよ?」
「あぁそうだな…ところで今回は何を運んでるんだい?」
「それは商人に聞いてくれ。教えてくれんとは思うが…」
「そうか…エルフの娘もこういう風に運ばれてるのか」
「まぁそういうなや…ちっと体を遊ばれてしまうかもしれんが死ぬ事は無ぇ」
「くっ…」
「賊に掴まったままよりは相当マシなんだぞ?」
「そういえばどうして気球を使わないのかな?」
「気球は襲われた時に荷物を破壊してしまうからだ」
「襲われる?空で?」
「今回の場合特に空は危ない」
「どうしてだろう…気になるな」
「それほど危ない物を運んでるのは間違いない」
「そうか…何も起こらなきゃ良いけど」
夕方
「今日はここで野営する!馬車を寄せてキャンプを作れ!!」
「へぇ?一応キャンプする場所はある程度決まっているのか…」
「当たり前だろう…この道沿いに柵で囲った安全地帯があんのよ」
「途中で街に寄ったりとかしないの?」
「今回はその計画が無い…急ぎで運びたいもんだからな?」
「そっか…良く見ると道もちゃんと整備されて居るんだなぁ…」
「馬車が走りやすい様にな?」
僧侶が走って来た
「騎士ぃ~そっちの馬車は楽しい?」
「まぁまぁだよ」
「商人さんスゴイんだよ~トランプの勝ち方教えてもらった~」
「良かったじゃないか」
「ウフフ~」
「おい!騎士!チョッと運動しないか?」
「ん?…運動?」
「模擬戦だ。そこの木の棒で立ち回りやって見よう」
「あぁ良いよ」(久しぶりだな師匠とやるのは)
「腕には自信があるんだろう?いくぞ?」
「よ~し!!来い!!」
模擬戦
木の棒を相手の体に当てるだけの簡単なチャンバラ
慣れて来ると実戦に近い武器でやる事もある
師匠とはいつも模擬戦をやって居た
「お前やるなぁ…はぁはぁ」
「そっちも!」(懐かしい)
「お前息切らしてないな?はぁはぁ…本気でいくぞ!!」
太刀筋は分かってる…だから木の棒同士がぶつかり合い打楽器の様に音が鳴る
カン カン コン
そして人の隙が何処に有るのかも知ってる…これは師匠が教えてくれた技…
騎士は盗賊の背後に回って木の棒を首に突きつけた
「うお!!…お前その動き…アサルトスタイルか」
「これは僕の師匠から教わったんだ」
「ほーすごい師匠だな…どうやってやるんだ?」
「目の盲点に入るように…こうやって…こう」
「もう一回頼む」
「視線の中にこうやってチラつかせて…ここに入る」
「もう一回だ」
---僕が教えたのか---
荒野
ヒュゥゥゥ サラサラ
ずっと向こうまで続く砂漠と反対側には森が続く境界
砂漠でも無く…森でも無い…そこは荒野と言う表現が正しい
「おい騎士!!何やってんだ?」
「風と砂の声を聞いてるんだ」
「なぬ?お前…頭大丈夫か?暑さでやられたか?」
「ハハそう見えるかもね…これはエルフの娘に教えて貰ったんだ」
「気は確かだろうな?…何か聞こえるか?」
「う~ん…色んな音は聞こえるけど意味のある音なのかは分からない」
「くだらねぇ…明日も早いから早く寝ろ」
「分かってるよ…遅くならないようにするよ」
(でも微かに聞こえる)
(何の音だろう?怯えた様な風の音)
(目を閉じれば聞こえて来る…怯えた気配)
1週間後
カン カン コン
「あの2人は又やっとるのぅ…疲れんのだろうか?」
「ポン!…ポン!…」
「ちょっとさぁ…もう」
「ポン!…ウフフのフ~あと一個ルンルン♪」
「あのねぇ!!その食いで僕の作戦が台無しなんだ…」
「あと一個あと一個ぉぉ!!」
模擬戦の方では…
「はぁはぁ…くそう!!なんで当たん無ぇのか…」
「ん~多分僕相手だから見切られてるんだと思う」
「そうだな…ちょっと相手代えてみるか」
「あそこに要る傭兵なんかどうかな?」
「ちっと息正すから呼んで来てくれ」
「行って来る」
数分後…
「あぁ暇してたんだ。仲間に入れて欲しかった所だ」
「連れて来たよ」
「模擬戦だ…この木の棒で立ち回りをだな」
「手柔らかに頼むぜ…こい!」
その傭兵は戦い慣れていた…剣圧が凄く…盗賊を力で上回って居た
「おっと待て待て…完全に力負けだ」
「ははー傭兵を甘くみたか?」
「いや…まだだ…行くぞ!」
盗賊はアサルトスタイルを試してみた
「うぉ消えた!!」
「後ろだぜ?ヌハハ」
「うん!それで良い」
