第13話 合否のゆくえ。 その1
「あの……えっと……」
突然現れた5つの視線を
『
向けられる視線のベクトルが先程とは真逆になったのを感じ、ナナシアはハッとして、カチカチだった表情を意識的に和らげる。
「こ、こんにちは」
ナナシアは、できる限りの人
メメテコ村の子供たちであれば、ここで「こんにちはー!」と元気な挨拶を返してくれるのだが。
「「「「「…………」」」」」
しかし、反応はナシ。
無言が心に痛いくらいに突き刺さり、ナナシアは思わず笑顔を引きつらせてしまう。
「ほら皆。お姉さんに挨拶は?」
そんな
それでもすんなりと挨拶はしてくれなかったが……しかしナナシアは、彼らがお互いに視線を合わせ始めていることに気がついた。
(ここでもうひと押しすれば、いける……!)
彼女の
ナナシアは確信し、今一度子供たちに挨拶を投げかけた。
「こんにちは!」
「「「「「……こんにちは」」」」」
すると今度は、尻すぼみのか細い声ではあったが、きちんと挨拶が返ってきた。
そのことが嬉しくて、ナナシアは思わず笑みをこぼす。
「ほう、もうこの子たちとコミュニケーションを取れるのか。流石だねナナシア君」
そんな彼女らの様子を見て、ジョエルはウンウンと嬉しそうに
「えっと……彼女たちが領主様のお子様ってことは、この子達が『生徒』になるんですか?」
「そうだよ。合格者には、『教養』科目の家庭教師として5人についてもらう。
そして……5人全員を『ココベリア大学
これが『成果』だ」
「な、なるほど……」
『
ココベリア大学附属学校とは、その名の通りココベリア大学への入学者を育てるための育成機関。
そう
その名は
加えて、全国的に入試は『三大能力』だけでパスできる傾向が強い中、学長の意向で『教養科目』の試験も課せられることが特色である。
「にゅ、入学が『条件』ですか。
あれ、でも確か『ココベリア大学』系列の学長って……」
「ああ、僕だよ。もちろん、入学試験等も僕の目が通っている。
……だからこそ、この子たちの教育は外部の人に任せたくてね」
「そ、そうですか。厳しいですね……」
「それはそうだろう。立場ある者として、我が子だけを
「…………」
「…………」
その言葉に、ナナシアの視界の
2人はバレたことに気がつくと、それを隠すようにそっぽを向く。
「あはは……」
「ん? どうかしたかい?」
「い、いえ!」
そんな
「……ということで、そろそろ結果発表といこうか。
さっきも言った通り、二次試験の面接官はこの子たち。君の合否は、この子たち自身の口から聞くとしよう」
そう言って、ジョエルは一番背の高い女子に視線を向けた。
「リンダ、
「……そうね」
バランスよく整ったスタイルに、しゃんと一本の柱が通ったような美しい立ち姿。
鋭い目つきがやや怖い印象を与えるが、しかし一方でそれは彼女の魅力でもあろう。
父親譲りの銀色の長髪に、
成長途中の
「……あなた、
「え? あ、えっと、19歳です」
「……ふうん、結構年上なのね。でも――」
するとリンダは、堂々と腕を組み、
「――ここではあたしのほうがお姉さんなんだからねっ!」
「……???」
よくわからない彼女の言葉に、ナナシアの脳内が『?』で埋まった。
「…………」
ほんとによくわからないので、助けを求めるようにジョエルの方を向くと、彼もやれやれと言った様子で頭を抱えていた。
「……
だから……その……彼女と接するときは、年下目線で頼む」
「は……はぁ……」
なんかもっとよくわからなくなったので、ナナシアはとりあえずの返事を返す。
するとリンダが、
「……あなた、私たちの『家庭教師』になりたいんですって?
ま、まぁ今の読み聞かせは結構良かったけれど……でも、それだけじゃ納得できないわ!
だから、私がもう一度テストしてあげる!」
「テスト……ですか」
彼女の宣言を聞いて、ゴクリと
……その焦りは、先程までの試験のような緊張感からではない。
それとは全く
「それじゃ、まず最初に――」
「よろしくお願いします、お姉ちゃん!」
……焦りのあまり、ナナシアはつい彼女の言葉に返事を被らせてしまう。
直後に(やってしまった……!)と後悔するも、時すでに遅し。
彼女は眼の前の少女を怒らせてはいないだろうかと、
――ところが。
「っふ、ふん……『お姉ちゃん』ね……ふふ、いい度胸してるじゃない。うふふふ……」
「…………?」
顔をそらしているため、ナナシアからその表情をうかがい知ることはできないが……
しかし何やら声は震え、表情も
そしてそんな姿を見せられると、ナナシアの恐怖心は余計に増す一方だった。
(こ、ここここ、こうなったらもはや……
混乱したナナシアが、よもや
「……合格よっ! あんた合格!
これからよろしくしてあげるわ! ふん!」
突然、彼女の口から合格が言い
「……え? なんで?」
「なんでもへったくれもないわ! 合格ったら合格よ! おめでと!」
「……???」
自分の
彼女は理由のわからない合格に混乱し、ただただ呆然としていた。
「……なんで…………?」
―-
しかし、
「えへへへ……お、お姉ちゃん……えへへへへへ……」
……彼女の目の前には、すっかり気を良くして
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