「い、今のはなんだ?突然消えたぞ」
「僕から見たら消えてなんか無いよ」
「よし!もっとやろう!」
「ど、どうやって対策すれば良いんだ?」
「まずは慣れだね…」
模擬戦はこうやってお互いを高め合う
その傭兵も試行錯誤で対策し
盗賊もそれに合わせて工夫する…
「よっしアサルトスタイル体得したぞ」
「盗賊にはそのスタイルが合ってるね」
「変わりに良い事を教えてやる」
「良い事?」
「スリだ…見てろ」…その一瞬で何かを抜き取られた
「ん?何をした?」
「ハハーン…取られた事に気付いてないな?目の前に居たぞ」
「そうか…スリも盲点を使うんだな?」
「そうだ…お前の技とは盲点の使い方が違う。あと技術も必要だ」
「…で何を取った?」
「これだ…っておい!…マジか…」
「あ~~忘れてたその豆の事」
「お、お前これが何か知らないのか?」
「豆?ほしいならあげるよ」
「良いのか?エ、エルフを2~3人買えるぞ?」
「ええええ!!?」
「これはドラゴンの涙と言ってな…いやちょっと待て。これは商人に話さないとダメだ」
「そんな高価な物だったのか」
商人の馬車
「ぬふふふふローン!!!わ~い」
「くぁぁぁぁもう止めたぁぁ」ジャラジャラ…賭けていた金貨をばら撒いた
「あ!騎士ぃ~わたしギャンブル強いかも~ウフフ」
「ハハ良かったじゃないか」
「あの子は博打師の才能あるかもね…まいったよ」
「ひぃふぅみぃ…金貨がっぽがぽだぁぁぁ!!やったね!!」
ドタドタと盗賊が入って来た
「おい商人!今良いか?」
「僕かな?どうしたんだい?」
「これを見てくれ」
「これは…ドラゴンの涙か」
「騎士が持ってたんだ」
「ハハ凄いな…騎士こっち来て」
「ん??」
「君は凄い物を持っているね…取引しないか?」
「取引?…条件は?」
「これをどうやって手に入れたか教えてくれたら…今運んでる荷物の中身を教えてあげる」
「その話は長くなるよ…」
「単刀直入に行こう…ドラゴンに会った事はあるかい?」
「ある…」
「取引に応じてくれたと思って良いのかな?」
「良いよ…話して僕が不利になる事は無いだろうし…」
「ふむ…この話は他に聞かれたくないなぁ…明日僕の馬車に来て」
「わかった」
翌日_商人の馬車
「盗賊は馬車の馭者を頼むよ…周りを警戒してて」
「わかった…出発するぞ」パシン!!ゴロゴロ
「一応他に誰も居ないのを確認して貰えるかな?」
「大丈夫だ…馬車に近付いてる奴なんか居無ぇ」
「さて…昨日の話しの続きをしよう。僧侶と魔女もよく聞いておいてね」
「は~い」
「まず騎士が持っていたこのドラゴンの涙の効果を教えておく」
「あれ?それお豆じゃなかったんだ~ウフフ」
「これはね万病に効く薬で非常に高価な物だよ。ドラゴンと同じ耐性を得るらしい」
「へ~なんかすご~い」
「さぁ次は騎士の番だ…いつドラゴンに会ったのかな?」
「1ヶ月ほど前?かな」
「どこで?」
「始まりの国」
「ハハハ…からかわないでくれ」
「本当だよ~~ウフフ」
「僧侶…もしかして君もそこに居たのか?魔女は?」
「わらわには関係の無い話じゃが…ドラゴンには200年前に会っておるな」
「ハハハ…話がむちゃくちゃじゃないか真面目に話をしてよ」
「全部本当の話だよ」
「これは新手の取引なのかい?」
「ほんとにほんとだよ~~」
「ちょ、ちょっともう少しわかる様に説明してよ」
「それは1ヶ月くらい前に僕が始まりの国を訪ねたのが始まりさ…」
これまでのいきさつをすべて商人に話した
商人は急に真面目な眼をして話に聞き入った
「どうだい?信じて貰えたかな?」
「すごい…君達の言ってる事が本当だとすると…僕の思って居た事が線で繋がる…」
「わたしは時をかける少女なの~~なんてね~~ウフフ」
「ちょっと頭を整理したい…」
「今運んでる積荷の話は?」
「あぁ僕とした事が…つい忘れるところだった」
「は~や~く~」
「積荷は…生きたドラゴンだよ」
「な…に!?」(怯えた様な空気はコレか)
「ドラゴンの子供を拘束して運んでいる。だから気球を使って空を運べない」
「親ドラゴンに襲撃される?…って事かな?」
「そうだよ…それと今運んでるドラゴンは中立の国を経由して終わりの国へ運ばれる予定なんだ」
「それが何か?」
「君の話では数年後終わりの国が魔王軍に飲まれると言ったね?」
「それを確認しに行くつもりだった…」
「終わりの国へは今まで何度もドラゴンの子供を運んでる」
「親ドラゴンの襲撃だったって事になるのかな?」
「シナリオ通りならそういう事になるね…すまない少し考えさせて…」
商人はそう言って何かの帳簿を調べ始めた…
きっと思い当たる事が何かあるんだろう…
僕はこの世界の未来を予言してしまっているんだから…
翌朝
「今日の出発は早いね」
「少し進行が遅れてるんだ…しばらくは日の出前に出発だな」
「今日は風の音が騒がしいんだ」
「いつもと変わらんが?」
「向こうに見えるのは何だろう?左前方…」
「んん?馬が何かに追いかけられてんのか?」
「なんか様子がおかしい気がする」
「おいおい…馬がトロールに追いかけられてんのか?…いや賊がトロールに追いかけられてるな」
「商隊に近づいて来てるように見える…」
「まずいな…こりゃ押しつけ食らいそうだ…」
「全体!!!!この馬車に続けえぇぇぇ!!進路を変える!」
「トロールの足速いな…あれ?ちょっと待った…3体居る!」
「賊はこっちに助けを求めてんのか!?…くっそ!良い迷惑だ!!」
「これ…このまま行くとトロールと接触してしまう」
「くっそ!!日が出てりゃなんとかなんのに…」
「どうする?」
「全体!!!!このまま全速力で走り続けろぉぉぉ!!」
「逃げの一手かい?」
「俺達だけで賊に近づく!お前は商隊に近づかないよう説得しろ。従わなければ馬をその剣で刺せ」
「わ、わかった」
「いくぞ!」
盗賊の操る馬車は追いかけられている賊の方へ進路を変えた…
賊が乗る馬
バカラッ バカラッ
「賊の先頭に居る奴に言うんだ!」
「おーーーい!!商隊に近づくなぁぁ!!!」
「ひゅーーー見つけたぜぇぇ」
「なに!!?」
「落とし前つけて貰うからなぁグァハハハハハハ」
「お前はあの時の!!!」
「早く馬をヤレ!!」
「剣が届かない!!もう少し寄ってくれぇ!!」
「させるかぁぁボケが!ギッタギタのボッコボコにされちゃうぞぉ?ガハハ」
その時強烈な閃光が走った…ドカーーーーン!!
「ぐぁ!閃光玉!!」
驚いた馬は暴れ始め馬車が横転した…ガラガラ ガシャーーーン!!
「あばよ!!グァハハハハハ」
「くぅぅぅあいつら…」
「おい!早く起きろ!トロールが来る!」
「ト、トロールの弱点は?」
「足だ!!アキレス腱を狙え!!絶対捕まるなよ」
猛烈な勢いで一つ目のトロールが突進してくる
「でかい…」
「馬車を盾にしてなんとか日の出まで耐えろ!」
「狙いは足!!」ロングソードでトロールの足を切りつけた…
「ヴオォォォォ」
「硬い!」
「馬車の荷に武器があった筈だ!見て来い!」
「わかった…ど、どこだ?」
ドコーーン!! ドコーーン!!
トロールの拳は地面を打ち付ける…盗賊は上手くトロールの攻撃を避けている
「早くしろぉ!!」
「何だこれは!…グレートソード?」
「何でも良いから早くトロールの足をぶった切れ!!こっちゃ持たねぇ!!」
盗賊はトロールの脇を潜り抜けなんとか攻撃を凌いでいる
「うおぉぉぉぉぉ」…渾身の力でグレートソードを振るった
ザクン!!…その長い刀身はトロールの足を切り抜けた
「や、やるじゃねぇか!!足ごと切り落としやがった」
「あと2体!」
「危ない!!よけろぉ!!」
ガシ!!足を掴まれた
「アホがぁぁぁ!!捕まるなって言っただろ!」
バシーン バシーン
騎士は地面に叩きつけられた
「ぐはぁ!!離せ!!」…もがいても何も出来ない
「くっそ!!手の出しようがねぇ」
バシーン バシーン
「ぐうぅぅ…」(気が遠くなる)
「っのやろう!」盗賊は持って居たダガーでトロールを切りつける
「ヴオォォォォ」
トロールは雄たけびを上げながら騎士を宙高く放り投げた
ヒュゥゥゥゥゥ ドサ
「うぐ…」(動けない…体が言う事を聞かない…)
「だ、大丈夫か!?こりゃひでぇ」
「まだ…いけ…る」…意識はある…でも動かない…
「おい!!しっかりしろぉ!」
盗賊は騎士を抱き上げ逃げようとした…その時…
日の出の光が目に入った…
「……」
「日の出か…間に合った。おい!起きろ!起きろぉ!!」
「……」
「ふぅぅぅ…危機一髪だな」
---トロールは朝日を浴びて石となっていた---
馬車
ガタゴト ガタゴト
「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」
「ううううん…」
僧侶は騎士の眼を無理やり開いた
「フーーーー…」
「強制的に目を開けるの止めてくれないか…それから目に息を吹きかけるのもやめて欲しい」
「ウフフ~起きた~」
「お!?起きたか…すごい回復力だな。まだ半日だぞ」
「あぁ…どうなったのか記憶に無い」
「まぁ何とかなった。今は休んでろ」
「あぁ…このままで言いかい?ひざ枕が気持ち良いよ」
「良いよ~ウフフ」
「商隊から4人傭兵が居なくなった。どうやらずっとお前を付け狙ってたようだな」
「そうか…迷惑をかけたね」
「トロールを引っ張ってくるとは…あいつら襲撃に慣れていやがる」
「もう戻っては来ないだろうね」
「そうだな…トロール3体ぶつけて無事に済んだとは思わんだろう」
「乗ってた馬車は?」
「荷物積み替えて置いてきた。馬は無事だ」
「軽微で済んで良かった」
「うむ。本体にぶつけられてたら今頃大変だったな…そういえば」
「ん?」
「お前の武器…グレートソードの方が向いてるかも知れん」
「あぁ初めて持ったけど僕もそう思った」
「今までの武器だと腕力が余ってるから勿体無い」
「そうだねしばらく使ってみるよ」
「ねぇわたし今日からこっちの馬車で良いかなぁ~?」
「どうしたの?」
「商人が1人でブツブツ言っててさぁ~遊んでくれなくなったの」
「はは~ん何か考えてるな?」
「僧侶は商人の護衛だからしっかり仕事頑張って」
「騎士と一緒に寝たいなぁ…」
「それは又今度…」
「ぶぅ…」
夕方
「そうだ!中々良い…後は中身を掴んでくる」
「スリも奥が深いなぁ」
「慣れてくると気付かれずに下着を脱がす事もできるぞ」
「もういっかい行くよ!」スッ
「良いねぇ…やっぱお前盗賊に向いてんな!!ヌハハ」
「ねぇ盗賊と騎士ぃ!商人が呼んでるよ~」
「あぁ今行く!」
商人の馬車に移動した
「どうしたんだい?」
「うん色々考えてね…中立の国に着いた後の作戦を考えた」
「やっぱりか」
「結論から言う。海賊船から海図を盗みたい」
「僕はまずエルフの娘を救いたい」
「それは分かってる。多分エルフの娘は中立の国を経由して始まりの国へ送られると思う」
「ならその前に…」
「運搬役になってるのは恐らく海賊船なんだ…僕の情報筋だとね」
「なるほど」
「海賊船から海図を盗んであわよくば船も奪って海賊になりすます…そういう作戦さ」
「わかった協力する」
「ただこの作戦は盗賊と騎士の2人でやって貰う。僕は商談があるから一緒には行けない」
「僧侶と魔女は?」
「海賊船に女が居ると色々問題が起きるから今回は僕の護衛さ。その方が商談も上手く行く」
「そうか」
「今のうちに盗賊から隠密の動作も教えて貰うと良いよ」
「そうするよ」
1週間後
暇を見つけては隠密とスリの練習をしていた
「そうだ!ソレで良い!上達が早いな」
「ただ背中にグレートソード背負ってると邪魔だな」
「それは慣れるしかないな…次は僧侶で実践してみよう」
「わかった」
僧侶は又商人と賭け事をしていた
「おいでなすって…入りやす…半か丁か!ウフフ」
「丁に金貨1枚!」
「ゴクリ…」2人揃って唾を飲む
「半!!」
「くぁあああああ!!」
賭け事をしている最中騎士は隠密で近付き僧侶にスリをした…
「んん?あれ?」
「やぁ僧侶…調子は良いかい?」
「ウフフフフ~ぼろ勝ちなの~」
「まいったよ~どうして負けちゃうのかなぁ…」
「ところで僧侶?今日下着はどうしたんだい?」
「え?どうして?」
「じゃ…がんばってね」
「アレ?ナイ!!アレレ?ナイ!!ドウシテ?」…僧侶は混乱している
「ヌハハやるじゃねえか!」
「成功!でももう少し練習しよう」
「ようし!次は馬に気付かれない様にたてがみ引っこ抜いて来い」
「馬かぁ…馬にどうやって気付かれない様にするんだ?」
「とにかくやってみろ」
「まぁそうだね…習うより慣れろ!!」
「その通りだ」
なんだろうな…師匠とはどうも相性が良い
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